先日、記事に少し取り上げたテーマなのですが、

改めて補足を含め記事にしておきたいと思います。

 

1級キャリアコンサルティング技能検定実技面接試験のロールプレイ等において、

事例相談者役と堂々巡りになる状況のひとつとして考えてみる機会にもなるのではないかと思っています。

 

先週開催いたしました「新春事例指導ロールプレイ大会」においても、

一部のセッションにも観察されました。

 

例えば、1級受検者の方の中には、

実技(面接)試験実施概要や評価細目などの記述内容から、

事例相談者に対して「気づきを促す」ような問いかけをしなければならないと考えているひとが一定数いらっしゃるかと思います。

 

それは一見すると相手の成長をサポートしているかのように認識されるかもしれません。

一方で慎重に評価する必要もあります。

 

なぜならタイミングが適切でなかった場合には、

残念な結果になりかねないからです。

 

事例相談者の内省を促す意図として、

「ここまでお話しをしてみて何か気づくことはありましたか?」

「もしその場面で〇〇をしてみたらどうなると思いますか?」

といった質問は、

事例相談者が自身の内面に浮かぶ考えや思い、

その状況をリアルに振り返るきっかけを与えることがあるでしょう。

 

これは、相互の関係性によって適切なタイミングがあり、

それが事例相談者にとってフィットすれば、

新たな視点を得る助けとなる可能性があるのです。

 

また、こうした質問を通じ、事例指導のセッションの進行が停滞せずに、

解決したいテーマに向けて具体的に考えを進めることができる場合もあります。

 

残念な結果へ向かう傾向としては、

関係性が弱いままだと、事例相談者の主体性を損なう可能性があります。

つまり相手からして、

「気づき」や「変化」を強要されたように聞こえる質問となることがあるのです。


これは事例相談者にとってプレッシャーとなるかもしれません。

「何か答えを出さなければならない」

という負担が生じると、事例相談者の自由な表現が制限されるリスクがあるのです。

 

上記に記した相互の関係性という表現を踏み込んで触れると、

事例指導者(受検者)側が無意識に持つ「導きたい」という欲求が関係を阻害していることも多く、

事例指導者が一方的に焦っていたり、

面接の流れを展開させたいと考えているときに、

堂々巡りの空中戦が始まることが多く見受けられます。

 

この時は必ずといっていいほどに事例指導者の期待が優先されています。

 

豊かでない2人の関係性のまま、事例指導者から

「他に考えられることはありませんか?」

「もし〇〇してみたらどうなると思いますか?」

といった質問をしたところで、

事例指導者がすでに方向性や答えを想定していることが多いのです。

 

これにより、人のよい(よいかどうかは?)事例相談者であればあるほど

「事例指導者に期待されている答え」を探そうとし、

自分の本音や感覚を抑え込んでしまう可能性もあります。

 

場合によっては信頼関係への影響が益々貧弱なものにもなります。

事例相談者は無意識に「自分の考えや感情が十分に尊重されていないのではないか」

と感じる場合が出てきます。


こうしたことが会話の中で続くと、

事例相談者はセッションの中で、

さらに率直に話すことを避けるようになるかもしれません。

 

最後に、事例相談者の自らの成長を「外的要因」に依存させる危険性も考えられます。


事例相談者が自らの気づきを事例指導者からの「問いかけ」によるものだと認識すると、

自己内省力の発達が阻害される可能性もあるでしょう。

 

「ここまでお話しをしてみて何か気づくことはありましたか?」

「他に考えられることはありませんか?」

「もし〇〇してみたらどうなると思いますか?」

といった問いかけ、働きかけが必ずしも悪いとは言えませんが、改めてよく考えてみたいところです。

 

大事なことは、

相手と自分とのセッションにおける関係性がどの程度であるのか、

そして、その問いかけの意図とタイミングが適切であるか、

というところがあります。


訓練中や現場等で点検できることとして、

絶えず上記のリスク等をも踏まえ、

自分(事例指導者)は、

事例相談者を真にわかろうとしているのか、

事例相談者にわかろうとしていることが伝わっているのか、

事例相談者がわかってもらえそうだと安心できる場と器を提供できてるだろうか、

これに尽きるのかもしれません。


これは事例相談者に対し、

その場におけるリアルなカウンセリング基本アプローチのロールモデルとなることにもつながるのでしょう。

 

1級の安定した合格を目指すのであれば、

とにかく目の前の相手に集中し、慎み深く慎重さを保ち、

訓練では失敗を恐れず意図した経験(ロールプレイや振り返り)を幾度も幾度も積み重ねていくことが必要ではないかと思います。

そして日頃の活動における面談実践力向上においても同じことがいえるのではないでしょうか。