1級キャリアコンサルティング技能検定実技試験では、
ロールプレイと口頭試問があります。
※これは2級でもありますが…。
口頭試問について、気にしていながらも、
「概ね自分の反省点を言えば良いのだろう」
といった感覚でいたとすれば、これは残念な感じになるかもしれません。
1級の場合、受検者の役割はあくまで「事例指導者」であり、
その「指導者」という認識のあり方で、口頭試問も大きく変わってくるように思います。
自分のことばかりを中心に語ってしまい
《私は自分で自分のことがよくみえていますよ》
といったアピールを兼ね、
どこか謙った態度をみせればいいということではありません。
前回の記事の内容に続けて、今回も近いテーマで記事を書いてみたいと思います。
口頭試問において、一例ですが、
「よかった点、改善したい点」
「できたこと、できなかったこと」
という振り返りを問われることがあるとします。
※これが必ず問われるということではありません。
この二つの質問があった場合、どちらも同じことはきいてないと思います。
前回の記事では、この二つの質問の前半だけを取り上げました。
「よかった点」「できたこと」についてです。
今回は「改善したいこと」「できなかったこと」について考えてみます。
「改善したい点」と「できなかったこと」は異なる意味を持ちますよね。
これ自体がよくわからないという場合、
ご自身が支援をする際、クライエントに対し、上記の言葉を選ぶシーンを色々と想像してみることで、自分らしいイメージ等が描けるかもしれません。
これをキャリアコンサルタント同士による振り返り実践場面をイメージして文字に記してみます。
「改善したい点」という意味、これは現時点で、ある基準を満たしているけれど、
よりよくしたい、さらに質を高めたい、
また別のアプローチ等を試してみたいと感じる部分になるのではないかと考えます。
例えば、
「事例相談者が抱く相談者に対する気持ちを理解することができ、それを自分の理解で伝え返してみたとき、〜の場面で事例相談者の変化が認められた。
さらに、〜のところで問いかけの工夫を行なうことにより、もっと深い洞察を得られたかもしれない。なぜならば、〜という点で事例相談者の〇〇反応を得られたからである。」
あくまで一例ですが「改善したい点」は、このように自己評価や振り返りの中で、
よりよい事例指導面接を目指すための、自己の前向きな意識から生まれるテーマといえます。
ですから、前回の記事の通り、
「よかった点」を示しているのであれば、その「よかった点」を、
さらによりよくするためにはどうすればいいのかを考えてみることが「改善したい点」にもなるのだと思います。
そして、そもそも「よかった点」が、自己中心的なことだけに終始してしまう場合、
改善点も浮かび上がってこないかもしれません。。。
一方、「できなかったこと」の意味については、
振り返りの時点で、この面接において目標や理想に対して達成できなかった、
もしくは対応しきれなかった具体的な課題を指すのだと思います。
一例ですが、
「〜の場面で、事例相談者が気にしていた〇〇を聴き逃していたため、重要な心情の変化を拾えなかったように思う。これにより、事例相談者が抱く真の問題を共有するに至らず、結果、それ以降の課題設定、ケースを活用した具体的な学習の実施、フィードバック等ができなかった。」
これは、現場での限界や自己のスキル不足、状況の制約等が原因となることが多いはずです。
要するに、上記のふたつの違いを記すと、
「改善したい点」は指導者として今後の成長を目指す視点
「できなかったこと」は過去の結果に焦点を当ててみる視点
このように表現ができるのかもしれません。
さらに目的意識の違いもあると思います。
一例ですが、
「改善したい点」は、よりよい指導面接を実現するための挑戦や工夫の余地を示すこと、
「できなかったこと」は、現状の反省点を明確化する機能もあります。
この場合、反省以上に、次へ活かすための出発点を意識したいところ。
ただし「できたこととできなかったこと」をセットで示す際は、
事例指導の面接プロセスで例えると、
今回のロールプレイで、「ここまでができた」「ここから先ができなかった」
というように、
事例指導者が事例相談者との30分間の面接の中で共にどこにいたのか、
これを客観視できる能力を示すことも重要なことになるのだと思います。
いずれにしても、
「改善したい点」と「できなかったこと」という意味合いは異なるのだということを、
今一度考えてみることも大切なのだと思います。
このような訓練は試験のためだけに行なうものではなく、
実際のスーパービジョンや事例指導の演習を重ねていくうえで大切な視点等だと思います。
グループワークなどでも、こうしたことをその場で短時間の間で整理し、
他者へ言葉にして伝えていく訓練を積極的に行うことが大事なことかもしれません。