本日は事例指導の実践において、

事例相談者のキャリア形成支援者としての成長と、

今後の相談者への支援力向上を目指すことを目的に、指導方法を検討してみます。

 

昨年出題された第13回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験問題の

【問5】にフォーカスして考えてみたいと思います。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。

 

これまで通り、事例指導を実践するうえで重要なことには、

やはり事例相談者Bの主体性を軸にしておきたいものです。

 

事例指導者視点が前のめりに発動し、

問題事象だけを並べ、中から事例指導者の経験値等によった優先「問題」を取り上げても、

事例相談者Bが置き去りとなりそうです。

 

そもそも事例指導者の譲れない絶対的な視点や、

原理原則に基づいたような視点で、

一般的に(CC業界あるあるとして)正しいことを言われたとしても、

事例相談者Bは、そんな事例指導は受けたくもないかもしれません。

 

事例指導者が示すシステマティックアプローチやマイクロカウンセリング、

キャリアコンサルティング基礎フレームの順番等、

こうしたことで事例相談者Bの「問題」を示されてしまっては、

単に事例相談者Bを外堀から囲っているだけになりそうです。

 

しかも、事例指導者のそうした陳腐な考えで決めつけてしまった場合、

全ての失敗事例というものは、

概ね関係構築力やその維持力に問題があり、

この原因には傾聴力(気持ちが聴けていない等)の問題がある…

といった具合に全ての事例問題がそこに集約されてしまいかねません。

このようにありふれた解答を求めた試験設計ではないはずです。

 

勿論、原理原則として、

関係ができてなければ、相談者Aは言いたいことも言えない、

つまり、主訴らしきもので留まり話が深まらない、

また、関係性が弱ければ、事例相談者Bとして捉えた問題の本質を相談者Aと共有できない、

だから面談がうまくいかない。。。目標すら明確化することができない、、、

 

こうしたことは言われなくても(書かれなくても)当然のことであり、

事例指導者からそれを示されても、事例相談者Bとして納得できることは皆無に等しい。

 

【問4】で問題だと思うことを挙げているわけですから、

事例相談者Bの主体的な成長を願う気持ちが事例指導者に備わっているのであれば、

少なくとも、事例相談者Bが気になっているところ、

キャリア形成支援のあり方として事例相談者Bが一番にこだわっているところ、

そうしたところを指導者が理解し、せめてその辺りに繋がる「問題」箇所について優先して取り上げてみてほしいと考えます。

 

なお、上記に描いたような事例指導者としての態度や姿勢は、

論述であれば【問1】の段階から、

常に事例相談者Bのキャリアコンサルタントとしての思考行動の特性や、

その支援のあり方、傾向、持ち味、特徴等を、

事例指導者が丁寧に把握していく認知ステップを踏んでいなければ、

そうした真に近づく視点や考え等が発動できないのかもしれません。

 

1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験の事例問題には、

次の文章は、事例相談者Bが相談者Aとのキャリアコンサルティングについて事例指導をうけるためにまとめたものである。この事例を読み、以下の問いに答えなさい。

と明記されているので、

どの問いを考えていく際も、先ずは、事例相談者Bを忘れないでほしいと思うのです。

※上記内容は、第1回1級CC論述試験から毎年記されている文章です。

 

【問1】から【問5】まで、

事例相談者Bの立場でその体験を味わうことを忘れることなく、

事例指導者の立場からみえるものの異なりを、

事例相談者Bの考えと合わせて考えられることが、

「あなたの見立て」=「事例指導における事例指導者の見立て」といえるのではないかと思います。

 

また、具体的な指導方法には、ぜひ、事例の具体的な内容を使って何をするのか、

事例相談者Bが持つ固有性にフォーカスした内容を、

ポジティブフィードバックと建設的フィードバックの行き来を通じ、

事例相談者Bの動機づけを踏まえた指導ステップで考えてみてほしいと思います。

 

さらに、忘れてはならないこととして、

今回のケース検討だけに終わらないことです。

事例相談者Bの自らの気づき自体が、

今後のキャリア形成支援の面談にどのように影響するのか、

事例相談者Bの理解をきちんと確認していくセッションイメージが重要にもなります。

 

事例指導者は壁打ち相手くらいしかできないかもしれませんが、

それでも、本当の壁打ち相手ができるということは、

事例相談者Bにとって一人では決して成し得ない、

この上ない意義深い自らの適切な振り返りが可能となるのです。

 

こうした点で、事例指導という営みは、

事例相談者がその体験をそのまま相談者支援に活かすことのできる、

リアルな瞬間を味わう場になるのです。

 

明後日の受検、皆様の成功を心から応援しています。

受検まで、まだまだやれることはあるはず。

学びを重ねてまいりましょう!!!