昨日に続いて、
1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験問題について、
第13回過去問の問2に当たるところを解説してみたいと思います。
なお、この記事は、私が現場で考え実践しているひとつの指導的スタイルであり、
「こうすれば試験で合格しますよ…」と書いているわけではありません。
勿論、キャリア形成支援者同士による事例指導のあり方として、
重要且つ基本的な要点に触れているつもりですので1級受検の参考になると思っています。
そのようなことから試験についてひとつの考え方を書いていますので、
フィットする方は記事の内容をご参考に色々考えてみてください。
前回の記事でも触れた通り1級の試験と2級とは目的が異なります。
この問2においても、事例指導者(受検者)である人が、
相談者Aをあたかもわかっているかのように考えてしまうことは実に勿体無いことになりそうです。
事例相談者がせっかく学びにきている前提(事例指導を受けるために事例相談者が事例指導者に提出した事例)であるにも関わらず、
(相談者Aは自己理解ができてない、仕事理解ができていない、コミュニケーション不足、中長期プランがない、視野狭窄、思い込み、決めつけ等々)
これを「あなたの見立てに基づき」という問いの言葉に引っ張られて、
(相談者Aはここが弱いから、ここが偏っているから、こういうことに取り組むべき、
これが私の見立てだよ。)となってしまうことがありそうです。
事例記録の文字だけを追っかけて時期尚早な粗い解釈をしてしまうこと…
これだけは指導者として避けたいものです。
事例指導者(受検者)は相談者Aに会っていないのですから。
改めて今回も、事例問題の前提と問2を連ねて以下に記してみます。
次の文章は、事例相談者Bが相談者Aとのキャリアコンサルティングについて事例指導をうけるためにまとめたものである。この事例を読み、以下の問いに答えなさい。
問2 あなたが考える見立てに基づき、相談者Aが「問題」を解決するために取り組むべきことは何か、記述せよ。
いかがでしょう。
あなた(事例指導者)と事例相談者との事例指導面接の光景がイメージできたでしょうか。
この問いにおいても、事例指導者の態度が影響すると思いますし、
また、事例指導者としての思考行動特性がよく表れそうな課題が取り込まれていると思いました。
例えば、
「あなたが考える見立て」という意味合いの認識が、
単に、あなたがキャリアコンサルタントとして見立てて…と置き換えているとすれば、
この問題の前提とずれてきそうです。
「あなたが考える見立て」
これは事例指導の実践であれば、事例相談者の考えをも通して見立てていくスキルも取り入れて欲しいものです。
この問2も1級の実技試験(事例指導)です。
さらには、「相談者Aが取り組むべきこと」という言葉を、
そのまま文字通りに相談者Aが一人で取り組むことと考えているとすれば、
これもこれでキャリア形成支援についての考え方の軸が揺れているのかもしれません。
事例指導の場面を想定してみれば、
ここでは事例相談者Bが相談者Aの変容を目指して支援としてやろうとしていること自体を理解していき、
それを相談者Aに取り組んでもらいたいと考えてみることがファーストステップにないと、
事例指導者の勝手な判断になってしまうこともあるのです。
事例指導では、すべての要素において、事例相談者の立場と尊重、
その理解の工夫から思考を柔軟にして考えてみることが重要です。
問1と問2が当然に連動しているわけで、
前回の通り、事例指導者としてみた時、
事例相談者が相談者の主訴をどのように把握しているかによって、
事例相談者の支援のあり方も変化するでしょう。
勿論、それだけではなく、事例指導者としても事例相談者の考え方等を通して、
相談者の主訴を異なる視点からも察知できると思います。
その両方から見た時、相談者が取り組むべきことが浮かび上がってきますよね。
その根底にあるのは、
事例相談者のCC視点と、私たち事例指導者(受検者)のCC視点が発動しているはずです。
※CC視点は、相談者が気づいていないことが多く、それは相談者の取り組むべきことにつながります。
つまり、問1では事例相談者と事例指導者が持つCL視点が発動し、
問2では事例相談者と事例指導者が持つCC視点が発動するという感じ。
1級論述は事例指導の実技ですので、
私たちがキャリアコンサルティングを相談者Aに行う前提ではないことを、
事例問題の冒頭からしっかりおさえておきたいところです。
以上のような考えをもとに、
キャリアコンサルタント同士で行う相互作用を活かした学習というものについて考えることにつながりますし、
論述問題を活用し、指導実践スキルを磨くことができると思っています。