《問1 相談者が訴えた「問題」は何か、記述せよ。》
第13回1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験問題での最初の問いです。
第12回過去問の事例1を学習素材にし、
第13回の出題形式変更となった新たな各問について考えてみます。
今回は問1について。
何を前提にこれを考えるのか。
それは、事例相談者が相談者とのキャリアコンサルティングについて事例指導を受けるためにまとめた事例記録をもとにして実技として考えていきたいです。
この目的は、
事例指導者(受検者)自身が相談者を直接支援するということではなく、
また、解答内容について上手な書き方を評価してもらうわけでもありません。
事例指導の面接実践をイメージしながら、
事例相談者の成長と相談者へのよりよい支援に繋がる関わり、考え方について評価してもらうものだと思います。
1級受検者が相談者に対してキャリアコンサルティングを実施するイメージではありません。
上記の問1について、事例指導者としてどのような思考過程を踏むとよさそうか。
実践的な視点からのひとつの考えですが、
先ず、この面接での学びの主体である事例相談者自身の捉え方を知ることだと思います。
この事例をまとめた事例相談者は、相談者が訴えた「問題」をどのように捉えているのか、
それは指導に重要な要点になります。
事例指導者の見立てというものは先ずその点が必須にもなります。
そのうえで事例指導者として捉えたところを重ねて考えてみるというステップが必要でしょう。
事例相談者と事例指導者では立場も経験もスキルも諸々異なりますので、
当然にみえるところが異なることは言うまでもありません。
だからこそ二人の間でのやり取りが有効に働くのだと考えますし、
事例指導者にとってもよい刺激を得られる、そして事例相談者にそれがよい影響へと繋がる。
こうした相互におけるやり取りをイメージしながら二人の視点を組み合わせ、
相談者が訴えた「問題」をよりあれこれと深めて考えいく機会にしてほしいと思います。
「業務が相変わらず多忙」「しかも会社は働き方改革の推進をしている、部下の残業時間管理も強く言われている」「部下も多忙」「最後は私の責任になる」「常に仕事をしている感じ」「このペースが続くのはしんどい」「事業部長に相談したが直ぐには増員はできないと言われている」「むしろ上層部は、人員削減を検討した方がよいという考えのよう」「現在の給与は割とよい方だと思いますが、先の不安もあります」「現在の給与水準を維持し家族を養う」
例えば、上記は、事例相談者が相談者の訴えを記録にしているものです。
所感において(働き方改革の影響、実態も把握できた)と表現しています。
事例相談者はこれらの今の状況を打開するための支援を考えている様子が記録から伝わってきます。
少し視点を変えてみると、事例相談者の記録には、
相談者自身を理解していく機会に繋がることも記されています。
上記に記された諸々の状況等と併せて考えてみたいところに、
「管理職になるまでは仕事中心で『出世のために頑張る』なんて思っていた」
「こんな生活をずっと続けていくのは大変かも、という思いはその頃からありました」
「今は以前のように昇格することに魅力を感じていません」
といった相談者の今の仕事への志の変化も記録に残していますよね。
今、会社組織の中での諸活動に対し、没頭し満足感を得られている状態かといえば、
そういう状態にはないということが描かれていています。
このように考えてみると、
事例相談者が捉えている相談者が訴えた「問題」と、
私たち事例指導者が捉えられる相談者が訴えた「問題」は、
非常に近接しているところもありつつ、相談者を照らした際、
訴えている「問題」が何であるのかが互いに異なってくることにも気づきます。
事例相談者の捉え方を土台にしながらも、より深めてみることもできそうですね。
来談経緯に記されている
「部長としての責任はあるが、今後どのような働き方をしたらよいか迷っており」
といったところに戻りながら、
相談者が訴えた「問題」を考えてみたいところ。
相談者が抱えている諸々の事柄や事情などから考えていくことも大切なことがあるかもしれません。
それは事例相談者がすでに見立てているところにもなると思います。
そして、事例指導者からみえてくる感覚のひとつとしては、
相談者の置かれた状況等を、相談者本人がどのように意味づけられているのか、
結局のところ、相談者自身がどうしたいと考えているのか、
そんなところに繋がる叫びが相談者の「訴え」としてあるのだと思います。
3行の解答欄のスペースに、これらを整理して併せて記述できることが、
事例指導実践での「相談者が訴えた問題」にもなるのではないかと考えます。