以前、キャリアコンサルタント同士で以下のようなお話しをしたことがありました。
※実際のお話しではなく架空の内容です。
Aさん
「キャリアコンサルタントは儲けるという発想にどうも疎いというか、
何かしらの正義感からなのか、儲けることが悪いと感じている場合があるよね」
Bさん
「…(少し考えて)…Aさん、あなたは自分の利益を得るためにクライエントの支援をしているの??」
Aさん
「だって、食べられなきゃ意味ないでしょ?
資格取れば仕事が少しは得られると思ったし、
養成講座とか研修セミナーとか、
あれこれと結構お金かけてるんだから…
しっかり回収しなくちゃね。
正直言って自分が稼げなきゃ人の世話なんてできないでしょ。
Bさんはキャリコンがボランティアで活動しなくちゃいけないって言いたいの?」
Bさん
「きっとキャリアコンサルティングを行う起点が違うのだと思う。
私は儲けたらいけないなんて言ってないよ。」
キャリアコンサルタントの資格ができる頃からこうしたことを話し合う場面は大なり小なりあったのかもしれません。
今では当たり前のようにキャリアコンサルタントで生計を立てる等という発想をベースにした考えを示す方もいたり、
どうかすると職能団体等といわれるところでも、
そのようなことをテーマにイベント等を考えることもあるようです。
キャリア形成支援は対人支援であり、
また心理支援のひとつです。
キャリアコンサルタントがクライエントを相手に、
自己のスキルや場と器の提供などによる対価として利益を追求することは深刻な倫理問題を引き起こします。
この問題を理解するためには、
対人支援・援助の本質とその基本原則を見つめ直すことが必要だと思います。
対人支援の根本的な目的ではクライアントの福祉を最優先します。
クライエント一人ひとりの選択、異なる人生の質を向上させることです。
クライアントが自己の能力を最大限に発揮できるよう側面的に支援していくため、
彼ら個別のニーズやウォンツと目標に沿った適切なかかわりや資源を提供することも含まれるでしょう。
だからこそキャリアコンサルタントは、
クライアントとの信頼関係を築くことが求められ、
この信頼関係は誠実さ、公正さ、透明性を基盤としているからこそ特別な場を創造できるはず。
キャリアコンサルタントがクライエントとの面談において自己の利益を優先する場合、倫理的基盤が揺らぎます。
例えば、
キャリアコンサルタントが特定の機関や企業等から紹介料や手数料を受け取っている場合、
クライアントに対するかかわり自体が客観的でなくなる可能性があります。
この状況では、クライアントの最善の利益を考慮するのではなく、
手数料等を得るための偏ったかかわりやアドバイスが行われる恐れがあるのです。
さらに、キャリアコンサルタントが自己の名声や自分の人生の質の向上を優先する場合、
クライアントの個別のその人にとってのニーズ・ウォンツ、状況等を把握できず、
自己にとって有利な成果を追求することがあります。
一例ですが、
自分の実績を誇示するために、
クライアントに過度なプレッシャーをかけることなども考えられます。
これではクライアントが置き去りです。
対人支援・援助における自己利益の追求というものは、
クライアントとの信頼関係、安心の提供を損なう可能性が高い。
キャリアコンサルタントの信頼性を低下させる重大な倫理問題だと考えます。
キャリアコンサルタントは常にクライアントの最善の利益・幸せを考慮し、
誠実な支援を提供することが求められるはず。
だからこそクライアントが真に自己の可能性や実現性を追求し、
より充実した人生(キャリア)を築くための側面的支援が可能となるのです。
キャリアコンサルタント自身もキャリアコンサルタントを育成する職能団体等も、
個々のクライエントへのキャリア形成支援についてより丁寧に展開されることを目指し、
個別性を豊かに受容できる専門家を育てていくシステムを構築していくべきだと考えます。
それにはまず人の話を人の立場になって聴けなければ何も始まらないということ。
全てのキャリアコンサルタントが「本当に聴ける」ことをそれぞれで目指すことも大事な一歩なのだと思います。
「簡単にわかったつもりにならない」専門家を目指したいものです。