1級キャリアコンサルティング技能検定試験の対策講座を実施してきて、

受講者様へ問いかけ、受講者様と一緒に考え続けていることのひとつに、

「事例相談者の視点」があります。

 

個人ワーク内でもグループ発表時等でも、

多くの場合、事例指導者(受講者様=1級受検者様)の視点が前に出てきます。

例年、これは同様の傾向があり興味深い現象でもあるのです。

 

何事もひとが変化することはそれほど容易ではありません。

 

だからこそ、

事例相談者に対しても、そうした見方や向き合い方ができること、

これが事例指導者により重要な態度になるのだと考えています。

 

事例指導者の視点を前に出していくということは、

自分の見方を相手に押し付けていくことにもなり得ます。

それは事例相談者の成長を妨げることにもつながることがあります。

そして1級の論述試験でも面接試験でも実技試験として考えてみた場合、

そうした態度ではどこかもったいない感じがします。

 

単に事例指導者が自分の考えだけをそのまま示す程度の試験であるとすれば、

それは難易度が然程高いことでもなさそうですし、

そもそも、事例指導者が主体では事例指導の実技としておかしなことになります。

 

目の前の事例相談者(キャリアコンサルタント=学習者)が、

自己の事例を使って何かを得たいとする、その変化等への苦悩の過程を、

事例指導者が共に感じていけるようなかかわりができるか否か、

これは効果的な事例指導の面接にとても重要なポイントになるのではないかと思います。

それこそ事例指導者自身の面談実践スキルそのものではないでしょうか。

 

私たちは他者のキャリア形成への心理的支援を含む実践的アプローチをあれこれと知っているのかもしれません。

そして、肝心なのはそうした知識や介入技法、展開方法などではなく、

誰に対してでも、ひととしてのあり方を大切にできることと、

またそのあり方そのものが、キャリア形成支援、相談支援での重要なファクターになることを理解していることが必要です。

 

つまり、事例指導という場面においては、

「事例相談者の視点」で現実をみていくこと、

この過程に注意を向けてほしいと思っています。