本日は都内で3日目の仕事となります。
改めて、東京におけるラッシュ時の人の多さを痛感しているところ。
関東圏の今日はあいにくの雨。午後には雨があがる予報になっています。
さて、今回の記事では事例相談者の「沈黙」について考えてみます。
ひとと話しをしていく中で、
どちらかが「沈黙」する場面は誰もが経験されているかと思います。
普段であればこの現象は、例えば問いかけられた側が自分の考えや思い等、
自己を振り返りながら何かを吟味しているようなシーンであったりします。
もしくは、
言われたことに対しぐうの音も出なくなっている状態、怒りが込み上げてきたとき、
真っ白になってしまった場合などもありますよね。
これは普段の生活でもありますが、
クライエントとキャリアコンサルタントの間でも起こり得ることです。
ここではこの「沈黙」について、
事例相談者と事例指導者の関係において考えてみたいと思います。
実際の事例指導の訓練の場や、1級キャリアコンサルティング技能検定試験の準備として、
ロールプレイの練習をしていく場面がありますが、
こうしたところでも事例相談者役の方が「沈黙」している場面を観察することがあります。
勿論、実際の現場でも、
また、実際の試験のロールプレイの場面でもあるでしょう。
興味深いことに、事例相談者が「沈黙」した際、
事例指導者から
(今の質問はわかりにくかったですかね?)
(よくわからない質問ですね…では、質問を変えますね。)
といった対応をとることがあります。
こうした対応は、
事例相談者にとって邪魔につながることがあるから注意が必要です。
事例指導者から何かを問いかけていく直前までの関係性によるのですが、
実際、事例相談者が事例指導者に対して、それまでの時間、
真に話しを聴いてくれている、
専門家としての自分をわかってもらえたような感覚を抱くことができていれば、
二人の関係性において、事例指導者から問いかけることは、
事例相談者を照らしたものになっていることが多く、それは他人事にはなりません。
ですから、
こちらからの問いかけに対して事例相談者が「沈黙」していたとしても、
実は「沈黙」ではないことがわかり、またその瞬間を共に味わえることにもなるのです。
この大事な時間に、
(答え難いですか?難しいですか?)
といった余計な一言を言われると、事例相談者の思考がとまってしまいそうです。
ましてや、勝手に質問を変えましょうなどと言われたら、
なんとも残念な感じ、取り残された感覚が生まれる感じがします。
事例指導者の時期尚早な粗い解釈がこんなところにも現れるのです。
こうしたスキルやセンスも、カウンセリングアプローチの重要なポイントにもなります。
こんな記事を読んだことがあります。
キャリアコンサルタントの養成を検討していく中で、
“我が国では、アメリカのようなカウンセリングのノウハウや伝統がないことや、受入れ側の国民もただちに高いレベル(大学院資格)のカウンセリングを求める需要がないことから、まず、職業やキャリアに関する基本的、実践的な相談ができる人材をある程度の数を養成し、企業内、需給調整機関、能力開発機関等に配置されることを目標とすることが適当。”
「厚生労働省職業能力開発局,2002, キャリア形成を支援する労働市場政策研究会 報告書」
実に興味深く、本当に実践に立っているひとがこうした発想を持つだろうか…
と不安と残念な気持ちになったことがあります。
さらには、
“なお、アメリカにおいては、こうした個人のキャリアに係る指導・助言活動を「キャリア・カウンセリング」と呼称している。我が国においては、「カウンセリング」という用語が心理的な療法を想起させる面が強いことを考慮し、上記研究会において、労働市場における職業キャリアの方向づけに係る相談・指導・助言を表す用語としては、「キャリア・コンサルティング」を使うこととしている。”
「厚生労働省職業能力開発局,2002, 「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書」
この報告書を読んだときも、個人的には違和感を覚えたものです。
どうしてこうなるのか、面白いところでもありました。
実際、このような表面的な感覚というか、一般化した深めないままの感覚や発想は、
クライエントをみているというよりは、
カウンセリングという言葉への余計なとらわれだと感じることがあるのです。
読者の皆様はどのように考えられているでしょうか。
所詮、キャリアカウンセラーが心の問題を取り上げることなど、
臨床家(臨床心理士等)と比較すれば低水準でしか対応できないというようなメッセージを出している著名な先生がいらっしゃるほど。
キャリアカウンセラーやキャリアコンサルタントが持つ、
カウンセリングアプローチスキル自体を、実際の現場をみたわけでもなく、
もしかしたら軽視しているのではないかと感じることもあります。
企業組織であっても、〇〇組織であっても、どこにいても、
日々、個々のキャリア形成のあり方や要求はそれぞれ異なり、
領域や分野等を超え、対人支援の基盤はたとえベテランでも磨き続けていく必要があり、
それが下支えになり、信頼のおける各分野の専門家等との連携・協働が得られるようになるのだと、実践していてつくづく実感しています。
キャリアコンサルタントが目の前、
そこにいるひとの話しを真にそのひとの立場で聴くことができなければ、
心理的要因をも含むキャリア相談自体を把握することができません。
さらに、事例指導者は、事例相談者の目の前で、
実際に事例相談者に対し、それをその場で実践できる必要があり、
事例相談者は改めてそれを直に体験し、自己の中でパラレルが起きることもあるのです。
表題のテーマに戻り、
1級キャリアコンサルティング技能士だからこそ、そもそもの「沈黙」について、
さらに深く理解できるような努力と体験を増やしていく必要があるように感じます。