昨日までの2日間、
福岡で1級キャリアコンサルティング技能検定試験対策講座を開催いたしました。
計11名の受講者様と論述過去問を中心にして事例指導の実践的な視点を学習しています。
2日間ともに論述問題について共通したご質問をいただき、
また、その内容が興味深いところにもなると思いましたので、
ここで改めて文字化してみたいと思います。
先ず、1級の試験は2級の試験ではありませんので、
例えば、
論述問題で設定されている事例(事例記録や逐語記録)の読み方やその捉え方等の全てが異なると考えることができます。
事例を読む目的等が異なると表現してもいいかもしれません。
ブログでは1級で問われている事例指導について考えることをベースにした記事を書いているので、
1級の問題だけにフォーカスします。
事例指導の実践では極端に表現するならば、
事例を知るために事例相談者からケースの説明をしてもらうわけではなく、
事例相談者を様々なところから理解していこうとする目的でケースを説明してもらいます。
事例指導者自身がケースを知りたいわけではないということです。
当然ケースを理解していく過程が事例相談者理解につながっていくことも視野に入れて、
ケースではなく事例相談者に焦点を当てます。
幾度か記事にしてきているポイントですが、
この問題(事例)自体、
「次の文章は、事例相談者Bが相談者Aとのキャリアコンサルティングについて事例指導をうけるためにまとめたものである。この事例を読み、以下の問いに答えなさい。」
と指示されています。
ですから、
受検者は事例指導者の立場になって事例(事例相談者)を理解していくわけです。
すると興味深い現象が起こることがあります。
事例を読んでいる受検者である「あなた」が、
事例記録を認識をしていく過程で、
その理解が「あなたの考え」に支えられて理解していることにも気づくでしょう。
つまり、
問いの中で特に「あなたの考え」と指示されなくとも、
その解答の全てはあなたの考えとなりそうです。
当たり前だよ…
という声が聞こえてきそうですが、
なぜかここに迷いが生じていることがあるから興味深いのです。
「相談者が訴えた問題」を考えてみるときも、
結局は、その論述試験での解答の全ては、
受検者である「あなた」が捉えた固有の解答になります。
普段の認識や表現で考えれば、
全てが「あなた視点の問題把握」とも表現できるのかもしれません。
意外とこれがキャリアコンサルタントの中で、
ごっちゃになっている場合もあるのではないかと思いました。
私たちはキャリアコンサルティングの学びを重ねていく中で、
初学者時期から、それが自己の考えだったとしても、
その中で、
・相談者視点の問題(主訴等)
・キャリアコンサルタント視点の問題(相談者が気付いてないような問題等)
といった視点を分けて整理していく段階があります。
その二つの視点を整理できるからこそ、
それを合わせて支援に活かすことができるのです。
これは専門家として当然かもしれません。
つまり分けて整理し考えていく訓練を受けています。
事例指導の実技訓練の場合、
上記の視点二つをそれぞれの二人の立場から考えてみることが必要でしょうし、
さらには、その二人の立場を通して、
事例指導者「あなた」視点の問題を考えてみるという少し高度な視点も併せて養っていきます。
ここで気づくことは、いくら「〇〇視点の問題」と考えてみたところで、
それは事例を読んでいる「あなた」の捉え方、考え方、
つまり「あなたの視点」になっているということです。
この現象を自分で理解でき、行き来することができることも大事です。
そしてその中でも、
それぞれの立場での視点を分けて考えられることも重要なのです。
あなた視点でしか考えられないことは一旦「あなた視点」としてわきにおいて、
改めて、事例から「相談者Aが訴えた問題」を考えてみることにしましょう。
そもそもこの事例問題自体、
「事例相談者Bが事例指導をうけるためにまとめたものである」ことを鑑みれば、
事例指導の実践的な場面での認知過程を踏むとき、
先ず、
この事例をまとめた事例相談者Bが、
「相談者Aが訴えた問題」をどのように捉えているかを認識する過程が必要。
事例指導の実技だからです。
当然に事例記録というフォーマット内の情報源も事例相談者Bのものです。
そのうえでさらに重要なポイントは、
事例相談者Bの捉え方を理解していくプロセスの中で、
事例指導者である「あなた」も、
立場が異なるからこそ見えてくる「相談者Aの訴え」があるのではないかと思います。
そう。どっちかが正しいわけではありません。
立場が違えば見え方も違う。
だからこそ事例相談者Bにとっても事例指導者の捉え方によって学習機会を得られるわけです。
事例指導の場では、事例相談者Bがみた「相談者Aが訴えた問題」の理解と、
その刺激を受けながら事例指導者としてみた「相談者Aが訴えた問題」の捉えを合わせたもの、
それこそが事例指導の場で表現していく「相談者Aが訴えた問題」だといえるのかもしれません。
ここで注意が必要なのは、上記に説明してきた内容は、
事例指導者「あなた」の視点で捉えた相談者Aの問題ではありません。
勿論、事例相談者Bの視点で捉えた相談者Aの問題でもありません。
※つまりキャリアコンサルタント視点の問題ではないということ。
キャリアコンサルタント視点での問題把握を「相談者Aが訴えた問題」として記述してしまうと、
問題把握の整理ができないキャリアコンサルタントだと勘違いされてしまう恐れがあります。
「キャリアコンサルタント視点の問題」は「相談者Aが訴えた問題」とは異なりますね。
あくまでも「相談者Aが訴えた問題」を、
事例相談者Bがどう認識しているかを自分の考えと合わせてみてみることが大事だというところがポイントです。
「あなた」の解釈が優先し暴走してしまったり、
一般化すればするほど、事例相談者との関係性がおかしくなります。
事例指導の現場をイメージして論述も実技試験であることを意識して考えてみましょう。