事例指導の場において、
事例相談者自身が考えるキャリアコンサルタントとしての伸び(成長)に注目した話題を展開することがあります。
一例ですが、職場の後輩や経験の浅い同僚等が仕事のことなどで相談してくれたとき、
その相談を受けながら、問題は何か、その問題解決のための対策として何がありそうか、
こうしたところに注目しがちになることもあるかと思います。
それも大事なことかもしれません。
一方で、相談をしてくれるということは、その人自身が成長しているから…
というところに注目する視点をもつことも重要なことがあります。
なぜなら、それは相談してくれたその人自身を主体にした関わりになるからです。
これは1級キャリアコンサルティング技能検定のロールプレイにおいても、
事例相談者役の方にとって有益な場面になることがあります。
そしてそれは現場での実践と同様であるとも考えます。
事例指導という場になると、
事例指導者側が自分の見立てやその考えをどこかで前に出し、
何かしら事例相談者へ指し示すようなことをしなければならないと考えることもあるかもしれません。
事例指導者の中で現状のアセスメント(評価・査定)をすることが優先されてしまい、
結局、事例指導者が何歩も先を行くような見立てを考えている。
どこか事例相談者の気分を損なわないようにしながらも、
恐る恐る小出しに指導者視点を出してみていく。
これでは遠回しに事例相談者を責めているような、
外堀を埋めていくような関わりになるのかもしれません。
これを時間内で繰り返してみても、
事例相談者は自分で自己を照らすことができないことも多いものです。
例えば、事例相談者が持ってきてくれたケース記録があります。
それをご本人がまとめたとき、事例相談者自身はケースを振り返りながら、
仮に、2年前と現在の自分のイチをどのように感じているのでしょう。
キャリア形成支援活動の質、そして自身の伸びをどう評価しているのでしょう。
例え、その対話が短くても、
それが事例指導に重要な場面になることがあります。
ケースを説明してもらっている際、
事例相談者以上に、事例指導者が一人で見立てを考えながら聞いているだけでは、
事例相談者へのねぎらいの態度ですら真に出せない、相手は感じられないかもしれません。
相手へのねぎらいというものは必ずしも言葉や表情だけで示すことではなく、
事例指導者のそんな態度から伝わっていくものでもあると感じます。
事例相談者が現場でどのような諸活動をしているのか、
リアルにイメージが浮かべられるよう、
事例相談者が語れるきっかけと場を提供し、
それを心で聞けるからこそ、その人のことが少しでもわかるのだと思うのです。
それには、事例相談者が事例指導を受けるためにまとめたケース記録を通し、
本人が自己の成長をどのように評価しているのか、
改めて、考えてみる機会とその場をつくっていくことも事例指導者の役割のひとつなのかもしれません。
こうした二人の間(あいだ)を大切にしていく事例指導者のゆとりある態度が、
事例相談者の気持ちを豊かにしていくことにもつながることがあります。
なお、これは1級の論述でも面接でも同じことが考えられ、
このような思考のベースが磨かれていくことで、
お互いの発想が拓かれていくのだと思います。
3月31日のオンライン事例指導公開イベントでは、
こうしたところも意識して30分間のライブセッションを過ごしてみたいと考えています。