先日の記事に続き、
第13回1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験について、
ひとつの考えを記事にしてみます。
今回は、問1で問われている
「相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。」
という問いの具体的な事例内容について触れていきます。
前回この問題の考え方を書きましたが、
具体的に示すと、
まず興味深いところとして
【事例相談者Bが事例指導者に相談したいこと】の記述に、
「予算管理が苦手だという訴え」という箇所がありますよね。
この事例相談者Bは、
相談者Aが訴えた問題について、
そのように捉えているということになりそうです。
学派や基礎的な講習内容等によっても異なりますが、
例えばキャリアコンサルタントやカウンセラーが学んできたことに、
《主に訴えていること=最初に言ったこと》
という共通の方程式みたいなものがあります。
※相談者のためになるものであれば、私たちの捉え方等どうでもいいのかもしれませんが…苦笑
これを断固として絶対なのだとする場合、
確かに相談者Aが訴えたことはそうなのかもしれません。
それでは表面しかみていない、
または、主訴みたいなことでしかない場合もあります。
ひとはロボット等ではありませんし、
我々が何がなんでもその方程式に置き換える必要はないと思います。
ひとの考えや気持ちは複雑なもので、
だから諸心理学を根底に考えていくことが面白いのだと感じます。
前回記事にしたように、
事例相談者Bがそのように捉えているであろうことを否定することもナンセンスです。
例えば、
この事例では「予算管理が苦手だという訴え」
と事例相談者が捉えている記録内容をなるべく生かして考えてみることが大切だと思うのです。
事例相談者は、相談者Aが、
「過去にも何回か予算未達のプロジェクトを経験している」
「顧客に対してより良いものを作ることに意識を向けていた」
「予算を達成し、利益を上げなければ事業が成り立たないことは分かっている」
「その責任を自分が担うのは非常に荷が重い」
「管理職になったらずっと予算に関わることになるため不安が大きい」
「2人の娘がまだ中学生で、妻は専業主婦。管理職にならないと収入が増えない」
といったことを発しているのを記述しています。
つまり、相談者Aが訴えた「問題」は、
「予算管理が苦手だという訴え」だけに留まらないことが見立てられます。
この点を事例指導者が深めていくような、付け加えていくようなイメージでしょうか。
これが問1の解答にもつながるように私は考えています。
具体的に文字にしてみると、
『企業組織内での役割変化と管理職の責任に対して相反する思いに苦しみ、また家計を一人で支えていく不安がある。より良いものを作ることへの思い、利益を上げなければ事業が成り立たないといった認識、責任を担うことの荷の重さを言葉にしていること、家計の責任の語りからも葛藤と不安が訴えとして伝わってくる。』
といった感じで相談者Aが訴えた「問題」を表現することもできるでしょう。
今の私が表現する相談者Aの訴えです。
このポイントは、
事例相談者が捉えている(記録に残している)相談者Aが一人では整理し難い、
日頃から積み重ねている悶々とした闘い、
負の体験によって抱いているイメージ、
そして将来への責任と不安みたいなものに脅かされている様子を「訴え」として表現することができることだと思います。
※私は事例相談者Bの記録からそのようにとらえます。
この事例自体、
事例指導をうけるためにまとめてきた事例なのですから、
相談者Aが訴えた「問題」を事例相談者と共有していく際も、
事例指導者として言葉(文字)にしてみるときは、
事例相談者Bにとって自分が記述した(捉えた)一つひとつの言葉の意味を、
相談者Aの立場になって統合的に考えていくことができるようになるといいですよね。
要するに、相談者Aが訴えた「問題」は、
(予算管理が苦手)
(管理職になって予算の責任を担うのは荷が重い)
(家族のことがあり収入が増えない)
といった表面的なことではない…
といえるのかもしれません。
事例指導では事例相談者が自分で気になっているところと、
上記に示したようなところをつなげられるように複数往復しながら関わりたいものです。
次回は問2の考え方から記事にしてみたいと思います。