1級キャリアコンサルティング技能検定の面接試験では、

ロールプレイが始まると大抵の場合、

事例指導者(受検者)から最初に自己紹介をおこなうシーンがあります。

 

このとき事例指導者の自己紹介が冗長だと、

事例相談者との関係性に悪影響が起こることもあります。

 

事例指導者としては自己の活動領域や経歴、

そして理論的立場や学んできていることを伝えたい気持ちがあるのかもしれません。

 

それを可能な限り短く簡潔に示すことで、

その話しをきく事例相談者にとって、先の事例指導面接に期待感が持てることにもなるでしょう。

 

大事なポイントとして、

特に検定試験においては事例指導者の自己紹介に時間をかけることはナンセンスでしょう。

受検者として自分の大事な受検機会となりますが事例相談者の大切な時間にもなります。

※事例相談者があなたの自己紹介をじっくり聞きたいというのであれば話しは別かも。。。

 

例年、実技(面接)試験実施概要に、

(受検者は、民間の相談機関等において…)

と記載があり、

これを自分が気になるところだけを拾って解釈してしまうと、

「実際の自分の活動領域やその内容を伝えてはいけないのかな?」

「自己の役割を仮定で演じないといけないのか?」

と考える場合があります。

 

また

(ご自身の専門領域や理論的な立場などについて1分程度で説明)とあるので、

考えた結果、

「来談者中心アプローチ」

「システマティックアプローチ」

といったワードを自己紹介に取り入れているケースもなどもあるかもしれません。

また、直近で学んでいる理論や実践的アプローチを伝えたくなるときもありますよね。

 

例えば、

「あなたが自己紹介で言葉にした『来談者』とは面談に来たクライエント全般的なことですか?

それとも出会うその人の個別存在自体を指しているのか、

その辺りがよくわからなかったので改めてここで説明いただけますか?」

と口頭試問で試験官に問われたらどうするのでしょう。

※口頭試問は例年通りに概ね定型的な質問があるのかもしれませんが、

目の前の受検者の考えがわからなかったり矛盾を感じたりするようなところは、

そこが大事なところであれば普通に質問されることもあるはず。

 

仮に首尾よく応じられたとしても、

「では事例相談者はそこまでわかっていましたか?」

「その説明を事例相談者に丁寧に行う必要はなかったのですか?」

と問われ続けるかもしれません。

 

「システマティックアプローチとは特定の理論を指して言っているのでしょうか?

具体的に何をおっしゃっているのかわからないのでもう少し説明してください。」

と問われることもあるかもしれません。

※ブログ上での想像です。

 

試験官からそうした質問を受けたらドキッとすると思います。

 

何はともあれ、

事例相談者にとって事例指導者が中心になった自己紹介はあまり役に立たないかもしれません。

 

試験実施概要に記されている「等」「など」という言葉を含め、

せっかく記載されているその文章の意味を偏った解釈だけから認識を深めてしまうと、

自己を窮屈にしてしまうことにもなり得ます。

そしてそれは目の前の事例相談者をも窮屈にしていることにもなるでしょう。

 

事例相談者と事例指導者との関係性のうえでキャリアコンサルティングを考えたり、

事例相談者の成長を考えていく際、

事例指導者がある程度余裕のあるひらかれた発想を持っていることは大事だと思います。

 

あくまで一例ですが、

(民間の相談機関)でないといけない

(専門領域)がないといけない

(理論的な立場)を伝えないといけない

事例指導者がこのように考えてしまってはもったいない感じです。

 

事例指導者が自分のことで必死…

なんてことにならないように気をつけたいものです。

 

1級に合格している方で自己紹介を30秒ほどで終え、

まもなく事例相談者の話したいことに話題を移している方は多く存在しています。

極端な表現かもしれませんが自己紹介を含めた事例指導のセッション中、

一瞬たりとも事例相談者を置いてけぼりにしないことです。

 

ロールプレイ開始後、

雰囲気作りのためなのか、事例指導者から事例相談者に対して

「今日はお越しいただきありがとうございます。

道中寒かったのではないですか?ここまでの道はわかりやすかったですか?」

と声をかけている練習場面にも出会います。

 

事例指導者の人柄等から自然にそれが優しく滲み出ていれば違和感を覚えることがないかもしれません。

そうした言葉がけが事例相談者にとって効果的なかかわりになることもあります。

 

一方、一見何気ないつもりの雑談や前置きが、

事例相談者に余計な気を遣わせていることがあると思います。

事例指導者の演技的な関わりに、

事例指導の本題と関係のないところで付き合わなければならなくなってしまう感覚が起こることもあるかもしれません。

こうしたところでズレが生じるのは実にもったいないことです。

時間泥棒にならぬよう、

事例相談者にとっての大事な話題で時間を過ごすことが優先だと考えます。

 

数十秒の時間の使い方によって、

事例相談者にとっての学びがグッと深まる瞬間を創り出すことがあります。

事例指導者の全人格をかけた集中力が、

事例相談者のキャリア形成支援者としての育成に役立つのだと思います。