1級キャリアコンサルティング技能検定学科、および実技論述試験の受検を終えて、
多くの受講者様から受検後のメッセージやご自身の感想等を送っていただきました。
どうもありがとうございます。
言い訳ですが、私自身の仕事の都合等から、
お一人おひとりのメールを落ち着いて読むことができずお返事が追いついておりません。
大変申し訳なく思っております。今しばらくお待ち願います。
先ほど、キャリアコンサルティング協議会様から、
第13回1級学科試験、実技論述試験の試験問題使用許諾申請の承認をいただきました。
お忙しいところ、早々に手続きを進めてくださった関係者の方にも心から感謝申し上げます。
今後、CVCLAB等での対策講座や事例指導勉強会等で学習ツールとしてしっかりと活用してまいりたいと存じます。
様々な角度から事例指導の実践的な学びをすすめていけるよう、
早速学習プログラム作りに着手し始めました。
さて、今回の記事では、
第13回1級論述問題の事例について概観していきたいと思います。
先日受検された方もご自身の振り返りと共にご一緒に考えていただけたら幸いです。
まず、今年度での対策講座等で実施してきたプログラムのひとつになるのですが、
1、事例を読んでどのような相談者像を描くか(イメージや相談者が置かれている状況等)
2、事例相談者の行動(発言)の意図を確認
3、あなただったら、相談者のどこに焦点を当てどんな見立てをするか
といったところを考えてみることが、
事例を掴む(概念化していく)手がかりになるということをお示ししてきました。
ウォーミングアップのテーマとして様々な事例を活用し個人ワークをしたり、
またグループで考えていただいたりして学習を重ねています。
第13回の1級論述を使い、上記の3点について、
私のひとつの考えとして要点になりそうなところを少し触れてみます。
1、相談者Aさんについて
20年間SEとして勤務、現在主任(プロジェクトリーダーとして6年目)。
部下が3人、協力会社に2人が存在していてプロジェクトをすすめていく上で皆と協力し合って仕事を進めている。
相談者は組織や上長である課長から認められていることが想定される。
奥様が専業主婦、二人の娘がいる環境。
シニア社員へのキャリア相談等が可能な職場環境。
こうしたことが記録から読み取れます。
相談者像を私なりに描いていくと…
予算管理に対して慎重さがある。
(プレッシャーからの強い苦手意識から推測)
顧客とのやりとり、メンバーへの指示や指導は嫌いではない。
(コミュニケーション力がある程度高い)
自ら主体的に率先してパフォーマンスを出す力がある。
(模範的なリーダーシップ、理想にしている等)
品質を重視した顧客目線・品質を認めてもらいたい欲求がある。
(予算管理面よりもより良いものを作ることに執着とプライドがあり一貫した信念を持つスペシャリスト・これを理想にしている)。
責任感が強い、私生活、将来に向けた経済面にも関心を持つ人。
(具体的ではなくとも意識・関心がある)
以上のようなクライエント像が浮かびましたが皆様はいかがでしたか。
相談者を肯定的にイメージすることで、
相談者が訴えていること(相談者視点での問題)が伝わってくる面があります。
次に事例相談者の行動の意図を考えてみましょう。
これを考えておくことで、
事例相談者のキャリアコンサルタントとしての特徴や持ち味、偏りなどが把握でき、
それを基に様々な角度からの事例相談者の行動(対応)の問題点・改善点がみえてくるものです。
事例指導では事例相談者が相談者をどのように見立てているかということを読むことは大事です。
事例相談者は、
相談者の真面目さや責任感の強さ、
現在の仕事への自負から柔軟な思考が持てない状況だと評価。
(考え方に余裕がない)
特定の仕事を過去の負の経験から苦手と思い込む傾向があり、
完璧主義的な真面目さが裏目に出ている。
(予算管理を難しく考えすぎの印象)
誰でも同じ道を通っていることを伝えたり自分自身も予算管理が苦手だったことなどを伝え、相談者に少しでも安心させようとしている。
(励ましと認知の修正を図る狙い)
「そこから逃げたら何が見えるか」「家庭でも予算管理が必要」といった働きかけから自然な形で相談者の適切な考えを引き出したいと考えている。
(ナッジ的な技法)
このように事例相談者がやろうとしていることをフィードバックしてみることは、
事例相談者の学習意欲を向上させていく指導的関わりにも発展することがあります。
そして事例相談者が事例指導を受けたいとするポイントを理解していく作業にもなるのです。
最後に、
あなたなら事例のどこに焦点を当ててどのように見立てるかということを考えてみます。
先ずは相談者個人への視点として、
「より良いものを作る」という相談者が持つこだわりその意思に焦点を当てていく。
予算管理の苦手意識と、より良いものを作るということと、
相談者の中で自分が大切に考えていることと、その苦手なものがどのように関係しているのか、そのエピソードや葛藤等を聴いていくことが大切かもしれません。
相談者が感じているところを言語にしてもらい、その場でどういうところで苦手意識が出るのか、何が苦手なのか、
単に予算管理という作業が苦手だということではないのかもしれません。
本人自身が仕事において納得できていないところ、
過去の経験の積み重ねから回避してきたところを十分に聴き出していくことは支援に必要なことになると感じます。
(自分の納得のいく仕事「顧客満足」と組織から求められることとの板挟み状態。)
つまり仕事の要求への認識が相談者の中で強いストレスになっていると思われます。
あとは、
20年間同じ企業で働き続けてきたことに関する相談者の仕事観やどのような節目を経験しているのか。
過去から現在を語ってもらいながらこれからの希望の働き方、生き方を教えてもらう。
※家族とのあり方や娘たちへの想い等の理解も含まれる。
現在の職場での管理職イメージを言葉にしてもらい、それが過去の経験とどのようにつながりがあるのかを再度確認。
さらに大事なこととして、
相談者が所属している企業組織への視点を考えます。
この会社の再雇用制度がメンター的な効果を生み出すこともありますが、
それが逆効果になることも考えられ
「この手の相談は結構多い」「全員が通ってきた道」「実は私も予算管理が苦手だった」
などと先輩社員が後輩に対して一般化した粗い解釈をしてしまいがちです。
こうしたことが後輩社員と先輩社員の間で常態的に行われているとなれば職場の問題にも発展します。
また、職場よりも大きな影響として捉えられるのは会社組織の方針があるでしょう。
組織にとって有望な中堅社員に対して「そろそろ管理職なる」といった
個々の多様性を置き去りにしたようなキャリアパスやルートが当たり前になっているとすれば、
経営に近い部署(人事や管理職等)へのコンサルテーションや提言等が必要かもしれません。
管理職というワード一つにしても伝え方によってその人なりの受け止め方が異なりますし、
また人によって背景(職業人としてのあり方、家庭環境や家族への思いなど)がそれぞれ異なります。
上司からの一方的な働きかけは部下のやる気を削いでしまうことがあるため慎重さが必要です。
このあたりは事例相談者が社内キャリア形成支援者としてどんなネットワークをもてるとよさそうか、
またそのネットワークを活かして相談者を取り巻く環境へどのような働きかけができるかを考えていくポイントにもなります。
上記の3点を考えてみるだけでも、
今回の論述試験への対応がスマートに考えられる手がかりにもなることがあります。
各設問に関しての具体的な考え等は、
1級面接試験が終了した2月下旬くらいを目処に順次アップしてまりいます。
来年の面接試験受検に向けてもう一踏ん張りですね!!