1級キャリアコンサルティング技能検定の実技(論述・面接)試験では、
キャリアコンサルティング実践能力と指導能力はもちろんのこと、
コーデイネート能力といった側面を測定されると思います。
実践的に最低限必要な要素であることから、
試験においても外すわけにはいかないポイントにもなるでしょう。
コーディネートという言葉に馴染みのないこともあるかもしれません。
キャリア形成支援者への事例指導として考えて大雑把に言い換えてみると、
事例指導者ができることではコーディネートにはなりません。
要するに、
この事例相談者ができそうなことであり、
その結果として事例相談者が今後担当するであろう相談者への支援力向上にもつながりそうなことです。
事例指導者の意向に沿ったことを、
事例相談者に対して指示・強制することが事例指導ではありません。
本来、どんな指導者も、まず対人援助に関わる者の大切な態度として、
《大きいものは上からではなく小さなものがイニシアチブをとれるように側面支援する》
といったことを常に心得ておく必要があります。
「大きいもの」「小さいもの」という表現が適切ではないように感じるかもしれませんが、
意味がわかればそれぞれで言葉を置き換えてもらえればいいと思います。
「強いもの」「弱いもの」でもいいですし、
または「熟達者」「初学者」でもいいと思います。
仮にここで置き換えるのであれば、事例指導の面接中終始、
《CC熟達者は上からではなくCC初学者がイニシアチブをとれるように側面支援する》
ということになるでしょうか。
つまり、できる人が上から教えるとか、
指導者の助言やアドバイスが先行するような関わりではその効果は顕著に薄くなります。
しかし初学者一人では気付けることも気づけない、
確かに一人だけではより適切な打開策を見つけ出すことは困難なもの。
では指導者が指摘すればいいのか。
示唆すればいいのか。
それとなく方向づけていくのか。
これでは事例指導者側の意図したことにもなりかねません。
《学習者がイニシアチブをとる》
この関係性が守られているからこそ、
安全性が高まり、学習者が自らの考えを再編成できるようになります。
事例相談者自身が主体的に自己のセッションを深く振り返る段階に入ることができるようになるのです。
そして、そもそも世の中の全てに言えることかもしれません。
官僚と庶民、親と子、富裕層と貧困層…キリがないですね。
身近な例えでも、
《上司は上からではなく部下がイニシアチブをとれるように側面支援をする》
ということ。
確かに部下だけでは適切な判断がつかないこともあります。
だからこそ、上司が指示していくのではなく、
部下が主体的に判断できるよう、
上司はあれこれ工夫を凝らした側面支援をしていくということです。
事例指導者は、そうした人間力みたいなものを磨き続けていることが、
実践的にみてもとっても重要になると感じています。
これは1級の試験で表現すれば、
「思考行動特性」といったところで測定していきたいスキルになるのだと思います。
お話しがだいぶ外れてしまいました。
今回の記事のテーマですが、
事例相談者が相談者を支援するために必要なネットワークを考えてみます。
1級の論述でいえば過去の選択問題の問3で設定されていました。
今年度から出題形成が変更になるとのことですが、
コーディネート能力をネットワークや環境のところから問うことは、
能力測定として反映しやすい部分だと思います。
引き続き論述では何かしらの形でここは問われるところではないでしょうか。
例えば、ネットワークを検討する際、
どんな事例相談者の事例でも
(スーパーバイザーを見つけて定期的にSVを受ける)
と書いたり、
(〇〇支援に長けた専門関係諸団体、関係者から勉強する機会を得る)
といった解答を書いていることも多いかもしれません。
上記にも記しましたが、
このような解答だと、どんな事例相談者にも当てはまる内容でもあり、
また、それは解答記述しているご本人(受検者)にも当てはまる内容にもなりそうです。
要するに、
全てのキャリアコンサルタントが取るべき行動を解答欄に記述しているだけになりそうですね。
今回の出題形式変更で、
そのようなことにならない設問形式になっていればと願いますが、
なかなか難しいのかもしれません。
何はともあれ、
受検に臨む方には「事例相談者」に焦点化してほしいと思います。
目の前の事例相談者に注意を向け、
この事例相談者が持つCCとしての課題を解決できるネットワーク(関係機関や関係者等)を具体的に示せるようにしたいものです。
複数列挙するのではなく、この事例から事例指導のプランを立てていく上で、
どのあたりを使って何をするのか、まずはピンポイントで示すことができるよう、
事例の個別性を捉えて考えてほしいと思っています。