1級キャリアコンサルティング技能検定の論述試験では、

第1回から第12回までの12年間、事例指導者(受検者)のコーディネート能力の一部の基本的ところを測定されていました。

指導レベルキャリアコンサルタントの能力としてとても重要なポイントになるからです。

 

この点において、出題形式として第1回から第4回までの過去問では、

ネットワークと環境への働きかけは2問に分かれていて別々の設問でしたが、

第5回から第12回までは、毎年同じ形式で一つの問いの中で問われています。

 

実に興味深いのは、

第1回から第5回までの論述の設問は毎年マイナーチェンジされ、

出題する側の諸々の工夫や意図等が顕著に感じられる試験問題でした。

※筆者の個人的な感想です。

 

勿論、試験問題がどのように変化しても、

事例指導の実技試験で問われることや求められることは評価細目等に示されています。

論述試験に出題されることは、事例指導の実技の基本となりますので、

事例指導の面接過程における重要ポイントに焦点化され出題されることは予測できます。

 

例えば、第1回から第4回までの1級論述の設問では、

「この事例相談者が課題を解決するために必要な関係機関や関係者」

をネットワークとして求めてくることもありました。

 

また、

「この事例相談者が相談者の環境をどのように捉えているかを踏まえて相談者支援に必要な支援」

を環境への働きかけとして問う問題もありました。

 

今思えば、当時の設問はとてもわかりやすい内容の問いだったと振り返ります。

 

ただ、多くの1級受検者の方は、

(この設問…何を問われているのか、

何をどこまで答えたらいいのかわからない、わかり難い…)

という苦悩を発する方も多かったのが事実です。

 

だからこそ第1回から第5回まで、毎年のように設問に変化があったのだろうと考えます。

 

実際、実技試験での合格率自体は第3回から第12回まで然程大きく変化していません。

※第1回と第2回は特殊な要因等があり学科と実技の合格率が現在と反転した結果でした。

 

何はともあれ、事例指導者に必要なこのコーディネート能力という要素は、

事例指導者側の独善的な発想で考えていくものではありません。

 

この事例相談者が、相談者を支援するために必要な資源だったり、

また、この事例相談者がケースを通して相談者を取り巻く環境へのアプローチをどのように考えられるとよさそうか、

これらを事例指導者として見立てていく必要があるのです。

 

つまり、

事例指導者がキャリアコンサルタントとして自身が相談者に対してできることを示しても、

せっかく学びに来ている事例相談者が置き去りにされてしまうわけですね。

 

このあたりの考え方は、

実際の事例指導やスーパービジョンを実践していないと自動的には出てこない発想です。

だからこそ、せめて事例指導を受けるとか、または仕事仲間と事例指導を実践するとか、

または、実践のイメージトレーニングを何度も繰り返すことにもなるかもしれません。

 

事例指導のどのポイントを考える時も、

土台になるのは、事例相談者を中心に考えていくことです。

 

これが論述試験の出題形式の変更に対しても、

そして実践に対しても、柔軟に応じることができるための訓練になるのだと考えます。