1級キャリアコンサルティング技能検定試験における実技論述試験でのネットワークについて考えてみたいと思います。
第12回論述事例3【選択問題(需給調整機関分野)】を学習材とし、
問3で問われている内容のひとつを考えてみます。
問3 この事例相談者が相談者を支援するために「必要なネットワークや環境」への働きかけは何か。また、なぜそれが必要であるか根拠を記述せよ。
今回の記事では「ネットワークや環境」と記されている「ネットワーク」に焦点をあて、
この問いを今回と次回の2回に分けて書いてみます。
1級の試験が始まった頃、
第4回までは「ネットワーク」と「環境」は別々の設問でした。
「ネットワーク」「環境」の意味合いやその言葉の異なりには、
共通認識があるものとして問われていたのだと考えます。
ところが当時この問いに混乱している方も少なくないようでした。
※周囲からそのように聞こえてきました。
一例を挙げると、
ネットワークも環境も同じではないのか?
誰にとっての環境を問われているのか?
問われていることがよくわからない
等々…。
第1回から第4回にかけ、この問いの表現等に毎年微妙な工夫がなされ、
質問の変化を経て第5回の試験から、現在の質問内容に落ち着いた感じです。
人によって問われる言葉の捉え方の異なりがあるのは当然かもしれません。
一方で、1級を受検する者として、それぞれが持つ独特な個別解釈を超え、
標準化された共通認識を持てることも指導者として重要なことなのだと感じた次第です。
他者から多くを解説・説明されなくとも、
この場面でこれを問われたらこれだよな…
という具合に、自己責任において察する能力とも言えるのかもしれません。
そしてその自己解釈にズレを発見した場合でも純粋に基礎を見直していくことで、
そうした能力が補完されていくものだと考えます。
※偉そうに記事を書いていますが自戒を込めて文字にしています。
さて、そんなこんなで…
先ずは「ネットワーク」ですが。。。
例えば、
大学院で心理学の学びや諸々の臨床的経験を経てキャリアコンサルタントの資格をもっていたとしても、
社会で仕事として活動するキャリア形成支援は分野や領域を含めてまるで異なり、
まるで通用しないことも多いもの。
そうした学習過程を踏んでいる人ですら現場に出て10年ほどは初心者の段階と言われます。
※初心者、一人前、中堅者、熟達者と各段階へ移行するまでそれぞれ10年ほど必要と言われている。
楠見孝(2012)実践知の獲得 金井壽宏・楠見孝(編)実践知ーエキスパートの知性 有斐閣より
うまくいくこともいかないこともあり、
良質なスーパービジョンなどによって各能力が養われていきますが、
実践を通しながらネットワークの必要性をヒシヒシと味わうわけです。
充実した現場実践を10年以上経験した方は、
ようやく一人前キャリア形成支援者として活躍できることと思います。
勿論、一人前となれる前に、どれだけ充実した期間を経てきたかが重要で、
中でもクライエント支援のためあらゆるネットワークを何度も何度も模索し、
良質なネットワークを構築しようと努力しながら、
より適切な支援のために連携協働を意識することになるでしょう。
途中、ひとりでは何もできない単なる素人であるという自覚と無力感に苛まれることも多いものです。
こうして考えてみると、
この事例相談者には2年の経験から大きな成長チャンスがやってきたわけですね。
例えば
(トランスジェンダーの方の相談は初めてであった)
と事例記録に残しています。
これは事例指導者になにを伝えているのでしょうか。
これまでの2年間、事例相談者が担当した目の前のクライエントが、
トランスジェンダーであったかなかったか、
それはわからないことも多いものです。
支援に携わっていても気づくことができないことは多いものです。
相談者からすれば言えなかった…ということにもなるかもしれません。
そしてこれは世代間のギャップということもあります。
51歳のキャリアコンサルタントと23歳のクライエントでは、
物事の価値観等も全く異なることがあるかもしれません。
特に性的マイノリティーに関する認識については、
時代時代で社会も大きく変化していると言えます。
そうした反省的な振り返りができる機会なのですから、
この事例相談者が今後クライエント支援をしていくにあたり、
どんな経験や場面が体験できれば、
(トランスジェンダーの方の相談は初めてであった)
と振り返る事例相談者のバイアスやその価値観等が活かせるようになるのでしょうか。
そうしたネットワークを構築する必要がありそうですね。
次回は環境について考えてみたいと思います。