キャリアコンサルティングの実践学習をしていく際、
架空ケースの逐語記録を使って見立てや方策などを検討していく学習場面があります。
※2級CC技能検定の論述過去問などを使って勉強する機会もありますよね。
そのとき、
〈記録にある情報だけに集中しなさい〉
と教えている場合があるとお聞きしたことがあります。
例えば、
学習対象者が初学者であるとか、
撹乱的な要因を加味せず、
ある能力水準に絞っただけの場面評価であるとか、
はたまた、
逐語が録画されているものから記録されたようなほぼ正確なものであるとか、
動画等の素材を併用できる等…
何かしらの前提条件等を設定したうえで、
〈記録にある情報だけをみなさい〉
というのであれば、なんとなく理解できそうです。
しかし、
これは実践になかなか役立ちません。
現場では、机上で考えていたことと違うことばかりであり、
そのギャップに苦しむことになるでしょう。
論述の考え方を、
こうした静的なデスクプランで検討したところで実技にはなりません。
つまり、技能検定試験の実技として論述を読みとる際も、
記録にある情報だけをみて考えるのでは面談の質は高まらないのです。
語られたことだけ、書かれていることだけ、
これをみて考えるというのは、
その単語やフレーズにある背景を汲み取る力が発揮され難いことに繋がります。
また、逐語記録の扱いについても実践的に考えると疑問が残ります。
キャリアコンサルタント自身の視線からみた出来事や体験等を通して描かれているものが多いですよね。
相談者への支援を考えていくうえで、
大切なのは、せめてその言葉の背景にありそうな文脈や環境的なものを限られた情報からも膨らませていく必要があると考えます。
勿論、単なる妄想になってしまうと意味がありませんが…。
確かに書いてあることが根拠にもなりますので、
その記録の文脈から書かれていないことを読めるスキルが重要なのです。
そしてこれは特に1級キャリアコンサルティング技能検定試験の論述問題に言えることです。
試験で設定されている事例自体、
『事例相談者が事例指導を受けるためにまとめた事例である』
と解答に際しての注意事項として実践同様の場面設定を表現されています。
事例指導者(受検者)の事例記録の扱いについて、
そのスキルをも問われている側面がありますよね。
この事例指導場面をリアルに想定できることで、
必須問題と選択問題で問われている設問の意味を、
事例指導実践に置き換えて考えていくことができると思うのです。
事例記録に書かれていることだけでは、
各問における解答をアウトプットすることが難しいことに気づくのではないでしょうか。
文字として書かれていることだけに着目するのではなく、
その文脈から書かれていないことを読み取る力を養っていくことが重要だと考えます。