1級キャリアコンサルティング技能検定試験で大きなテーマになる『事例指導』セッション。
その定義は「キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業 報告書」の6ページ目に記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000768592.pdf
この定義は1級キャリアコンサルティング技能検定実技試験に係る記述内容に示されているものなので特段目新しく感じることはないかと思います。
そして必ずしも論述やロールプレイ実践、
口頭試問がここに描かれた定義にそっていなくとも、
1級に合格することがあると考えます。
現場の実践家として大事なことは、
このような定義を実践に則した形で必要に応じ更新・修正していく、
そんな勇気ある専門家がでてくることかもしれません。
※私も現場で前のめりにならないよう程度に緩やかに挑戦しています。
さて、今回の記事テーマについて、
改めて大切なことだと考える内容を文字にしてみます。
キャリアコンサルタント同士で実施する『事例指導』について考えたとき、
誰がなにをどう言おうと、
相談者(クライエント)の幸せにつながればなんでもいいわけですよね。
※とても大雑把で粗い表現ですが…汗
そして相談者の幸せといっても『事例指導』面接の場で、
事例指導者の目の前に相談者がいるわけではありません。
※1級技能検定の実技試験場面で表現しています。
よって、目の前にいる事例相談者(キャリアコンサルタント)の面談実践力や、
ネットワーク構築力、環境への働きかけの力を向上させていくこと、
事例相談者がより適切な面談に向けての学習動機づけができることが、
なにより相談者(クライエント)の幸せにダイレクトに結びつくというわけです。
そんなことは1級を目指す方は誰でもわかっていることかもしれません。
だからこそ、
ここで事例指導者(受検者)がわりと陥りやすいと考えられることがあります。
事例相談者(キャリアコンサルタント)に対して、
うまくいかなかった残念な気持ち等、その感情面ばかりを受け止めていこうとしたり、
事例相談者から(どうしたらよかったのか)という具合に対応方法を求められたからといって、単にそこに焦点化して対応指導をしようとすることがあります。
ざっくり書けば、
前者はカウンセリングアプローチを重点に置いているのでしょうか。
そして後者はコンサルティング機能を展開させたいのでしょうか。
どっちも『事例指導』として成立し難いでしょうし、
また両方取り入れたとしても残念なことになりそうです。
※私の考えです。
実際、このようなことを「ああしよう」「こうしよう」と考えている時点で、
将来出会う、目の前に座る事例相談者のことをわかろうとする営みからずれていきます。
『事例指導』というセッションについて、
相談者が幸せになれるならどんな形でもいい、なんでもいいとはいっても、
専門家同士の中で事例指導の基本を実践できる水準の力は必要です。
事例指導セッションの基本が疎かになっていると、
結果として、
事例相談者を通して、相談者への支援に悪影響が生じることがあります。
事例指導の理解を確認するポイントのひとつに、
『事例指導』は、
事例相談者へ心理支援(カウンセリング等)を提供するわけではないということ、
『事例指導』は、
事例相談者へコンサルティングを提供するわけでもないということです。
1級は論述試験でも面接試験でも『事例指導』についての実技試験です。
事例指導を適切に考えられる力は、
キャリアコンサルティング実践能力が熟練水準以上に高いと評価できる側面があると思います。
事例相談者の専門家としての事例の見立てや手立てを捉えることができること、
事例相談者の専門性をアセスメントできることなどは、
事例指導者の実際のキャリアコンサルティング能力(面談能力)にもつながりがあります。
つまり、2級と1級では試験の目的が異なってくるわけですね。
そうした視点で実技論述試験を認識できることも重要です。
(事例相談者に寄り添う)とか
(事例相談者に助言する)というような綺麗な言葉に振り回されていると、
事例相談者との関係が思うようにいかずに困惑したり、
関係性は良好だと思ったのに、なぜか結果がついてこなくて納得できなかったり…。
そうした目の前のことに注意が向き、視野狭窄になってしまうかもしれません。
『事例指導』は心理支援や対応指導ではないのだということと、
まさに個別の専門家としての事例相談者をわかろうと、
右往左往することに覚悟をもっていることが、
事例指導者としての大事な生き方になるのでは…と考えるのです。
それが表面に終わらない有機的なつながりにも発展するのだと実感しています。
自分自身の参照枠で「わかったような気持ち」になったり、
「例えば私ならこうする」というようなことを、
助言やアドバイスとして勘違いしていると、
事例相談者との発展的で深い右往左往する現象が起きなくなります。
事例指導で有効な支持的機能というものについて、
こういうものだと言葉にできるわけではありませんが、
確かに表現できることとして、
事例相談者に同調したり事例指導者側の経験値に重ねて話をしていくことではないといえます。
事例指導者が何か手柄のようなものをあげようとしていること自体、
事例指導の営みの意味・意義が薄れてしまうことなると考えます。