キャリア形成支援の必要性を知っている専門家同士でも、
その人のそれぞれ背景にあるもの、人間観、経験や価値観等、皆異なっているため、
お互いを尊重し合う姿勢や態度が大切であることを、あらゆる場面において痛感します。
記事を書きながらも、私自身、
なかなかそうした高い倫理観を踏まえて実践しているかと振り返ると、
意外と抜けているところがあると反省しています。
各々での個別性等の違いを補完する…
というか、
それぞれの個別性を超越する普遍的なものが必要であることも、
多くの方が学びを重ねながら実感していると思います。
ある程度標準化された基盤等を専門的な水準として共通認識し、
それをひとつの評価基準にしながらお互いに認め合うところや改善点を見つけたりします。
少し視点を変えますが、
私たちは、クライエントとの面談にしても、
そして仲間との学習の場にしても、
例えば、
目の前の人に対し常に独自に何かしらのアセスメントをしています。
人と交流した際、程度は様々ですが、相手のことを個々で評価していることでしょう。
専門家として目の前の人をアセスメントしていくとき、
普段の人との会話で普通にしている評価とは異なり、
自身の中で意図して冷静に湧き起こるなにかを制御しているところもあります。
今このとき、その場において、
自分の知識や経験、意識を総動員して実践し続けているわけです。
この意識があることは、
実践家として重要なことだと先輩から教えてもらってきました。
それは一般の人同士とは異なるコミュニケーションを展開していることになります。
人と話しをしていての自分の中に湧き起こる気分の変化、感情の動き、情動、
自分の思考行動特性等、自身を全体的にモニターできる必要があります。
これをわかろうとしていないと、
人への専門的なかかわりが中途半端なことになりかねません。
自身の内在する感情や思考、伴う行動自体の善し悪しではなく、
自分のことを
「そういう人間なのだ」
とわかる努力をしていることがいかに大切かということです。
他人のせいにしたり、また自己のせいにすることではありません。
「こういうときに私は相手にこう感じる人なのだ」
と常に自分を見つめることができる、
これは支援者として必要だということです。
仮にクライエントと向き合ったときに、
相性のいい人と出会うと「いい人」と感じる自分、
相性の悪い人と出会うと「気持ち悪い」「嫌な感じ」と感じる自分、
これらは比較的自動で自分の中に湧き起こる現象になると思います。
そこでそうなる自分をわかろうとしていると、
目の前の人(クライエント)が、
周囲から受けている刺激・その影響に重ねてみることもできます。
つまり見立て力が向上するのです。
目の前の人(クライエント)に対して湧き起こる自分自身がもつ感情は、
目の前の人(クライエント)に対して他の人も、
もしかしたら同じ類の感情を抱くのかもしれない…
ということです。
表現を変えると、
自分のフラグの立ち方は、わりと標準的かもしれない。
そして多くの人が、この人に対して同じ感情を抱くのかもしれない…。
ということは、
その人(クライエント)が、
周囲の人から日常的に受けている刺激・影響について、
少しわかることにつながるかも…
ということです。
自分を通して目の前の人の生きづらさや悩みが伝わってくることがあります。
このような仮説を立ててみることは専門家として必要です。
お話しは戻り、
そもそも肝心の専門家自身が自分自身をモニターできていないとすれば、
目の前の人が何を抱えているのか、
その気持ちへのわかり度合いが浅くなることが考えられます。
さらに、これは事例指導の場面での事例指導者側に必要な力となります。
1級キャリアコンサルティング技能検定の実技(論述・面接)試験などの対策においても、
こうした訓練について、素直かつ真剣に考えられる人ほど、
自身を見つめる力、そしてしなやかな思考と対応と吸収力が養われていくと感じます。
1級の合格方法に注意が向き過ぎてしまうと、
こうした大事な実技能力を乏しくさせてしまうことがあるから気をつけたいと思います。
こんなにやっているのに…
と疑問を抱くことがあるかもしれません。
もし何かの問題を外在化している段階にある場合は、
自分自身の理解がまだ弱いのかもしれません。
※人それぞれだと思いますが…ひとつの考えかたです。
他にぶつけている状態では、
自己の伸びしろがあるのかもしれないのに、
そこになかなか目を向けられないことになります。
そしてこれは自身をモニターできないうちは難しいことなのだと感じます。
もしセルフモニタリングが自分で弱いと感じられるのであれば、
先ず、自身をモニターできるような訓練に時間を費やすことが優先かもしれません。
自己評価を可能な限り適切におこなえる力を育むことは、
他者を支援していくうえで必須となることです。
それはキャリア形成支援でも事例指導でもスーパービジョンでも同じです。
学びには、自身がひらかれていて、しなやかに楽しく真に振る舞うことができ、
心身ともに健康で健全なパワーが備わっていることが必要です。
少なくともCVCLABの講座では、
基礎プログラムで、こうしたところを皆様と見つめていくことができたらと考えています。