質問はその人との関係性を深めることがあり、

また、関係性を壊すこともあります。

 

一例ですが、

下記のような質問を投げかけられたとしましょう。

 

《〇〇さんはこのプロジェクトにどんなビジョンを持ってるの?》

 

普段の会話の中で何気にありそうな問いかけです。

 

しかしこの問いを受けた側にとっては、

試されているような感覚を覚えることがあるかもしれません。

 

「ちゃんと答えないといけない…」

といったプレッシャーを感じる人もいます。

 

「この人失礼だな…」

と嫌悪感を示す人もいます。

 

質問というのは、

相手の実力や能力、その価値等をジャッジしようとしていたり、

隙あらば突こうとするようなものもありますよね。

受け取る側のその時々の状態等によってもその受け取り方が異なります。

人の質問行動は勘違いされやすいことがあるとつくづく思います。

 

何気ない質問がネガティブに働くことで二人の関係に鈍い音がすることがあります。

 

1級キャリアコンサルティング技能検定試験のロールプレイ等でも、

事例指導者(受検者)の質問が事例相談者との関係性に悪影響を及ぼすこともあります。

 

少し角度を変えたケースをもう一つ紹介します。

 

《このセミナー、確か定員20名でしたね。参加者8名。ふーん、なるほど…》

 

ある場面でこのような発言をする方にお会いしたことがあります。

 

この発言者は大して深くは考えていない、

または独り言のようなつもり言ったのかもしれません。

はたまたちょいと嫌味くらいのつもりかもしれません。

 

考えてみたいのは、

この言葉を受けた側、主催している側は、

これに何かしら答えなければならなくなり、

つまり、質問されたように受け取ります。

 

同じ場にいる他の受講者、そして講師、主催者、

様々な立場にいる方がその瞬間にその言葉の意味をどのように受け止めているのか、

それを発した人はどんな風に考えているのでしょう。

 

人間の心模様が伝わってくるようです。

 

言葉を受け取る側(聞く側)にとって、

同じ言葉に対し意味が異なる場合が多々あります。

 

それは当然のことかもしれませんし、

だからこそあちこちでズレていきます。

 

キャリア形成支援をするひと、

つまりキャリアコンサルタントは、

個々の言葉の受け取り方、意味の異なり、

他者が持つその個別の意味を理解することができる能力が必要です。

 

これができない状態にある場合、

今、自分は他者のキャリア形成支援に関わることができない状態だと、

セルフモニターして自己の活動を制御する必要があると思います。

 

1級キャリアコンサルティング技能検定試験のロールプレイなどの振り返りにおいても、

事例指導者(受検者)が持つ体験談、

その価値観や意味合いで表現する場合もあります。

 

事例指導者(受検者)にも個々に培ってきた経験等が異なるわけですから、

お互いに相当な違いがあるでしょう。

どこか似たところがあったとしても、

言葉の意味、経験の意味、価値観が異なります。

 

そして事例相談者の行動にも、

その意味には大なり小なり必ず異なりがあるのです。

その意味について、

同じ言葉で会話をしているだけでは共有したことには至りません。

 

同じ言葉を使っていたとしても、その意味が異なっていると、

意見のぶつけ合いみたいな現象を引き起こすだけで双方にとって辛いです。

 

(全然わからん!わけわからん!!)

となるわけですね。

 

その人にとってのその行動の意味はなんであるのか、

その言葉の意味はなんなのか、

その発言や態度に背景にどんな価値観が備わっているのか、

 

それらを理解していくことが単なる会話に終わらせない営みです。

 

単に会話レベルに留まって

《何が問題だったのか》

といったテーマを続ければ続けるほど実にネガティブで真意がなく、

関係性がドロドロしていくことがあります。

 

話しをしていて何か少しでもズレているな、

お互いにすれ違っていくな、

こう感じたならば、そのままロールプレイを続けても意味がありません。

事例指導者(受検者)側から潔く受け入れ転換することが大事です。

 

ズレやすれ違いがあるからこそ、

そこで事例相談者を理解しなおしていくための最大の機会になるのだ…

ということを知っていることが必要だと考えます。

 

事例指導者のアドバイスによって

《こんな風に対応すればよかったのか!!》

と事例相談者が思うことが事例指導ではありません。

 

そうしたアドバイスや助言を効果的に展開したいがために、

事例相談者との関係性を構築しようとしたり、

問題の把握をしたりと、それらしき過程を踏もうと意識しているのだとすれば、

それはつまり操作的になります。

 

それでは事例相談者が持つ個別の行動の意味や価値観を理解できません。

 

いい悪い抜きでの、事例相談者の行動の意味を把握し、

そのうえで、事例相談者が担当した相談者の行動の意味と照らし合わせてみることが、

事例相談者自身による多角的、多面的に事例を振り返る一歩になるのかもしれませんね。

 

「質問が人を試している」

今回の表題、普段のあらゆる場面で意識でき、

そして訓練の機会を創ることができるものだと思います。

 

その人の言葉の意味に何があり、またそれはどんな背景がありそうか、

そうした価値観みたいなものを理解することを意識できると、

自身の新たな発見にもつながりとても面白いです。