先月から第12回1級キャリアコンサルティング技能検定試験の論述問題(事例1〜事例3)までを使ってひとつの考えで記事を書いてきました。
事例4は次回取り上げていきます。
今回はこのブログ記事で大切に考えている要点について少し触れてみたいと思います。
事例指導とかスーパービジョンのあり方を考えてみるとき、
学び仲間同士等でグループワークや意見交換を行うと、
いつの間にかケース(事例)提供者の不出来なところや悪いところを示す場が増えていることがあります。
※ダメなところをもったいないところ等と言い換えてるだけで、
考えていることは大して変わらない…なんてこともあります。
事例相談者の不出来な点を《抱えている問題》として本人へ自覚させようと、
自分が指導者として如何に論理的な表現ができるか…
そうした考えで語彙力を養おうとすることもあるようです。
ロジカルとかクリティカルといったように、
一種の流行り響き的な理詰め思考やフレーム等に執着していることもあります。
いくら知識や技法を身につけたところでひとは癒せない。
これは石﨑先生が話してくれた言葉です。
この仕事は曖昧さが大切であり、
また前提がないことや矛盾だらけのことが溢れる中で、
その時その時でのしなやかな発想と認識が重要です。
何かしらのパターンによせていこうとすること自体、
相当な無茶があるような気もします。
この試験も同じかと思います。
特に、対策などに取り組むとき、
体系的に筋道を立てて整理したくなる気持ちが強く働いている方もおられるでしょう。
実際この検定試験では、
かえってそれが阻害要因になったりするかもしれません。
問題とよいとされる評価は緊密な関係であると真から考えられていることが必要です。
問題と評価は表裏一体であるとも表現できます。
事例指導者が事例相談者に対し何かの問題に気づかせようとする試み自体、
事例指導の面接目的(事例相談者が事例指導に期待している何か)からズレてしまうことがあるのです。
いくら事例相談者が「何が悪かったのか」と発言したとしても、
事例指導者の中では(全てよかったと評価している人)として捉えられる必要があります。
だからこそ、よかったと評価していることは何か、よき評価をどのように共有できそうか、
この視点が一番重要になると思うのです。
『問題は何か』
『問題をどのように共有したか』
と試験官から聞かれるのだから、
事例相談者の問題を事例指導者が明確に示す必要があるのでは??
と受検者の方からよく言われます。
事例指導のロールプレイや論述試験中、
ずっとそんなところばかり注意して事例相談者を見ていたら、
どんな面接になるか、その思考で文字を記述するのか、
アウトプットの想像がつきます。
実に重々しい時間になりそうです。
むしろ私はその逆だと考えています。
これが多角的にみるということのひとつなのでしょう。
問題は事例相談者の表面だけではなく内側・中側にもあります。
つまり事例相談者が何かしらちょっぴりでも解決したいことが何かあるでしょう。
しかし解決したくても、その何かがわからない。これが内側に潜んでいます。
そもそも本質的な問題がなんであるのかわからなければ解決しようがありませんよね。
では、
事例指導者が事例相談者の内側にあるその本質的な問題を言い当てていくのでしょうか。
仮に、事例指導者の体験等から(こういう問題じゃないの?)と考えたとしても、
事例相談者の体験や認識、捉え方が外的にも内的にも相当に異なるでしょう。
事例指導者がひたすらそれを言い当てようとしたところで、
それはネガティブな時間しか生まれませんし、
とどのつまり問題の解決策ばかりが先行し羅列されるだけになりそうです。
そこで、このブログ記事で大切にしていることとして、
問題が単体でそこにポツンとあるわけではなく、
よい評価点があるからこそ問題も存在するということを常に認識しておくことが必要だというメッセージを発しています。
事例指導者が問題だと思うことを並べても、それは何の価値も生まれないと思うのです。
よい自己評価には、
その人(CC)にとっての内側にある真のニーズやウォンツが含まれています。
その必要なものや求めているものを自己の力で掘り下げ客観視することができると、
自分で抱えている問題を課題に展開させていくことができることがあるのです。
こうした丁寧なステップをいったりきたりしながら事例相談者の力で自分の問題を認識し、
事例相談者自身がどうしたいのかを自問自答することができるモードになれば、
事例指導者のかかわり(問いかけ等)は完全に黒子になっていきます。
だからこそ問題は何か、問題をどう共有したのか、
事例相談者が全て自ら見つけられたかのように、
ある意味錯覚に陥ることができるようになります。
なんだか大袈裟かもしれませんが、
この瞬間というのは、まさに魔法にでもかかったかのような感覚なのです。
事例相談者はこうしてキャリアコンサルタントである自分に対し、
さらなる自信を持てるようになるのでしょう。