事例指導を考えていくにあたり、
事例相談者がキャリア形成支援者としてどんなことに迷っていたり、なにを考えているのか、
もし何か悩んでいることがあるのであればどんなことなのか、
事例相談者の立場で理解してみようと試みることが先ず大事だと思います。
それもひとつの事例相談者が抱えている問題として考えられます。
また事例指導では、事例指導者視点も大切ですが、
事例相談者視点も同様に(いや…それ以上に)大切です。
《抱えている問題は何か、あなたの考えを記述せよ》
と問われ、
あなた(受検者)視点だけを《あなたの考え》として示すより、
上記に記した通り、実際の事例指導をイメージして実技として表現できる方がはるかに実践的であると私は考えます。
つまり《あなたの考え》をこのように解釈して考えてみることもできるのです。
ここで取り上げられている事例指導は、
事例相談者と事例指導者の2人で行う面接なのですから、
相互の視点を《あなたの考え》として示すことは自然ではないかと思うのです。
第12回1級キャリアコンサルティング技能検定論述選択問題事例3(需給調整機関分野)を活用して、
問1で問われている質問を考えてみましょう。
問1 この事例相談者が抱えている問題は何か、あなたの考えを記述せよ。
シンプルで意味深な問いの設定ですよね。
例年、解答用紙もあまり変わらずこの問いの欄は4行。
事例相談者視点で2行、事例指導者視点で2行という割合で記述した方もいらっしゃるでしょうし、
1行、3行にしている方もいらっしゃるかもしれません。
勿論、1.5行と2.5行もありだろうし、
事例指導者視点だけで4行ということもあります。
事例相談者視点のみを4行書くという人は皆無でしょうか。
(行数なんかどうでもいいよ…)
とおっしゃる人もいらっしゃるかもしれません。
しかしどうでもいいのであれば、
解答用紙に罫線を引いたり枠をわざわざつけたりしなくてもよさそうなものですが…。
※枠というのは以前はなかったのです。
《枠外は採点しませんよ…》
といったルールまで設けているのですから、
どうでもいいわけでもなさそうです。
論述は、
ものすごく小さな字で書く人もいて、
反対にワイルド且つ大きな字で書く人もいます。
結果どちらでも合格している人はいますよね。
方法論等に偏った情報に左右されず、
実践的な基本をおさえているからだと思います。
CCあるある視点の原則みたいなものにとらわれてあれこれ沢山の視点を記述したところで、
事例指導の実践として成り立ちませんので、
そこら辺は事例指導の実際をイメージできるようにトレーニングを重ねていくことが大事だと思います。
さて、この事例相談者は、
(Cさんのこれまでの努力や不安をまずはしっかりと受け止めたいと思った。)
と【所感】に記述しています。
だからこそ
(話しづらいことも話してもらえて…前向きな言葉もあり関係構築はできたと思ったが…)
とつながるのでしょう。
ところが次の面談に相談者が現れなかったということです。
(トランスジェンダーの方の相談は初めてであった)
ということに原因を帰属させている面も多少ありそうな表現です。
この事例相談者はキャリアコンサルタントとして
(面談の開始から最後まで寄り添い傾聴することに努めた。)
という表現をしています。
自己の専門家としての努力を認めてほしい感覚も持っているのかもしれません。
相談者が現れなかったことに、
思い描いていた自分の面談が無力化し、
(関係構築はできた)という大切にしてきた支援の要、その自己評価が総崩れしてしまった状態にありそうです。
(何か問題があったのかもしれない)
と自己の面談を振り返り何か問題をみつけようとしていることが、
この事例相談者の成長チャンスなわけです。
そして今は自分で問題がみえていない。
だからこそ、
自分の面談に何かわだかまりを感じているのではないでしょうか。
このような感覚もこの事例相談者が抱えている問題になるかと思います。
そして事例指導者から事例相談者のそうしたモヤモヤを大切にみていくと、
どうもこの事例相談者は、
相談者が正社員になることを目標にしたかかわりになっているところが見受けられます。
(しっかりと受け止めたいと思った)
(面談の開始から最後まで寄り添い傾聴することに努めた)
とあるのですが、
相談者がそのように感じていたのかは疑問が残ります。
(正社員の話は確かにもったいない)
(正社員になるにあたりハードル)
(私も早く返事をした方がいいと思う)
(そんなことはないですよ)
と事例相談者から表現していることなどから、
事例相談者と相談者の関係になにかが起こっているように考えることもできそうです。
これがこの事例相談者の言う
(関係構築はできたと思ったが)
というところのカギになるかもしれません。
こんな風に事例相談者が気にしているところにしっかりとくっついていくことも事例指導の基本かもしれません。