昨日に続き、
第12回1級キャリアコンサルティング技能検定試験論述選択問題の事例2を活用して事例指導の実際を考えてみます。
今回は問2にあたる事例指導の目標設定とその方策について考えられることを検討します。
問2 この事例相談者が抱えている問題に対して優先して取り組むべき目標は何か。また、その目標を達成するために、効果的な支援を行う方法や内容について具体的に記述せよ。
私はこの問いを考えるとき大事にしていることがあります。
それは事例相談者が特に気にしている点に関連するところを大事にして指導方策を考えることです。
決して事例指導者が気になるところを中心に取り上げるわけではありません。
ともすれば、
事例指導者(受検者)が問1で事例相談者の問題をあれこれと書き出している思考モードで問2に突入するため、
事例指導者があたかも正しい答えを知っているかのような振る舞いで文字にする場合があります。
事例指導者のいうことが必ずしも正しいというわけでもないと思うのですが…。
実際の事例指導において事例相談者の力を信じてほしいところです。
今回の事例相談者への目標(成長プランの優先課題等)としては、
例えば、
『相談者が自己開示した内容を来談目的と結び付けられるかかわりを持つ』
『相談者の心情を受け止めながら相談者が体験しているその感覚を掴むこと』
というような設定ができるかもしれません。
※あくまで私が実践で事例指導を行うイメージで言葉の選んでいます。
事例相談者とすれば、相談者に対し、
目の前の状況等に惑わされずもう少し慎重になって考えてほしい
自分を過小評価せずこれまでやってきたことの意味づけ・価値づけをしてほしい
こんな風に考えていることが伝わってきます。
だからこそ事例相談者のいう『職務の棚卸し』なのかもしれません。
事例相談者が書いているように、
(自分では何がいけなかったのかわからない)
とあるのは自分のやったことは間違っていないと思うという意味合いが込められていることもあります。
その状態の事例相談者に対して、事例指導者が、
《あなたの価値観で(起業はリスクも高い)等と言えば関係性は壊れます》
というような指摘や指導をしたところで、
それこそ事例指導者の価値観や枠組みでものを言っていることにもなります。
陳腐な指導論議を受けたところで、
事例相談者からすれば納得しないことが多い。
こうしたことはロールプレイ(面接試験等)にも出やすいので注意が必要です。
事例相談者ができていると自分で思えているところから広げていく方が、
事例指導として効果的な支援を行う方法や内容につながることも多いのです。
(状況を十分に把握して悩む気持ちに寄り添う)
(かなり自己開示はしていただけたと思う)
事例指導者にはこのような自己評価を大切にしてほしいと思うのです。
事例指導者が真にそうした思いを持って接していれば、
(今後のために指導を受けたい)
という事例相談者が抱く不安みたいなものがいくらか和らぎ、
さらに思考が広がり、自分の中で多面的な視点が得られるようになるのです。
事例指導者が事例相談者のことを受け入れている場合、
「ちょっとお伝えするのは恥ずかしいのですが…」
という相談者の言葉を記録に残しているところなどを大切にできるでしょう。
事例相談者の問いかけが効果的だったからこそ、
相談者も言葉にできた瞬間なのかもしれません。
こうしたところで、
伝えることが恥ずかしい相談者の気持ちを、
その場で事例相談者も一緒に味わうことが必要かもしれません。
その意味を来談目的と結び付けられることも意味があるかもしれません。
ちょっとしたところです。
この事例相談者であればそうした面談が展開できそうですね。