第12回1級キャリアコンサルティング技能検定論述必問題の問2について記事を書いてみます。
ひとつの考えとして読んでいただけたら幸いです。
前回と前々回でも記事にいたしましたが、問題は何かと問われ、
その現象に留まったことに終始し考えることは大事なものが足りていないようにも思います。
この事例をまとめた事例相談者に注意が向けられていないことになりそうです。
キャリアコンサルティングの基本フレームの要素に置き換えて出来・不出来をチェックするような画一的な方法で考えるだけでは、
1級試験で安定した結果が得られないかもしれません。
それは実践でも同じことがいえます。
キャリアコンサルティングの過程やフレーム等は、
学びのひとつの手がかりとして事例相談者もわかっていることも多いでしょう。
事例指導者が、わざわざそのフレームに当てはめようとしても、
事例相談者からしてみれば自分の事例を当てはめるように扱われるのが不本意かもしれません。
事例指導者が、
例えば、スーパービジョンの講座など、
より見識が高いものを学習したという認識や意識を持っているとします。
専門的に学んだ知識をそのまま実際の1級の実技に置き換えて考えても、
かえってそれが阻害要因になることもあるので注意が必要ですね。
つまり原則に沿った初学的、基礎的なものに当てはめたり、
応用学的、顕学な知識をもって説き伏せてみたところで、
それらがいくら正しいとしても、事例相談者の成長には意味がないこともあります。
それよりも技能として重要なことがあると思います。
それには人間観、人間性やセンス等があり、
知識や技法等、それら以上に影響を受けるようにも思います。
そしてそれはいつでも誰でも本人にその気があれば常に磨くことができると信じています。
世の中、肩書き等に影響を与えること、受けること、思い込むこと等が極めて多く、
改めて人間同士の関係性の脆弱さを考えることがあります。
私事ですが、
肩書きとか優越感、コンプレックス、劣等感等の複数テーマを交え、
キャリア形成支援者への指導育成のあり方について卒業研究をする準備をしています。
※2年間ほどかけて研究に取り組む準備をしています。
結局「そのひと」に目を向けることが重要だと思うし、好きです。
組織といった実態のないものにこだわるよりは面白いと思っています。
そもそも若い頃から組織に所属しながらも、
組織自体にはあまり関心が向かないのが自分自身で面白いところだと思っています。
※関心がなくとも勉強自体は好きなので積極的にしていますが…苦笑
「そのひと」への支援、
そのひとの「キャリア」という人生そのものに焦点化した支援をする専門家として生きると決めてここまでやってきてますし、
これからもきっとそうなのだろうと自分の中で想像しています。
それは時代の流行りとか流れとかそういうことではないと考えます。
なんだかお話しがだいぶそれてしまいました。
本題に戻ります。
必須問題の各問ですが今回も例年と同じ問いの内容でした。
問2は、
この事例相談者の相談者Aへの対応について、どのような問題があるか、あなたの考えを記述せよ。
この問いになります。
これを考えるときも、
相談者の自己理解不足を解消する働きかけができていないとか、
仕事理解不足、環境理解不足、役割不足をサポートしていないだとか、
中長期計画不足に気づかせていないだとか、
その他諸々…
上記のようにキャリアコンサルタントの初学養成講座のようなパターン化した視点で論述の事例をつかもうとしても、
この事例をまとめた事例相談者自身をみていないことにもなりそうです。
毎年、複数の方から論述試験の解答再現をいただくことがあるのですが、
上記の傾向が薄まりつつ、まだ根強く含みを感じます。
フレームワークの善し悪しを書いているわけではありません。
事例指導者として事例相談者の事例をつかむうえで、
双方の考えを整理していくひとつのツールとしてフレームワークが活用できることもあります。
そして実技として考えると、
目の前の事例相談者をリアルに感じ取る過程が活かされていかないため思考が紋切型になってしまいます。
論述もライブ感をもって考えてみたいところです。
事例1の事例記録には相談者Aが
「今は家族との過ごし方にも変化が出てきました。末っ子の送り迎えなどができるようになったし、夕食も家族で一緒に過ごせるようになりました。」
と発言しているようです。
この事例相談者のかかわりによって、
部長職である相談者Aが新しい経験に対してオープンになっているところがあると思います。
もう少しその事柄を深めて理解していく対応をもちたいところかもしれません。
そして、
「常に仕事をしている感じなんです。このペースが続くのはしんどいと思っています。」
と後に出てくる「八方塞がり」につながることを話しています。
管理職である相談者Aが仕事面で弱音を伝えることができるのも、
相談者にとってこの面談が特別な時間になっているということが窺えます。
こうした場面作りができることは、
キャリア形成支援に携わるものとしてとても大切なことなのだとつくづく考えます。
「八方塞がりになっています。」
と発する相談者Aが経験している世界には何があるのか。
事例相談者がとらえている相談者Aの世界では、
(現状の中で家族との時間を確保しつつ、今の会社は辞めずに続けていきたいと思っているのですね。)
と記録から伝わってきます。
そして
(でも独立された方が時間は有効に使えるし、一人で仕事が出来る方が自由ですよね。)
と事例相談者の枠組みで意見を伝えているようです。
「現在の給与水準を維持し家族を養うためにも、直ぐに会社を辞めるという気持ちはありません。」
という気持ちを明確に示している相談者Aに対し、
キャリアコンサルタント側の考えが先行した意見をぶつけたところで、
その時の相談者との関係性や、相談者のその時の状態、思考の段階次第では、
コミュニケーションが噛み合わないことにもなり得るのではないかと思います。
これだと対話が醸成していく場面にはなり難いこともあるように考えます。
昨日の記事にも記したのですが、
事例相談者は
(相談者Aの家族との時間も大切にしたいという思いは聞けたと思っている)
ということですので、
相談者Aにとっての「家族との時間」という意味合いを、
より深めていくような対応ができると家族との時間というものが、
相談者Aにとって時間枠を超越した生活の質という面での気づきや視野が広がったり、
家族との生活のあり方が質的な向上を目指せるものになることで、
仕事の量や時間等だけにとらわれない働き方の質という側面にも気づきが生まれるかもしれません。
相談者Aがそうした自身のありたい姿をイメージできるようになれば、
改めて組織や上司、同僚や部下、周囲への働きかけ、
家族をも巻き込んだ考え方が生まれてくるようにも考えます。
まさにワーク・ファミリー・エンリッチメントの効果から相談者Aがより善き幸せをイメージできるようになるかもしれません。
以上のような視点からみると、
相談者Aが話す内容についてキャリアコンサルタントとして、
この事例相談者は相談者Aに起きているあれこれの諸事情・事柄をどうにかしようと考えてしまっているのかもしれません。
先ずは、
相談者Aがみている世界を理解していくスタンスがもう少し必要になるでしょうし、
そもそも相談者Aがどうなると幸せなのか、
そのためには何を改善したい、解決したいと考えられるのか。
これが何もわかっていない状態にありそうです。
「どのような働き方をしたらよいか迷っている」
といった原点に相談者A自身がシンプルに戻れるようにガイドする対応ができると、
相談者A自身も改めて自分が何を問題としているのかがわかるかもしれません。
次回は、昨日と今日の記事を併せて問3を考えてみたいと思います。