1級キャリアコンサルティング技能検定の面接対策講座の中で事例指導のロールプレイを観察していると、事例指導者(受検者)側の
《ここでは〇〇すべき》
といった思い込んだ考えや意見が全面に出ることがあります。
場合によってこれは事例相談者の学びを邪魔していることにもなることがあるから注意したいところです。
事例指導者の専門家としての正当性や正義感、
使命感等からそうした反応が出てくるのかもしれません。
それが指導者の中で「絶対に守らないければならないルール」的なものになってしまっていることもあるのです。
思い通りにならないと心も休まらない。
世の中、想定外のことばかりです。
人との対話も考えている通りにはなりません。
予測通りにいかない場合の方が多いかと思います。
※予測していること自体が対話を深められない要因になっていることも多いです。
だからこそ興味深いのだと考えてみることもできます。
常に自分とは異なる考えを尊重できたりする柔軟な考え方ができないと、
相手を傷つけてしまうことにもなり、
そして自分自身も苦しみ自己嫌悪に陥ることにもなります。
例えば、
事例指導者側の意見が多くのひとからみて相応に適切だったとします。
一方、事例相談者にとっては、
それがまるで違う感覚で捉えていたりすることもあり、
そして考えることも全く異なる場合があります。
このようなとき、
事例指導者が正しいと思うことを事例相談者に対して「気づかせたい」と考えたところで、
極短時間の中で話しが発展することは困難でしょう。
お互いに押し問答になって、
事例相談者からすれば「二度と事例指導には行きたくない…」
という状態になることもあります。
結局のところ、
事例指導者が自分の考えや提案について相手に合意を得たいだけのかかわりになっていることもあります。
事例指導者側の考えや意見、提案自体が、
事例相談者の自由な発想を奪っていることになる場合があります。
時々
《小林さん、では私(受検者)の見立てや考え方はどこにいくのでしょうか?》
といったご質問をいただくことがあります。
確かに事例指導者だって事例相談者からケースの報告を受けながら、
いろんなところにフラグが立ち、
わからないことや気づくこと、気になること等がありますね。
そしてその確認をしながら事例指導者視点で何かを見立てていこうとする。
対話を重ねつつ、いくつかの指導ポイントが整理されていくことでしょう。
しかし、事例指導者のその気づき等を、
事例相談者へ気づかせることが大事なのでしょうか。
それでは事例指導の起点が違うように思います。
一人ひとり指導の出発点は異なりますし、
方法論ばかりに目がいく事例指導者では、事例相談者が成長できないと考えます。
事例指導者は事例相談者の話しを聞きながらも、
キャリア形成支援者である事例相談者の固有の人間性や専門性を理解しつつ、
事例相談者が何を解決したいのか、どこら辺をスッキリさせていきたいのか、
何をクリアにしたいのか…等々、
目の前の事例相談者が特に気にしているポイント、
まさに、そこにつながる事例指導者の視点を示すことに意味があるようにも思います。
事例相談者自身が気にしているところに合っていないことを事例指導者視点で示されても、
それはなかなか受け入れられないこともあるのです。
終始、事例相談者のここでの感じ方や考え方の動きを大切にしたいです。
なにがなんでも事例指導者の視点に気づかせようとすることが必要…
と「べき思考」になっていること自体、要注意だと思います。
ロールプレイ面接の前半で形式的に事例相談者を尊重したり承認したようにしていても、
事例指導者が自分の意見を受け入れてもらうための関係構築的な準備戦略だったとすれば、
それは裏切りのような行為でもあるように感じることがあります。
後半になっていくと徐々に雲行きが怪しくなる感じのロールプレイ面接。
事例指導者が描いている道に乗せようとするイメージではお互いに苦しい時間になります。
事例相談者への適切な肯定的フィードバックを真に考え、
言葉にすることができる訓練をすることが事例指導に役立つことがあります。
肯定的フィードバックが目の前の専門家としての事例相談者の芯を食うからこそ、
事例相談者自身が適切な振り返りをできるようになり、
建設的に改善点を見出すことにつながるのだと実感します。
事例指導の面接は、
事例相談者の不出来な面を指摘し説得したり、
指導者からみた本人の問題を探ることが目的ではありません。
試験だからといって、
事例相談者の面談の問題を見つけ、そこに合意を得て、
解決のための目標設定をすることが目的になってしまうと、
練習自体が、面接の流れをそこに持っていくための方法的な模索になってしまいそうです。
それではキャリアコンサルタントの育成にはつながらないのではと考えます。