キャリアコンサルティングを実施していると実に多様なお話しをお聴きします。
クライエントが自ら相談に訪れるとき、また逆の場合でも、
クライエントとの交流時間を通じ、
想定できない様々な展開が面談の中で繰り広げられていきます。
かけがえの無い特別な時間です。
キャリアコンサルティングという支援が心理支援であるという認識を改めて考えることがあります。
キャリアコンサルタントには、
もしかすると心理支援という言葉を使いたがらない人もいるかもしれません。
そしてクライエントにもそのような心理が働くこともあるようです。
またキャリアコンサルタントが
「コンサルタント」
というワードを過剰に意識していることもありそうです。
キャリアカウンセラーとキャリアコンサルタントの名称の異なりを、
それなりに意味づけていこうとする人もいらっしゃいます。
職業能力開発促進法の定義では、
《この法律において「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいう。》
と示されています。
キャリアコンサルタントとはキャリアコンサルティングを行う人のことを指しますが、
人によっては、
キャリアコンサルティングを偏った解釈で認識してしまうこともあるかもしれません。
職業の選択も職業生活設計も、そして職業能力の開発等も含め、
「職業」と表現された意味合いは、別に仕事をすることだけではありません。
そして、そもそも職業という意味合いをどのように考えているのかは、
相談をするクライエント側にもあります。
職業の定義や認識、その意味合いは大なり小なり人によって様々なのです。
だからこそ、クライエントを理解しようとする工夫等が必要になります。
単にコンサルティングらしきことをすればいいわけではありません。
一番に重要なのが、
先ず目の前のクライエントとの面談において、
カウンセリングアプローチを安定して実践提供できるか否かということが、
組織への介入等にでも両立支援においてでも大切なことでしょう。
こうしたことから心理支援力の向上のために、
心理学を幅広く学ぶ必要性が絶対的にあることが理解できます。
クライエントの心理的状態が整っていないにも関わらず、
良かれと思い前に進ませようと行動を促す関わりに偏り、助言や指導を行っているケース。
意外に多くあると思います。
キャリアコンサルティングでは、
共通の目標として、
先ずクライエントが自立できることが挙げられるでしょう。
キャリアコンサルティングは側面的支援が大事です。
これは例えば経営コンサルタントの役割とはまるで異なります。
側面的な関わりが適切に提供されることで、
クライエント固有の人間性や力を発揮できることにつながります。
クライエントが自分の中に頼れる自分を育てられるようになり、
自分でできるようになっていくこと。
先ずこれが大事な共通目標になるのだと思います。
クライエントが特段支援を受けているような感覚や認識を持たぬまま、
自身の中から建設的な思いや考えがわき出し、
今これからの自分にとっての最良となる幸せな道を選択したくなる…
極自然に自分の力で課題を乗り越えていこうと、
何かしらの行動を起こそうと、自分の意思を持てるということです。
面談という特別な時間の中で、
そのようにクライエントが成長していく姿を目指し、
クライエントの側面でクライエントの自立を阻むものを把握し、
何が役立つのかを面談過程の中で常に検討し続け、
幾度も見立てを更新していくプロセスが必要です。
心理支援であることを理解できていないとこれがなかなか難しいのではないかと感じます。
面談の訓練の場で見かけるシーンなのですが、
目の前の人の不出来な側面に注意が向くキャリアコンサルタントは、
その人のパフォーマンスを過小評価してしまっている傾向があるようです。
面談場面というのは、
キャリアコンサルタントにとっては自身のフィールドかもしれませんが、
相談する側にとっては異なります。
クライエントからしてみれば、例えば緊張や不安、抵抗、違和、防衛等、
普段のリラックス状態ではないことが分かります。
そうした面談の場で語られた職業人生のほんの一部のお話しを受け、
何かがわかったように振る舞い、
キャリアコンサルタント側が負の見立てを最大化してしまうことはよくないことです。
実際、
面談時間でクライエント自身が発揮できる力というものは最小限であることも多い。
その最小の部分を鵜呑みにしてしまうと適切な支援には届かない。
キャリアコンサルタントがワンステップ上に立ってしまっていて、
クライエントの実力を無意識に最小化し、
自身の見立てを高めて信じてしまっているケースがあるとします。
それが原因でキャリアコンサルタントとしての解釈が
《ここまでしかできない》
というジャッジになることがあります。
《ここまでできている》
という視点からその人らしさを大切にした面談ができると、
クライエントが自分らしさを発揮しやすくなるのではないかと考えるのです。
最後に、ここに書いた記事は、
事例指導の実践に置き換えることができると思いメッセージしているつもりです。
事例相談者のキャリア形成支援力を低く見積もることがあってはならないと感じます。
これは事例指導者の心得のひとつにもなると考えます。