1級キャリアコンサルティング技能検定試験の論述問題について、

引き続き考えていきたいと思います。

 

学習素材として10月20日にブログにアップいたしましたオリジナルの事例を使って記事を書きますので、

よろしければ読者の皆様もご一緒にご検討ください。

 

今回の記事では選択問題(過去問)の問2にあたるところを考えてみます。

 

「この事例相談者が抱えている問題に対して優先して取り組むべき目標は何か。」

という問いです。

※同じ問いの中にある「目標を達成するための方法や内容」は次回の記事で触れていきます。

 

この「優先」というワードから逆算思考的な発想で、

《問1で複数の問題を解答して問2ではその中からどれかを選んで目標にしたらいい》

と考える方もいます。

 

考えは人それぞれでしょうし、

また、これが正解というものもないでしょう。

実際の事例指導の場面をイメージしてみるといいと思います。

 

「優先」という意味合いを、

例えば、

「この事例相談者にとって課題として一番触れてほしいところ」

という風にとってみるといいかもしれません。

 

それは意外にも事例相談者が自分でわかっていないことも多いものです。

 

だからこそ、問1のところで、

・事例相談者視点での問題

・事例指導者視点での問題

を意識できることが相互の交流、作用を生み出すことに繋がります。


両視点を合わせて文字化することができていると、

事例相談者視点で抱く問題に繋がる事例指導者視点が活きてくるのだと考えます。

そうした過程を意識するか否かは全て受検者の考えなのです。


皆様はどのように考えているのでしょうか。

 

仮に問1の解答で、

事例指導者視点だけを「あなたの考え」として数多く示している場合、

問2も事例指導者によるワンマンな考え方しかできなくなることがあります。

 

効果的な支援プランを立てるには、

実技として、まず事例相談者をわかろうとし、

事例相談者の話を聴くことから始まるものだと思います。

 

それを文字表現できなければ、

そうしたことをやっていないことと同じかもしれません。


いくら見立てが的確で鋭くても、

それは事例相談者のためになるのでしょうか。

いかに論理的で適切なことを書いたところで、

事例相談者にとってそれが受け入れられなければ効果的な面接時間にはなり難いでしょう。

 

だからこそ、

事例相談者が気にしている点に繋がる私たち事例指導者の視点を示すことができるのが、

効果的な方法や内容にも繋がるプランを表現できるようになるのだと考えます。

 

目標を文字化してみた時、

事例相談者の気掛かりなところにフィットしているかどうか…

それは事例指導者として目標設定のひとつのチェックポイントにもなると考えます。

 

優先して取り組むべき目標は、

まずはそんな視点から考えてみてもいいと思うのです。

 

それから少し視点を変えた考え方もあります。

 

極端に悪い例として挙げてみますが、

例えば、目標の表現として、

 

CLの気持ちが付随した発言に対してその意味を自己の価値観で判断せず、

CLにとってどのような意味があるのかを理解できるような働きかけができるようになる。

 

CLがどうありたいのかをイメージできるように問いかけ、

CLの意思を尊重した上で乗り越えていく課題を共有できるような面談を目指す。

 

というような長々とした解答記述をしたとしましょう。

人によっては(いい解答だね)と思うかもしれません。


ちょっとだけ考えてみて欲しいのは、

前者の表現の場合、


•CCの価値観だけで判断しないこと

•CLの言葉の意味を共有できること

•CLの気持ちを理解できるようになること


という目標が凝縮されているようです。


後者の表現だと、


•CLのありたい姿をイメージできる関わりを目指す

•CLの意思を尊重した面談を目指す

•CLと課題を共有できるステップを踏めること

 

ということが盛り込まれているようですね。


これでは事例相談者が戸惑ってしまうでしょうし、

実際に自律的な取り組みにはなり難いかと思います。


きっと1級の技能検定試験においても、

こうしたぼやけた目標の表現は何が言いたいのかよくわからない…ということになるかもしれません。

せっかく文字をまとめたのに残念なことになりそうです。


今回の事例記録によれば、

事例相談者は相談者が職場で上司にわかってもらえない、

そして周囲との接点も少なくなり疎外感のようなものを抱いている感じを掴んでいますよね。

所感にも仕事に対しての思いも薄れ、疲弊している感じがあると記録しています。


気になったからこそ事例記録に記している側面もあるかもしれません。


何れにせよ所感に記すほど印象に残っている、

そこにフラグが立てられる事例相談者ですから、

相談者に対して主体的な意思決定を求める前の段階で、

相談者の状態を改めて振り返り、

その準備が整っているのかをCCとして評価してみることも大切です。


つまり、優先目標として、

提案内容が今の相談者の状態や段階に相応しいのかを客観視できる技能を養うことでもいいかもしれません。


最後に、

この記事を読んでこう感じた人がいるかと思います。


(それよりキャリアコンサルティングの原理原則に沿って、もっと前のプロセスから改善させないとダメじゃないの?)


キャリアコンサルタントやカウンセラーなら誰もが一度は考えることですが、

(クライエントの気持ちを全然聴けてない!)

傾聴力を上げる目標じゃないとダメだよ。


そうかもしれませんね。


では、ほとんど全ての事例がそうなりませんか?

うまくいかない大抵の事例が傾聴力の欠如によって何かが起きている。


今、ご指摘くださった方も然り。


そもそも気持ちを聴くって言葉にすることはわりと簡単ですが、

実はキャリアコンサルティングを行う人の全てが傾聴力は常に課題ですよね。


1級をもっている人、これから取る人ほど、

傾聴力をもっともっと上げていく必要があるのでしょう。


目の前の初学者の方をつかまえて、

(もっと気持ちを聴きなさい!)

これってちょっと矛盾しているかも…


心配しなくても、

自分がやろうとした提案を立ち止まってみる力が事例相談者に備われば、

自ずと聴く力もついてくるかと思います。


それを指摘する人よりも、

もしかしたら事例相談者の方が実力がつくかもしれませんね。


私がいつも自分に言い聞かせていることです…苦笑