昨日の記事に引き続き、

事例相談者(キャリアコンサルタント)の相談者(クライエント)への対応の問題を考えてみます。

 

学習に使う事例はこのブログで先日アップしたオリジナルの架空事例を活用します。

 

対応の問題としてこの事例で読み取りやすいところの一つに、

「最近の忙しさなどから今後の生活や自分の将来に不安と迷いが生じている」

と相談者の来談経緯をまとめていて、

所感には(一緒に仕事を探すことを約束した)

と事例相談者の支援方針等を示した記述があります。

 

このように相談者の来談経緯の内容と、

最後に記された事例相談者の支援内容がズレていたり大きく変わっている場合、

面談経過の中で何かが起こったのだと想像できます。

 

どんなやり取りからそうした話の流れになったのか、

事例の面談経過等を確認すれば何かしら手がかりが見つかることもありますよね。

 

事例指導は

《事例相談者の相談者への対応をダメ出しすることではない》

という事例指導者側の心得やその態度が大切だと考えます。

 

論述問題だからといって《どのような問題があるか?》という問いを受け、

それをダメ出し探しと認識してしまうようだと、

事例相談者の学習を邪魔してしまう存在となってしまうこともあるから注意したいところです。

 

他者が抱える問題らしきものへダメ出ししたくなる思考傾向があるのは、

事例に描かれた現象そのものだけににとらわれていることが多い気もします。

 

マウントを取りたがっている自分がいるのかも…

という感じで立ち止まって考えてみることも、

自分自身の視野を広げるチャンスになるかもしれません。

 

事例相談者の振り返りの学習を側面的に支援できるよう、

どうして事例相談者の対応がそのようになったのかを、その人の立場に立って深く考えてみることは大事だと思います。


すると面談経過の中で何が起きているのかが理解できることも増えることでしょう。

 

さて、具体的に事例をみてみましょう。

 

例えば、


記録の中盤において相談者に対し

(仕事を辞めることを考えているのか)

と質問しているところ。


今後の生活や将来に迷いと不安、

このまま働き続けていいのかと相談者の話しを受けていることから、

この事例相談者は、やや対決的な働きかけをおこない、その効果を期待したとも考えられます。

決して辞めることを推し進めようとしたわけではないことが後のやり取りからわかりますね。


また相談者の発言記録から、

仕事に対する想いなど気持ちが吐き出されている様子が伝わってきます。

「無理でしょうか」「わがまま」「好きで続けて」

など頑張ってきた自分を訴えている場面があります。


さらに続けて

「夫からもお義母さんからも…」

と普段の生活で家族から言われていることも記録にキャッチしていますね。

 

このように相談者の反応がわかりやすい記録は事例相談者の高感度によるものでもあるかもしれません。

 

だからこそ事例相談者が所感に記している通り

(不安と迷いが気になる)

となるのでしょう。


面談経過の最後の記録にある

(そうですね…(中略)お仕事を見つけていけるといいかもしれません)

という事例相談者の発言は双方で望んでいたものとは少し違う感じもうけます。


もう少し相談者の理解を深めていくような関わりができたかもしれませんね。


課題として、

相談者が発している言葉に反応しているのだけれど、上記の通り相談者の言葉や態度などからもう少し理解を深めるため、歩み寄っていく必要があるのではないかと感じます。


そうしたところが改善できることのひとつであり、

この事例相談者が記録にした

(思いを受け止めた。希望を叶えるため…)

とした自己評価を改めて振り返ることができるでしょうし、

(相談者と約束した)という点でも、

内発的な合意になっていなかった点を考えられるようになるかもしれません。


最後に、

事例相談者の対応の問題について、

ダメなところを列挙しても事例指導のプランは立てられません。


事例相談者が提出してくれた事例から、

如何に事例相談者の学習を促進していく支援となるかを考えるところに事例指導の醍醐味があるのだと思います。