事例相談者(キャリアコンサルタント)がまとめた事例から、

相談者(クライエント)について、どのような問題があるかを考えてみましょう。

 

1級キャリアコンサルティング技能検定の論述必須問題に出題されてきた問いにもなるところです。

事例指導を行ううえでまさに実践的な質問だと思います。

 

なお、ここで扱う事例は10月12日にブログへアップしたケースを使いたいと思います。

 

読者の方は既にお考えいただいているかもしれませんが、

改めてこの記事の内容をひとつの考えとして参考にしていただけたら幸いです。

 

先ず、いつも書いていることにはなるのですが、

2級の試験ではないので、

事例相談者を通して事例をつかむイメージが大切になると考えます。

 

これができることがキャリアコンサルティングの実践スキルを表現することにもなりますし、

また、事例指導を考えるうえでの事例の読み方や扱い方を理解していることにもつながると思います。

 

事例相談者は

「最近の忙しさなどから今後の生活や自分の将来に不安と迷いが生じてる」

といったことを受け、

(このまま働き続けていいのか不安なのですね)

と自身の言葉を面談経過の最初に記しています。

 

仕事が忙しいうえに家に帰っても時間に追われてしまうこと、

お手伝いをしてくれる子どもに対してもイライラしてしまう相談者のことを受け止めようとしています。

 

その後、周囲に相談ができているのかを確認して、

相談者の反応を受け、それ以上は踏み込んでいない様子がうかがえます。

 

ここまでの記録だけを読むとこの事例相談者は相談者の問題として、

義父の認知の問題などの状況変化と周囲の人へ迷惑をかけているといった罪悪感、

エンドレスに続く忙しさ等からいっぱいいっぱいになりひとりで悩みを抱え込んでいるのでは…

と見立てているかと感じます。

 

それから相談者の「このまま働き続けていいのか」という言葉について、

(仕事を辞めることも考えているのか)といった意味にとって確認していますね。

視野を広げるためか話題を少し変えています。

 

そしてこの後の相談者の沈黙を記録に表現しているのは何かリアルに伝わってくるものがありますね。

 

ここに記されていることが相談者の叫んでいるような訴えにも感じます。

もしかしたら事例相談者に一番受け止めてほしかったところかもしれないところかもしれません。

※事例相談者がこの記録を書いていてどのように考えているのかはわかりませんが、

その後のかかわりかたや所感などから推測はできそうです。

 

事例相談者は相談者を励ましたくもなり

(…そんなことはありませんよ)

となんとか絞り出したのでしょうか。

 

相談者の仕事への気持ちが伝わってきたからこそ、

仕事を続けていくことから考えてみましょうと一旦提案したのだと思います。

 

相談者が夫からも義母からも家計が困っているわけではないから無理はしなくていい…

と言われていること、

ここに相談者の鬱々たるやるせない気持ちが表現されているようにも考えられますね。

 

これまでの相談者の発言にある気遣いみたいなものは、

夫や義母との関係性などからも影響を受けていることがあるかもしれません。

 

このように事例を読んでみると、

相談者にどのような問題があるか、

相談者視点からと事例相談者視点から、

そしてそれらを整理しながら事例指導者からの視点をあわせて言語化(文字化)できるとよいと思います。

 

注意したいことは、事例を読んで、

幼稚園の送り迎えの問題、園に迷惑をかけてしまっている問題、義父の認知の問題、

このまま働き続けられるかの問題、夫の仕事への影響の問題、自分が負担をしなければと考えている問題、自分の職場が一層忙しくなってきた問題、生活と仕事で忙しくなっている問題、余裕がない、このままでいいのか不安を感じる、夫が帰ってくる前には夕食を準備しておきたいという思い、せっかく娘が手伝ってくれるのにイライラしてしまう自分、

周囲には相談できないと思っている問題、仕事は続けたいけど続けることが我儘かと感じる葛藤、などなど。

 

このように事例に書かれたネガティブな部分をチェックリストで評価し、

なんでもかんでも相談者の自己理解不足だとかワークライフバランスの問題だとか…

キャリアプラン不足、コミュニケーション不足などと画一的な評価をしてしまうのはいかがなものかと思います。

※結構ありがちです。

 

そのような考えを解答にするのであれば1級の試験じゃなくてもよさそうな気もします。

 

次回の記事では、

この事例相談者の相談者への対応の問題を考えてみます。