1級キャリアコンサルティング技能検定試験論述問題の事例を使いながら、

キャリア形成支援に携わっている多くの方とキャリアコンサルティングについて実践的に考えていく場面が増えています。

 

特にその事例をまとめた事例の提供者(キャリアコンサルタント)に注目しながら、

その事例の核心を捉えられるようにして、

どんな場面でどのような支援があると相談者(クライエント)にとってより良い面談となり得るのか、

参加者様の知識や経験値などを活かしながらあらゆる視点から意見や見立て等を出していただきます。


グループワーク等の場面でわりと陥りがちなのは、

事例を提供している事例相談者(キャリアコンサルタント)の問題を表層的且つ一般化して捉えてしまうことです。

それを論述試験で問われている「問題」として扱うことに私は違和感を感じています。


他人の悪いところは目立つでしょうし、

人のできていないところを挙げるのは雑に表現すれば簡単です。

グループがそうしたモードで語り合えば合うほどダメ出しの強化となることもあるから注意が必要だと思います。


勘違いしてはならないことに事例相談者のことを

《ほめなければならない》

《承認しないといけない》

《寛容でなければならない》

などとメッセージしているわけではありません。


根拠のない褒め言葉や承認等はお互いに本音の交流が生まれず相手を傷つけることもありますし、

嘘をつくことになったり、悪いところを強めてしまう働きになることもあります。


事例相談者がキャリア形成支援として相談者にもつあらゆる方針を、

せめて理解できる安定したスキルが指導者には必須であり、

それが結果としてより良い面談を多くのクライエントへ届けることにもつながるのでしょう。


対人援助職を指導・育成していくテーマのひとつとして、こうしたことは頑健な研究データが数多く揃っています。

現場で応用しながら取り入れていく勇気も必要だと思います。


ここで視座を変え記事を書きます。


事例相談者がまとめてきた事例を読んでみると、

その多くは相談者の感情面への理解が乏しく関係が深まっていないとか、

そのために相談者が本当に聴いてほしいことが言い表せないままになっているとか、

または、

キャリアコンサルタントとしてフラグを立てたことについて支援に必要なところを選択して正確に伝えられず相談者支援の役に立っていないなどの現象があります。


結果として相談者自身が自己成長のための目標を明確にできていない事例が多いのかもしれません。


こうして考えてみると全部同じことになってしまいそうです。

これでは論述問題を考えていても面白くありませんよね。


事例指導者として事例記録からケースをつかむ「概念化する」とき、

書かれている現象ばかりに注目するのではなく、

例えば、

「仕事の価値と人生の価値は重なり合うこともあり、また人生の価値は仕事の価値とはかけ離れていることもある」

とした前提に立ってみて、

記録に登場している相談者がわかってほしいことは表面的なことだけではなく、

本人すらも言葉にできないような内側に隠れていることもあるだろう…と考えます。

 

キャリアコンサルタントがかかわることができるのは相談者の諸事情や興味、関心、適性などの世界以上に、

それを越え、その人にとっての人生そのものの意味合い、価値観を探求していくところをガイドすることでもあります。

 

相談者個人が抱いている価値観を明確化するには、

キャリアコンサルタントが相談者を尊重し大切にできることが必須であり、

だからこそ相談者自身が自分を尊重し大切にできるようになる。

 

それは価値観の明確化に留まらず、

希望の実現の可能性にまで発展して価値観の実現へと進むことにもなると考えます。

 

相談者自身の自律性、有能感、関係性という核心が損なわれずに生きることができるところ、

それをキャリアコンサルタントが安心安全の場面を提供しつつ、側面的支援を通じ、

相談者の成長を望んで関わる姿勢が何よりも根本だと思います。


まとめてくれた事例記録がそうしたキャリア形成支援になっているのか、

もしなっていないとするのであれば、

きちんとその根拠を踏まえて優先的に取り組むポイントを事例相談者の気になるところにつなげて指導プランを企画してみたいものです。

 

そしてこの意識は、

事例指導者側にも絶対的に重要であり、

目の前にいる事例相談者へのかかわりにも置き換えることができるのではないでしょうか。

 

勿論、事例指導やスーパービジョンの場は、

キャリアカウンセリングやキャリアコンサルティングを実施することではありません。

 

大事なことは、

目の前の専門家を尊重し大切にし、そしてその人の価値観を明確化することが、

支援活動のあり方へつながることがあります。

 

まとめてきた事例を通し、

その課題の明確化は、その事例相談者にとっての人生の価値と仕事の価値の重なり合うところなのかもしれませんね。


昨夜に引き続き、

今夜も日本キャリア・カウンセリング研究会(JCC)主催の事例指導講座が開催されます。


参加いただく方はどうぞよろしくお願いいたします。


講師は私(小林)が務めますので、

講座を受講いただく前にこの記事を読んでくださった方は、

本日使用する事例をここでお示しいたしましたように読んでみることも、新たな気づきにつながってくるのではないでしょうか。