1級キャリアコンサルティング技能検定の実技試験(論述・面接)の試験評価細目等では、
キャリアコンサルティングを行うために必要な技能として、
基本的技能にカウンセリングやキャリアコンサルティングが挙げられています。
これを事例指導者(受検者)が相談者に対し直接的に面談を実施する視点だけで認識してしまうと、
1級論述試験などで自分(受検者)が見立てる問題だけを取り上げてしまう傾向が出てくると思います。
※2級の試験となんとなく同じような考え方をする傾向が出てくるように思います。
そうした視点で解答を考えた場合、
過去の論述試験で残念な結果になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、
第1回(平成23年度)の1級技能検定で実技試験をクリアされた方は割と多くいらっしゃいます。
※第1回の1級実技論述・面接試験は合格率が高く、学科試験がとても厳しかったのです。
そして当時の論述の問いでは
「この事例相談者は、相談者の問題をどのように把握しているか」
という視点で質問が設定されていました。
現在、このような問いが設定されていれば、
事例指導やスーパービジョンを理解されている方にとって、
この問いは何を問われているのかがわかりやすい質問ではないかと感じます。
では、第1回と第11回のこの10年間において、
キャリア形成支援者への事例指導というもの(指導フレーム等)が大きく変わっているのか…
といえば、そんなことはないでしょう。
いつの時代であっても事例相談者が相談者の問題をどのように把握しているのか…
という視点は事例指導において重要なポイントだと思います。
試験範囲や細目のところに以下のように表現されています。
1 、カウンセリングの進め方を体系的に理解した上で、キャリアコンサルタントとして、事例相談者に対する受容的・共感的な態度及び誠実な態度を維持しつつ、
様々なカウンセリングの理論とスキルを用いて事例相談者との人格的相互関係の中で事例相談者が自分に気づき、成長するよう相談を進めることができること。
2 、傾聴と対話を通して、事例相談者が抱える課題について事例相談者と合意、共有することができること。
3 、事例相談者との関係構築を踏まえ、情報提供、教示、フィードバック等の積極的関わり技法の意義、有効性、導入時期、進め方の留意点等について理解し、これらを適切かつ安定的に展開することができること。
事例相談者が主体になっていることがわかります。
つまり、
単に相談者の問題や事例相談者の問題を受検者の視点で事例から見つけて記述するだけでは、
事例指導者(受検者)の独りよがりになってしまいそうです。
上記の1〜3に書かれていることができるということは、
カウンセリングの技能がなければできることではありません。
こうしたところで受検者の実践的な面談能力をはかることもできるでしょう。
要するに、
事例相談者がまとめた事例から相談者の問題を把握するためには、
先ずは、事例相談者の考え方、捉え方を理解していく過程が必要となり、
それを経て相談者の問題把握ができるのだと思います。
さらにこの大事なプロセスを考える力があれば、
事例相談者の改善点も明確化しやすくなると思います。
実践的な事例指導において、
事例相談者のキャリアコンサルタントとしての成長を目的に事例を掴むということであれば、
指導者の事例相談者への理解がとても重要なポイントになるのでしょう。
試験においても、そうしたところまで問われていると考えることが、
実践家としての心構えなのだと考えています。
色んなお考えがあっていいのだと思いますが、
ひとつの事例指導のあり方として参考にしていただけたら幸いです。