1級キャリアコンサルティング技能検定の実技論述試験において、

事例相談者(学習者)の学びとなるように伝えていくことは大切です。

 

論述で事例相談者の問題を明確に記すことが大事であるという考えもありますが、

一方、それが自分(事例指導者)の評価を得るために考えを示しているということだと、

事例指導の実技とはかけ離れてしまうことにもなるかもしれません。


試験だからこそなかなか難しいこともあるかもしれませんが…。


少し視点を変えて実践的に考えてみます。


グループワークなどでキャリアコンサルタント同士がフィードバックを行う場面が多々あります。

フィードバックの難しさを実感されている方は多いのではないでしょうか。


その時、自分の評価のためというよりは、

相手の役に立つようになるべく相手の立場を尊重してお伝えすると思います。

※決して寛容であるとか無理に良いところを絞り出そうとか、そういうことではありません。


その人が自己の面談の振り返りをより適切にできるように伝え方を工夫していくことだと思います。


例えば、

同じ言葉ばかりではなく言い換える言葉を見つけることも大事なことで、

否定的な表現から肯定的な表現に変換して伝えることも実技では有効になると私は感じます。


これは事例指導の場面も同じだと思います。


事例相談者が実施したキャリアコンサルティング面談について事例相談者を中心にしてお互いにフィードバックを実施していくイメージです。

※フィードバックというのは単なる感想を伝えていくことではありません。


一例として表現すると、

《気持ちが付随している言葉を深めていない》

と事例相談者の不出来なところに焦点化するよりは

《発言を捉えて整理しようとかかわっている》

と表現した方が良いときもあります。


あくまで架空のお話しですが、

視点が異なることが伝わるでしょうか。


同じ現象をからそれを表現するにしても、

肯定的な表現の方が論点を抽出しやすくなると思います。


フィードバックを行うとき、

そのフィードバックを受ける方が自身の中で適切な振り返りを行えるよう、

側面支援していくイメージが大事だと思うのですが、

つい漠然としたことを否定的に伝えてしまったり何かと比較して否定してしまっていたり、

また、過度な一般化や指導者の価値観等で良し悪しの評価をしてしまいがちです。

 

論述試験の解答欄に理想的なキャリアコンサルティング、

事例指導者視点でキャリアコンサルタントのあるべき姿を強くイメージしてしまうと、

肝心の事例相談者の成長的なかかわりが乏しくなり、

事例指導者視点であれこれと欲張ってしまったり、ないものねだりだったり…。


論述とはいえ「不出来な事例相談者」としてレッテルを貼っていくような視点が強化されてしまうとよくない気がします。

 

論述問題(事例)を読みながら、

事例相談者の立場やその人のプロとしての尊厳を大切にしていく姿勢が指導者に備わっていることが重要であり、

事例相談者の学習目的(気にしているところ等)に沿ったフィードバックを具体的に記述できることが必要だと思います。


そうしたことを軸にしておけば論述問題の各問を考えていくことがしやすくなるのではないでしょうか。