先ほど大阪に到着しました。
今朝の伊丹空港はやや曇っています。
伊丹空港に到着する前の上空を撮ってみました。
突然ですが…
キャリアコンサルタントとして相談者(クライエント)をタイプ分けした方がよい、
形式化・標準化したような支援方法があった方がよいと考えることはありますか。
あっ…と
これもキャリアコンサルタントの事例指導の面接について考える大事なことだと思っています。
ので、ちょっとお付き合いください。
これは検定試験を受検する人、
そしてその受検対策を教える側にも起こり得ることかもしれません。
少し嫌味っぽい表現になりますが、
支援者にとって都合の良いお話しですね。
専門家として一定の適切な訓練プログラムが大事だとは感じますが…
それすら絶対ではないことを真から理解できていることが重要だとつくづく考えます。
あるいは、
キャリアコンサルティングを受ける人からみても、
キャリアコンサルティングというものについて多少なりとも知っていたとするならば、
例えば…
専門的なアセスメント等である程度タイプ分けされながら、
自分にとって何かしらのミラクルな答えが出てくると期待していたり、
キャリアコンサルタントという専門の人から自分に合ったちょうどよいアドバイスや助言が提供され、
相談した悩みや問題等を解決してくれる技術、技法等があるのだろう…
こんな風に誤解されていることも多いとも思います。
これは上に記したようなキャリアコンサルティングらしき行為をする人が、
社会に対して誤解をさせてしまっているともいえるのかもしれません。
応えることが使命である
解決できる力がマーケットニーズとしてある
ブランディングが大事である
キャリアコンサルティングが世の中に浸透していかない理由を、
上記のような事象に無理につなげて発する人も存在します。
※キャリアコンサルティングが世の中に浸透しているか否かを語っていること自体がおかしなことかもしれません。
ご自身の諸活動や事業等に都合よく解釈されメッセージを出す方もいらっしゃるようです。
キャリアコンサルティングを受ける人
それを観察している世の中の人
キャリアコンサルタントという人が何かしてくれると受け身の姿勢で期待していることに違和感を覚えます。
これはキャリアコンサルタントがそうしているのではないかとも考えてみるのです。
相談者は困りごとがあるからこそ来談している。
それは友人や周囲の仲間ではとても手に負えない、
相談できないなどの内容だからこそ専門家を頼ることもあるでしょう。
勿論、組織の都合などから
誰かから指示を受けて仕方がなく面談に来談していることもあります。
未だに手挙げでの来談か、やや強制的な指名からの来談かでキャリア形成支援が違うなどの陳腐な議論をしていることがありますが、
これでは本質的なところへ話しが発展していかないと思います。
ここでは来談の経緯等はさておき、
相談者や来談者としては、
その提供された面談に何も手応えを感じられなければ失望してやめていく、
離れていくこともあります。
この失敗ともとれる現象に対し、
なんとなくその営みを眺めている方々は
「あれはダメなキャリアコンサルタント」
「全然前に進んでない、何も解決していない面談」
とネガティブな評価をすることがあります。
この業界で
「キャリアコンサルタントの質を向上させる」
=「面談力、展開力のある専門家を育てる」
といったような誤解がまた増長されていく。
なんだかこれでは悪循環です。
一般の人から専門家と言われる人まで、
どういうわけか、変な誤解に巻き込まれてしまっているかもしれません。
間違っても上に書いたような酷い評価をすることにはならないよう、
キャリア形成支援者同士でのスーパービジョンがあり、
また事例指導の面接があるのだと私は認識しています。
1級キャリアコンサルティング技能士はそんな働きをする必要があると考えています。
少し話しがそれますが、
仮に
「この面談で相談者が変わったんです!」
「相談者に自主的な行動変容があった!」
とキャリアコンサルタントとして自己評価できる面談があったとします。
そしてそれを指導する人は
「それは素晴らしい!」などと是認する。
しかしそれは不味いと思うのです。
結局のところ何が変わったのでしょうか。
本当に相談者が変わったとどうして言えるのでしょう。
それはその変わったとする現象を捉えただけになるかもしれません。
相談者にとっての真の変化とは何か、
それは到底一般化できるものではありません。
本当に相談者が変わったのか、
相談者の周囲にささやかな変化が起きているのか、
などなど…わかりません。
何かの統一された絶対的な前提・根拠をもとにその効果をはかることができるのであれば話は別かもしれませんが…
そもそもそうした適切なものさしは現実に存在していないのです。
だからこそ面白くいつまでもわからないのです。
相談者が変容したとか、
変わることができたとか、
誰がいつどこからみてそう感じたのか、
相談者なのか相談者の周りなのか、
はたまたキャリアコンサルタントなのか、
きっと全ての関係者が異なったことを知覚しているのでしょう。
勿論、相談者が状況に合わせて自己の演じ方を変えたこともあるかもしれません。
相談者の状況等が微妙に変化しそこに左右される要因などはどう変化したのでしょう。
それがごくわずかでも実は見た目に大きな変化を捉えることがあります。
その人のことを大してわかるわけでもない。
だからこそ自分達の経験に頼りたくなり、
キャリアコンサルタント同士で一般化して話し合うしかなくなる。
これでは相当に説明が難しくなりますよね。
要するにこうした難しさを知っていること。
わからないということを本当にわかること。
これはキャリア形成支援者にとって重要なポイントなのだと私は教えられてきています。
だからこそ人のキャリア形成の支援につながるのではないでしょうか。
日頃から現場で相談者から学んでいることを常に自身に問いかけていくからこそ、
支援の厚み深みが感じられるようになるのだと思います。
1級キャリアコンサルティング技能検定試験に合格しても、
その人自身が専門家として成長し続けていくことを真剣に純粋に考え抜く必要があります。
前置きが相当長くなりましたが、自戒の念を込め、
思うところがありブログからのメッセージにしようと記事にいたしました。
さて、
第11回1級キャリアコンサルティング技能検定試験の論述選択問題の問3について、
事例2(企業分野)の記録を活用して考えてみましょう。
問3 この事例相談者が相談者を支援するために「必要なネットワークや環境」への働きかけは何か。また、なぜそれが必要であるか根拠を記述せよ。(20点)
この問いでは(この問いでも…)
「この事例相談者が相談者を支援するため」
というところを忘れないようにしたいですね。
試験を受検する側からすると、
試験官の方に認めてもらえる評価を得ようとするあまり、
自己中心のものの見方をしてしまいがちです。
前置きで書いた内容にも通じるところがありそうです。
論述問題は実技試験であり、
事例相談者の成長をひとつの目的として事例をみていくことが大事です。
勿論、実際のところ事例相談者からすれば、
事例指導者(他者)の視点から、どのようなことでも学ぶことができるとは思いますが、
それではあまりに指導者側の自分勝手な発想ですよね。
やはり事例相談者の立場を十分に踏まえて考えていきたいところで、
それが個々に合ったコーディネートになるのだと思います。
この事例相談者は相談者が勤務する会社の相談室で活動しており
(最近は仕事との両立に悩む相談も増えてきたことから、指導を受けたい)
としています。
さらには記録に相談者の発言として
「今の会社は、私以外にも子育てしながら働いている女性もいます。」
といったことを事例に記しています。
事例相談者の記録から見えてくることは、
この会社では、
相談者以外にも女性が子育てしながら頑張っている人が存在していて優秀な人が多いこと、
少なくとも相談者はそう認識しているということになります。
一方、
この事例相談者の認識では、
両立に悩む相談も増えてきたということですね。
つまり相談者自身の現場での認識と、
事例相談者の専門家としての認識では矛盾がありそうです。
要するに、
この事例相談者は両立に悩む相談者が現場でどのようにして働いているのか、
その実態をつかみきれていないともいえます。
これではこれからのキャリア形成支援によろしくない影響が出てきそうですね。
すると、相談者支援に必要なネットワークとしてどんなものがありそうか、
例えば、
上記にお示ししたような支援から答えを導いてみてもいいかもしれません。
経営側や各部署長との信頼のネットワークを築き、定期的に部署ごとの職場満足に関するインタビュー、アンケートの実施ができるようにすることなども組織の課題を提起するためにも必要なネットワークになるでしょう。
キャリアコンサルタントとしての組織への適切な介入ができるには、先ずはキーマン達とのネットワークが必須です。
環境についてはどうでしょう。
先ずはこの事例相談者が面談の中で確認していた周囲のサポートがありますが、
どこか一点集中で頼れる人を見つけたり、
現在実行している保育園の延長などによって子どものこと全てが解決するとは思えません。
本来なら、全ての人や組織等に少しずつでも頼って分散型で考えてみると、
いくつかの支援パターンを組み合わせて乗り切る方法があるかもしれません。
しかしながらそうした楽観的なものの見方は、
今の相談者の不安な心境状態からはのぞめないでしょう。
丁寧な段階を意識していくことが必要ですね。
人は頭では論理的にわかっても、
自分が体験していないことには実感がわかないことも多い。
例えば、
代理体験の効果を活かしてみるのもありかもしれないです。
事例には、
(結婚後も子育てをしながら働いている従妹の看護師)
(歯科医でバリバリ働いている義母)
(子育てしながら働いている女性、優秀な人も多い)
といった記述があります。
この事例相談者が自分の記録の内容を使い、
相談者を取り巻く環境としてどのように認識できるのか、
それによって相談者を取り巻く環境への介入(相談者を通した介入)が考えられます。
相談者が認識するロールモデルへインタビューすることは代理体験にもつながります。
もうひとつの視点としては、
この事例相談者は相談者が勤めている会社の相談室で活動しています。
組織としての相談室設置の意義もあるでしょうし、
福利厚生制度も充実していること、
そしてそもそも相談者は出産育児の休暇から復職しやすかったことや、
1年間の短時間勤務やフレックス制度なども活用してきた実績があり、
上司面接をした上司もそれは承知・評価のうえでマネージャー候補の話をされていることも推測できます。
こうしたことをこの事例相談者が整理して要約できる力が発揮されていないとすれば、
やはり会社の経営方針と相談室の支援方針が連動していない可能性もあるかもしれません。
事例相談者も相談者も組織の方針を含め理解不足にあるともとれます。
実にもったいないことですね。
今後の様々な両立支援に役立てていくためにも、
これを機にこの事例相談者が相談室の室長(上長)等に働きかけて、
会社の人事部門などとうまく連携し、会社としての従業員への両立支援への取り組みなどを宣言させていくことにつながる働きかけができると思います。
これは事例相談者が直接介入できる環境への働きかけにもなるでしょう。
ネットワークや環境については、
事例相談者が行動化出来そうなポイントをつかんで表現できると実践的な解答となるのではないかと感じます。