1級キャリアコンサルティング技能検定について、

実技試験に到達したという方が以下のように表現されることがあります。

 

「事例相談者の目標設定にもいかなかったけど合格したよ!」

「ロールプレイが全然うまくいかなかったのに合格した」

等々。

 

そしてこのお話しを聞いた人がまたそれを周囲に伝えていく。

その内容はインパクトのあるところが特に強調されて上書きされていきます。

 

こんなネガティブなお話しもあります。

「事例相談者に意地悪された」

「何もしてないのに事例相談者の態度が悪かった」

等。

 

こうしたお話しをいかにも真実のように発することはよろしくないと思います。

確証バイアスの嵐。相当な勘違いが起こっています。

 

試験会場で観てたわけじゃないのになんでそんなことが言えるの…?

という感じのことが聞こえてきそうですが。。。

 

それはこれを読んでそのように思った人も同じですよね。

そもそも、人間の記憶はきわめて曖昧であることは科学的にも根拠が揃っています。

つまり受検されたご本人が体験したことも実に曖昧な記憶だということです。

 

1級に合格したという結果がある。

その方が自分の体験を話してくださった。

その表現をそのまま鵜呑みにすることは避けたいところです。

 

結果に影響を受けて話しを聞いている自分がいることを知る。

結果を誇張して受け過ぎないよう、

自分自身に釘をさすことは大事だと私は思います。

 

因みに、私が1級の試験に挑戦するときは、

第1回目の合格者がこの世に4名しかいないという時期でした。

周囲の人はその4名の1級ホルダーを神のように表現する人もいました。

その人が一言何かを発すれば、皆揃ってメモを取る…。

この業界でそうしたことに動じない人は少なかったように思います。

それだけ影響があるということは確かです。

 

「目標設定にもいかなかったけど合格したよ!」

「全然ロールプレイがうまくいかなかったのに合格した」

「こうしたら合格した。ああしたら合格した。」

 

このように結果だけを武器にしてのお話しは、

斜めにみてみることも必要かもしれません。

根拠もないことに振り回されないようにしたいものです。

 

1級、2級の技能検定試験の設計に携わっていらっしゃる先生、

また、試験官として1級をまとめてくださっている先生がこれを読んでくださっているとすれば…

きっとこの記事には納得してくださるのではないかと思います。

※個人的にそう考えます。

 

そうこうしたから合格したのではない。

 

受検者の方が、相手(事例相談者役の方)との出会いを大切にし、

その場に自己のベストを尽くし、

そこで起こる相互での変化、経験を積み重ねていること、

それを真意をもって取り組んでいるか否かが重要だと。

 

当然、専門家として普通に考えれば目標設定まできちんと合意を得られ、

事例相談者の成長を目指す関わりができていくことは理想的だと思いますが、

そうした形だけではないということ。

どこまでいったら合格、どこまでいかなくても合格、

そんなことではないのです。

 

1級キャリアコンサルティング技能士を目指そうと考えている方が、

「こうしたら合格する」「こうしなくても合格する」

というようなおかしな話しに巻き込まれないで欲しいと思います。

 

目標設定にたどり着かなかったけど合格できるよ…

じゃないのです。

そして人が勘違いするように発言しているとなれば、それはよろしくない。

 

確かに結果として目標設定までいかなかったのかもしれません。

それでも合格した…という、そこを強調すること自体、

それは受検者やそれを語る人の勝手な思い込みでもあったりするでしょう。

 

その試験の会場現場で何が起きていたか、

受検者ご自身の記憶もご自身の記憶のインパクトの強弱で

瞬く間に記憶が書き換えられていきます。

 

そして人は経験を言葉にするとき、今の自己の記憶から発することが多い。

 

記憶が書き換えられるだけではなく、そこには確証バイアスがかかっていて、

さらにはそれを聞いた人にも確証バイアスがかかります。

 

事実となる都合の悪い記憶媒体(録音データ)はその手元にないわけですから、

そのまま真に受けるということ自体、

歪曲された情報をただそのまま受け入れてしまうことになるでしょう。

 

「こうしたら合格した」

「こうすれば合格する」

みたいな謳い文句には、とにかく気を付けたい。

 

そもそもそれを発すること自体、

キャリアコンサルタントとして自分が理解できていないことになるのかもしれません。

勿論、それを受け手がそのまま受け止めていくことも、

おかしなことになるでしょう。

 

CVCLABの説明会では、

合格者の方にそのようなお話しをお願いしているわけではありません。

その人のありのまま、等身大の表現でお話しをしていただこうとしています。

 

「こうしたら合格した」

「こうしなくても合格した」

「こうしたらだめ」

「こうしなきゃ」

 

この手のお話しに、もし戸惑うご自身が確認できるときは、

この記事を思い出してもらえたらと思います。