キャリアコンサルティングは、
クライエントの問題発見やその解決に集中することではありません。
コミュニケーションを通し良好な人間関係を大切な土台としながら、
クライエント自身が安心して冷静になり自身をじっくりと見つめ直すことなどから、
異なる視点がみえてきたり、改めて適切な行動を考え直したりする機会となればキャリアコンサルティングが成立しやすくなるのだと思います。
時間をかけて傾聴をおこなっているつもりでも、
クライエントがそうしたフェーズに至らぬままに、
キャリアコンサルタント視点の問題を提示したり、
説得に入ったり、解決方法を教えていたり…。
クライエント自身が今何を問題としているのか、
どのようにしたいのかを本人から語ることもなく、
専門家としての解釈等で支援をしているつもりになってしまうことは大いにあり得ることです。
時々
「ずっと聞いていても何にもなりませんよね?」
と疑問を呈するキャリアコンサルタントの方がいらっしゃいます。
では、
キャリアコンサルタントの力で何かを解決するつもりなのでしょうか。
このあたりの考えに軸がないと表面的になりがちです。
(コンサルタントはカウンセラーではないのだから…)
といったいった表現をする方もいらっしゃるのですが、
そうした言葉遊びみたいな疑義を唱えてもクライエントの役には立たない気がします。
例えば、
カウンセリングのスキルを常に高めていくことや反省的振り返りをおこなうことは、
これからのキャリアコンサルティングにも大いに役に立つでしょう。
人のキャリア形成支援者を行う以上、
それは必須のことであり、
そうしたスキルを活用できるからこそ、
クライエントが主体的に変容していく機会を創造していくことにつながる期待がもてるのではないでしょうか。
時代が変わったとかの問題ではないと思います。
傾聴は聞くためではなく、
クライエントとの良好な人間関係を築くためのコミュニケーションでもあります。
適切なカウンセリングアプローチを取り入れてキャリア形成支援を行える人は、
人の内側に持つ固有の悩みを理解しようとすることから避けずに向き合う力があると思います。
さて、
今回ここまで記事にしたお話しですが、
1級キャリアコンサルティング技能検定試験では、
お相手がクライエントではありませんね。
事例相談者が私たちの話し相手となります。
お相手が事例相談者でも、
カウンセリングプロセスについては、
人間同士で話し合っていくうえでの重要な過程となります。
事例指導者が事例相談者との良好な人間関係を築く前から事例指導者視点で問題を提示したところで、
事例相談者からすると自分の気になる点と結びつかずに違和感とか抵抗感につながってしまうことがあります。
結局、事例相談者がクライエントにしていることと似ていることが起きていて、
事例相談者にとって事例指導者の振る舞いが全く参考にならないということにもなり得ます。
※反面教師という見方ができれば参考になるかもしれませんが…苦笑
事例指導の面接で、
事例相談者の問題の発見に集中し過ぎてしまうことは、
それ以上に大切なものを得られないことにもなります。
事例相談者がクライエントの役に立つと考えてやったことを、
その理解を深めないままに、もっと良いやり方を教育しようとする事例指導者の態度は、
事例指導者の価値観や枠組み主導だと思われても仕方がないと感じます。
事例相談者から学ぼうとできる態度、姿勢が指導者には必要なんだと考えます。