1級キャリアコンサルティング技能検定試験に挑戦している方には、
資格を取得する様々な目的があると思います。
その目的は人それぞれですが、
指導者レベルのキャリアコンサルタントとして、
共通の認識があった方がいいと感じる点をひとつ書いてみます。
先ず、
キャリア形成支援は心理支援であるということです。
クライエントのキャリア形成に心理的支援は大きく影響します。
そして心理支援は、単に真実・事実を問うものではないと思います。
その人の認識がどのような仕組みで成り立っているのかをより理解し、
その異なりや差の存在を本当に大切にすることに原点があるように思います。
このようなことを改まって書いてみたのは、
事例指導者の役割を演じているキャリアコンサルタント(受検者)の方が、
自分の言っていることや経験値からの考え方が正しい、
それが真実・事実であるというように話を進めようとする場面を散見するからです。
例え言葉にしていなくとも、その人の頭の中で、
そう認識している場面が多くあります。
「自分が真実を知っている」
「自分のやり方が正しい」
「もっとこうすればいいという事実があるのになんで気づかないのだろう」
「気づかないふりをしているからこそ性格が悪い」
「ハズレの事例相談者役だった」
等々。
勿論、
そう考える事例指導者の側に立ってみることもでき、
その人なりに、その考えに至った経緯があり、
それが間違っているとか、
間違っていないとかをここで解説するつもりはありません。
ただその方が、
指導者としてキャリアコンサルタントを育成する立場にいらっしゃるとした場合、
ご自身の偏っているともいえる考え方を、いかにも正しいとして、
これからの学習者へ植え付けてしまうことは、
キャリアコンサルタントの成長の阻害要因となってしまうかもしれません。
結果、それは多くのクライエントにとっての利益につながりません。
ただえさえ、
事例相談者が自分の担当するクライエントに対し、
そのように自分中心でかかわってしまっている場面があるのに、
その事例を受けた事例指導者までもが、
事例相談者に対し、同じように関わってしまっている場面。
※事例相談者がクライエントにしていることと、
事例指導者が事例相談者にしていることが実に酷似している場面。
これがよくあるんです。
事例指導の面接において、事例相談者に対し、
事例指導者側の枠組みから、
「これが正しい」
と教えていくことはナンセンスだと思います。
こうした考え方は諸講座等で登壇するときでも一緒ですね。
講師側が自分の経験値で
「これが正しい」
「このようにするべき」
「こうしなければだめ」
と決めつけるような場面があったとします。
本当にこれで良いのでしょうか。
実際は、
講師の方が、受講者の一人ひとりの魅力に気づくことが必要なのかもしれません。
※かくいう私も日々努力しています。
その人が備えている個の持ち味、特徴を伸ばすことに、
全集中できることが求められているともいえます。
事例指導の場面に戻りますが、
要するに、
事例相談者から得られること、学ぶこと、気づくこと、
そのように相手を尊重すること、それが極自然にできるかどうか、
という人間観を指導者の素質として問われているようにも思うのです。
特に、心理支援を行う専門家を育成する際に、
自分だけの経験値に頼った指導コンテンツでは難しいと感じます。
個の差をなくしていくことが指導の目的ではなく、
そこに存在する全員をそれぞれに伸ばしていくような人間観を備えていることが、
心理支援を行うキャリアコンサルタントを育成する際に必要なのではないかと改めて考えます。
技能検定試験について、時折、
《試験なんだから合格するための重要ポイントがある》
という表現をしている方がいらっしゃると耳にします。
それを聞いた受検者(学習者)が、
そこだけにとらわれてしまうことをわかっていて、
そのような教示を行なっているとしたらどうでしょう。
試験なんだから合格ポイント的なものがある…確かにそうかもしれませんね。
だからそれを計算して試験対策をする。
しかしそれで合格をもらえても実践で役立たないことになるかもしれません。
実際に、
この1級キャリアコンサルティング技能検定試験は、
実力と実践力をもって本気で勝負していきたい試験です。
目の前の事例相談者に注目していれば、
試験の合格ポイントなど関係ないと思います。
少なくとも、この実技試験は、
事例相談者の育成のための基本的な面接を安定して提供することができれば、
着実に合格できる試験だと信じられます。
試験対策の戦略的(と思っているだけをも含めて)に演じる方がリスクが高いと思います。
有効な試験対策は何かと書けば絶対的に面接力だと思います。
事例相談者自身に見合った成長支援ができること、
すなわち、
事例相談者が、キャリアコンサルタントとしての自己研鑽について、
主体的に取り組みたいことを有言実行できることではないでしょうか。
決して、事例指導者側の気になる点などについて、
事例相談者に無理に気づかせることではないと思います。