1級キャリアコンサルティング技能検定の面接(ロールプレイ)試験の練習の場において、

事例相談者の発言以上に事例指導者の発言の方が圧倒的に多くなっていく場面に出会うことがあります。

 

一例ですが、

ロールプレイの練習を行なっている際、

30分間等、決められた時間の中で、

例えば、

残り5分〜10分間くらいのところになると、

事例指導者からたたみかけていくような問いかけが続いたり、

事例相談者の発言に対して事例指導者が何度も言葉をかぶせてしまっていたり、

事例相談者を誘導し、説得しようとしていたりするシーンが多くなります。

 

指導者が思うように面接を進められていないために事例相談者を誘導していこうとしている、

または、

指導者の思い通りに進めていくために話の外堀を埋め話の方向性や内容を押さえていこうとする…


などの目的があるように思います。

 

すると、

事例指導者が何か質問をして、

事例相談者がそれに対して単に答えるだけという場面が続くというようなことにもなりますね。

 

これでは事例相談者との関係性が弱くなり、

また結果として、

そのほとんどは指導面接として効果的ではなくなるのかもしれません。

 

「展開しなければいけない」

「気づかさなければならない」


という事例指導者の都合や考え、焦りなどから、

そうした状態になることがとても多い気がします。


これは試験だからということだけではありません。

 

もうひとつよく見かけることに、


ロールプレイの振り返り等の場面を設定し、

それを事例相談者や観察者からお話ししていただくと、

 

「もう少しここで私のことを尊重して欲しかった」

「事例相談者のことをもっと励まして欲しかった」

 

というようなコメントが飛び交うことがあります。

 

これは、

事例相談者役の方も観察者役の方も、

そして事例指導者役の方も、

相手を尊重、肯定的、承認という類のワードに、

単にとらわれていたり踊らされている可能性もあり、

そうしたことを必要以上に求めてしまっている傾向があるように感じます。

 

目の前の人を尊重する、肯定的に受け止めていくということは、

 

決して、

「よくやっていますね」

「ここは素晴らしいですね」

「頑張っていきましょうね」

などの表現で伝えていくことだけを指しているわけではないと思います。


そこに本当が感じられないと、

なんだかバカにされているようにも感じられてしまいます。

 

最後にもうひとつ…

 

事例指導者が、

事例相談者を理解していることをメッセージしようとするあまり、


例えば、


事例相談者の発言に対し無理に言い換えを行い、

違う意味合いに変換してしまう場面に出会うことがあります。


事例指導者が自身の理解を伝えようとするあまり、

自分の言葉に無理に置き換えて示すので、

事例相談者が伝えたかったこととズレてしまうことがあるのです。

 

これでは事例相談者の方は

《わかってもらえない》

感覚に陥ってしまいます。

 

当然、イライラするわけですね。

 

上記3点の例は、

事例相談者の思考をフリーズさせてしまったり、

違和感を感じたり、居心地の悪さを感じ得ます。

 

こうした場面は、

事例相談者の学びの時間を創造・提供しているというよりは、

事例指導者主体の時間にしかならないように思います。

 

事例指導者のかかわり自体が

事例相談者の学びの時間を阻害していることにもなるのです。

 

事例相談者自身が自分の問題を理解していくためにも、

また、自身の課題を見出していくためにも、

事例指導者はそこに一緒にいるのですから、

まず、

事例相談者の伝えようとしていること、

いっていることを、

わかろうとする努力が必要であり、

それがピッタリと合うように(なかなかピッタリとは合わないかもしれませんが)最大限に集中力を高めてほしいものです。

 

頭の片隅で面接をうまくやろうとか、

別のことを考えているようではそうはならないと思います。

 

そうした努力が本当にできるからこそ、

事例指導者の知覚がより正確になり、

事例相談者の話を簡潔に整理することができるのだと思います。

 

そのかかわり自体は、

事例相談者が一人ではできない、

事例相談者主体となった面談の適切な振り返りに繋がっていきます。


結局それは、

事例相談者の発言を促進させることに繋がりますし、

何より、その時の居心地はよく、

安心して自分の考えを言葉にすることができるようになります。

 

事例相談者はより適切に思考を巡らせることができ、

自己の探求を深めていくことにもなり、

時折、事例指導者がタイミングよく合の手を入れることで、

事例相談者は専門家としての能力を十分に発揮できるようになっていくのです。

 

なお、これはカウンセリングスキルに相当する場面だと思いますが、

事例相談者にカウンセリングを行うわけではありません。

 

これも気をつけなければならないことで、

クライエントへ提供する面談と事例相談者との面接は目的も役割も全く異なります。

 

時折、

《事例指導やスーパービジョンって、

結局、カウンセリングするのと一緒でしょ!》

 

ということをおっしゃる方もいるようですが、

これは全くの誤解です。

 

面談の基本的なプロセスと、

その面談の目的がごっちゃになっている方は、

今一度、丁寧に理解を深めていく必要があると思います。

 

事例相談者との面接において、

事例指導者は指導の面接の終盤になればなるほど、

事例指導者側からかける言葉は少なくなっていくようなイメージが大事な面があるのかもしれません。

 

要は、

それほどに事例相談者が自発的・積極的に自身が提供し得るキャリアコンサルティングを語ることができていく感じです。

 

事例指導者が事例相談者の問題を解決していくわけではないことを、

改めて認識しておきたいですね。