12月13日の試験から10日間以上が経ちました。

既にご自身の解答を再現されながら、

内容の振り返りを行なっている方もいらっしゃるかと思います。

 

今回より、少しづつではありますが、

第10回1級キャリアコンサルティング技能検定の実技論述試験の論述問題について、

ひとつの視点でポイント等を考えて記していきたいと思います。
 
来年2月に面接試験を控えていることもありますので、
面接試験に関する記事も交えながら、ゆっくりと進めていきます。
 
振り返りのお役に立つところがあるかもしれませんので、
お手隙の際に少しづつ読んでいただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
 
第10回1級CC論述試験での事例は、
数年前にこの試験を受検されたことのある方、
また、古い過去問をお持ちの方は少し驚いたかもしれません。
 
私は、技能検定試験の公式ホームページでの過去問の公開をみて
『こういうこともあるのだな』
とそれなりに驚いたものです。
 
以前、受検した時の事例に似ている???
 
受検された方々からも
「びっくりしました」
というような声がいくつか届きました。
 
ただ、試験会場ではすぐにスイッチを入れ換え
《事例に注目することではない》
と改めて考えることができれば、
フレッシュな気持ちで事例記録を扱うこともできたのではないかと思います。
 
そもそも数年前の問題を知らずに取り組む方にとっては、
新鮮なケースでもあるわけです。

試験においても同じ事例などないと私は思っています。
 
さて、以前私の記事に
事例に登場する人物や組織などを書き出しておくといいかも…
ということを書いたことがあります。
 
その理由としては、後に、
 
事例相談者が相談者の支援につながるものや、
また、組織等との関係性や問題等をうっかり忘れていた…
 
ということがないようにする効果もあります。
 
予め整理してメモしておくと、
何かしらの手掛かりがプラスαで見つかることもあります。
 
事例相談者:女性(40歳)相談歴2年
相談者A:男性(53歳)
 
大学進学を機に上京。
田舎の実家には両親が二人で暮らしている。
現在の会社(都内のオフィス事務機器・情報機器販売会社)で31年間働き、
現在4名の部下を持つ営業課長(法人営業として30年の経験)
専業主婦の妻(51歳)、大学2年生(20歳)の長男、高校2年生(16歳)の二男がいる。

 

相談者Aに関係する登場人物や関連ワード等

 

・就職して31年 営業課長(仕事も順調で人間関係も問題ない)

・妻

・長男

・二男

・実家の足腰の弱い父親

・実家で困っている母親

・今の仕事

・4名の部下

・上司

・田舎での新しい仕事

・二男の友達

・二男の進学

 

この相談者Aの来談経緯は、

 

「田舎の実家にいる父親の足腰が弱くなり、

母親が困ってしまっているので実家に戻ってやりたいと思うものの、

他にも気になることがあり相談に来た」

 

ということです。

 

「仕事のこととかいろいろ気になることがありまして…」

 

という相談者Aの発言を記録に記しているところも大切なポイントだと私は感じます。

 

私のひとつの視点ですが、

 

例えば、

 

キャリアコンサルタントは40歳の女性(相談歴2年)、

そして、相談者Aは53歳の男性で31年間企業に勤めてきて管理職。

 

人間同士ですから、

こうしたプロフィール概要での初対面の人同士での会話で、

どのようなことが起きているのか、それなりに影響するものです。

 

相談者Aからの

「仕事のこととかいろいろ気になることがありまして…。ちょっとご相談してみようと思って参りました」

という発言を記録に残していますよね。

 

このような言葉を選ぶ心境ってどうでしょうか。

 

そしてその後、40歳のこのキャリアコンサルタントから

 

(そうですか、それは大変ですね。気になっているのは、お仕事のことですか)

 

と問いかけられています。

 

ひと回りも下の女性にそのように問われたとき、

どう感じるかは人それぞれ。

 

しかし、もし性と年齢、

そして経歴等に意味合いを含んでいるとすれば、

実践的に考えてもそれらを踏まえたかかわりをすることもあります。

 

(お仕事のことですか)

と最初に仕事に焦点を当てられたら

相談する側にとってとりあえず「はい、今の仕事と向こうでの仕事の両方です。」と答えることがメンツを保てる一番の応じ方なのかものかもしれません。

 

何をここで書きたいかというと、

最初から弱い自分を本音で曝け出すようなことはできないものです。

特に、相手の性別や年齢等次第でそれが変化することもあります。

 

本当に相談したかったことがなんだったのか、

そんなことは相談者Aに直接聞いてみなければわかりません。

 

しかし、

事例相談者が記録に記した内容から読み取れることもあります。

 

そうした点を大切に扱い、

事例相談者を通して事例を把握していく、

さらには事例を事例相談者はどのように捉えているのか分析していく、

こうしたことを合わせて問いに臨んでいけるといいと思います。

 

ただし、以下のような点ばかりに注目してしまうと、

事例相談者が不在になった状態で、

相談者Aの問題を事例指導者が勝手に作り上げてしまうことにもなりかねません。

 

一例として挙げてみますね。

 

・大卒後、現在の会社に就職して31年、現在営業課長で4名の部下がいる。

→ 本人が仕事をしてきてこだわって来た点やどんな思いが仕事にあるか。

これまでの仕事人生とその他の役割との関係性や意味合い、そしてこれからも大切にしていきたいこと等。

 

・職場では仕事内容も人間関係も特に問題はなく順調に仕事をしている。

→ 会社組織においての相談者A自身は、役割や責任をどのように自覚しているのか、

この先のことは何か考えているか、例えば部下の成長等、仕事の継承等についてどのような考えがあるのか。

 

・実家の母親から電話があり、父親の足腰がますます弱くなり母親一人では世話が大変。車の運転も出来ず、母親が買い物等で困っている、この先が心配なので実家に戻ってきて欲しい言われた。母親がはっきりいうなんて余程心細いのだろうと思う。すぐに戻りたい。

→ 先ず一度実家に戻って状況を把握してくることは良いのではないか、

会社を休んで現地に行き状況を整理出来るようにすることが大切ではないか。

 

・兄弟はいないので、かねてから両親のことが心配だった、これを機に戻るほうが良いと考えている。

→ 実家に戻って相談者Aと母親だけで今後の父親のサポートは出来るだろうか、

外部資源の活用などは考えられそうか。

 

・実家に戻るとなると、今の会社の営業所等が実家近辺にあるわけではないので、異動申請を出すわけにもいかず会社を辞めるしかない、

また、実家に戻って新たな仕事があるかどうかわからないが、自身のキャリア(法人営業歴30年以上)を活かして収入条件を下げて探せば生活費も安くすむので何とかなるだろうとは思っている。

→ 生活基盤はどうなるのか、家族の生活はどうなるのか、職場は困らないのか、

実家周辺の労働市場はどうか、二重生活になった場合の生活費は理解出来ているか。

 

・上司に相談したところ、急に後任は見つからないし、そんなに焦らずとりあえず休日をとって実家に戻ってみたらと言われた。

→ そうすることで相談者Aにとって何が問題となるのか。何が納得できないことなのか。

 

・家族に話したところ、妻は子どもたちのことを考えると引っ越しは考えられない、

二男は友人と離れることは嫌だし進学にも影響するとも言っている。

→ 実家に引っ越す前提でしか選択肢がないのか、

両親のサポートは他にも色々考えられる選択肢があるのではないか。

 

・何としても早く実家に戻りたいが、会社も家族もなかなかわかってくれない。

→ わかってくれないわけではないのでは。思い込み、視野狭窄。

 

・事例相談者(キャリアコンサルタント)に相談する前に相談者Aが自分で考えていたことと相談での結果がほぼ一緒なので、

やはり単身で実家へいくという方向で進めてみたい。

→ 自分で考えていたことに自信があったわけではない。

気になることがあるから来談したわけだが、その気になることは果たして解消しているのか。

 

あくまで例えですが、

こうしたことはキャリアコンサルタントの方であれば、

ある程度感じることではないかと感じます。

 

家族との関係性や会社組織との兼ね合い、

田舎での暮らし方や本人のキャリアプラン、ライフプラン、経済的な視点等々、

キリがないほどいろんなことが気になりますね。

 

上記のような視点に留まって相談者Aの問題、

また、事例相談者の対応の問題として、あれこれ複数挙げたところで、

本来の事例相談者の成長支援につながるのだろうか…

 

と考えてみるとどうでしょう。

 

父の状態に母の心細そうな様子等からして、

他に兄弟がいるわけでもないので、

自分が真っ先に実家に戻りたいという気持ちがあること。

 

実家に戻る場合は今の会社を辞めなければならないこと。

実家での転職先への手掛かりが全くないこと。

給料のダウンは仕方ないと覚悟をしていること。

 

今の職場に長年勤めてきて、

現在は課長として4名の部下もいて仕事が順調だからこそ、

仕事への責任感も思い入れもありそうなこと。

上司にすぐに相談したこと。

 

妻や息子の事情も考えていて葛藤があること。

家族にもすぐに相談をしていること。

 

相談の結果、会社の上司も家族も理解してくれないという状況。

こんな感じの相談者Aの状況等を纏めてみると、

この事例相談者が掴んだ相談者Aの主訴が表現出来ると思います。

 

相談者は、

キャリアコンサルタントから的確なタイミングで悩みの本質を言語化してもらえると、

《この人はわかってくれている》

と理解してくれたという安心感を得られるものです。

 

このように検討してみると、

この事例記録の【所感】に記されている

 

・相談者Aが訴えたことをしっかり捉え、相談者Aの問題が明確になった

・実家での仕事の探し方についてどうアドバイスしていけばよいか

 

というような事例相談者の自己評価の視点は皆様ならどう評価するでしょうか。

 

諸々書いてみましたが、

このように考えていくとこの論述問題となる

 

『問1』の相談者Aについての問題

『問2』の事例相談者の対応の問題

『問3』の相談者Aへの適切な対応方法

 

がイメージできます。

 

それを事例相談者の成長と重ねていき、

事例指導者の自己満足にならないように表現をしていきたいところです。

 

ひとつの実践的な考えや捉え方に繋がるように書いてみました。

 

次回は、この事例を使って問1についてより具体的に解説してみます。