目の前の人のキャリア発達を目的とした支援にあたるとき、
私たちがキャリアの専門家として学んでいる知識やその技法をその人に使うことよりも、
その人との関係性の確立の方が重要であることは長年の多くのカウンセリングの研究で実証・報告されています。
(Lambert,1992、Cooper,2008)

〈キャリア支援とカウンセリングは違う〉
と思われる方もいらっしゃいますが、
キャリア発達支援にはカウンセリングが必須です。

相談する側にとってのカウンセリングニーズはこれといったものはなく無意識的・意識的、
且つ無数に存在するでしょう。

そして、
話し合いの際の主導権は相談者側にあり、
キャリアコンサルティングや事例指導面接を提供しようとする人の側の勝手な判断で助言等をすることは、
目の前の人が自分自身を知ること、
自分を見つめ直すことを阻害することにつながってしまうことが多くあります。

いわば、
相談を受ける側の専門的(専門的といえないかも…)な分析などは不必要とも言える面があるわけで、
そんなときに私たちができることは、
目の前のその人の見方や考え等をそのまま反映していくことくらいでしょう。

それは、
その人が言葉に言い表すことができないことをも含め、
背景にあることを理解し言語化していくことで、
その人にとっての「この人に相談してよかった」というフィット感が生まれてくるのではないでしょうか。

この状況になって初めて他者と交わること、
他者からの刺激を受け、
その考えを取り入れてみようと成長できる。

この記事でメッセージしたかったことは、
どんなに経験のあるベテランのキャリアコンサルタント、
または、
キャリアカウンセラーであっても、
そのベテラン域での発想が実際には目の前の人には通用しない、
その面談が価値を生み出さないこともたくさんあるということです。

いくら凄い知識や技能があっても…
それは人を癒さない。

目の前の人と対等であることがどれだけ大切か。
対等であるということは意外と難しいものです。

1級キャリアコンサルティング技能検定試験の実技においても、
実はそんな点がひとつの大事なポイントにもなるのではないかと思います。

真の問題を一番よく知っているのは相談する側です。

だからこそ、
私たちは事例相談者と向き合ったときどんな振る舞いをすることが重要なのか、
これは個々での人間観があらわれるのではないでしょうか。

キャリアの支援に関し、
有資格者側が何か凄い特効薬を持っているわけではないのです。

何より先ず悩んでいる人との関係性の確立が、
相談する側にとっての最良のビタミン剤なんだと思います。