事例指導の面接では、事例指導者は、
基本的に事例相談者の面談にダイレクトにアクセスすることはできません。
これはスーパービジョンでも同じことになります。
わかっている者(わかっているつもり…かも)、ベテランにとっては、
非常に歯痒さを覚えることが多いと思います。
しかし、
少し事例相談者の目線から考えましょう。
ただえさえ、
事例をまとめて持ってくる側(相談をする側)にとってみれば、
緊張と不安を抱いていることもあり、
事例指導者にそのつもりがなくとも、
二人の関係の中において、どこか自分が低い立場にいて、
ある程度、事例指導者に従属せざるを得ない場にあることを認識していることがあるのです。
これがマイナスに働くこともあれば良い方向に働くこともあります。
良い面で考えると、
「指導で指摘されたことは抵抗があったけれど、でも考えてみれば、そうすることもできたのかな…という気づきが生まれた。」
仕方がなく受け入れてみたというきっかけから自身の成長につながることもあるのです。
ただ、抵抗感があったことは意外と忘れられず、
次に来ることを躊躇してしまう場合もありリピートできなくなることもあります。
これはマイナス面とも言えますね。
事例相談者がこうした状況等(人によって様々)にあることを忘れ、
事例指導者が事例相談者の事例に直接入り込もうとすると、
実は、
事例相談者にとってみれば、自分の立場を尊重してもらえないことや、
背景を知らないのに土足で踏み込んでくるその関わり方に、
心外であり、居心地の悪さや腹立たしさを感じてしまい、
表情が一変して硬くなることがあるのです。
※人によって異なりますが、事例指導を受ける際、
初めてお会いする事例指導者に対して、その多くはその人なりのストレス等を抱いているものです。
事例指導者からすれば、
〈十分聞いた上で良かれと思って軽くアドバイスしたつもりなのに…〉
〈そんなつもりで言ったんじゃないのに…〉
〈別にダメだとは言ってないのに…〉
と、要は過剰反応だよ!と感じるのかもしれません。
以前もこのブログで書いたことがあるのですが、
事例相談をする側は、
どうしても面談の大事なところを省いて報告をしたり、
また、
本人が無意識なまま、
大事なことを報告しなかったりすることもしばしばあります。
それは事例相談者のスキルだったり価値観だったり、
様々なことが背景にあることでしょう。
そうしたことを考えるだけでも、
事例指導者が、
事例相談者からの事例の報告だけに頼って、
事例をわかったような感覚になってしまうことは危険です。
勿論、事例相談者の面談を事例指導者がライブで観察できる場合や、
録画などで確認できる場合は、比較的正確に面談を捉えやすいかと思いますが、
そのような環境条件を整えることはなかなかたやすくはありません。
事例のあれこれを確認することが無駄だとは書きませんが、
事例指導者は、
事例相談者の面談には直接アクセスできないことを踏まえておく必要があり、
それよりも、事例の中で事例相談者がどうしてその部分を説明報告するのか、
事例相談者のその気持ちや考えをわかろうとする方が、
よっぽどリアルな面で一緒に検討していくことができるのではないでしょうか。
大事なところを省いている、忘れてしまっている、
気にしていないという事例相談者に対して、
事例指導者が指摘をしていくことよりも、
事例相談者が自ら報告してくれているところにどんな意味を持つのか、
事例指導者はそうした点を大切にして関わっていくことが、
結局、詰まるところ、同じ重要ポイントに行き着くこともあります。
事例指導者は、ついつい
〈そこ!そうじゃないでしょう…〉
〈あぁ…そこはもったいない、ダメだな…〉
みたいな、どこか上から目線で関わってしまいがちです。
現場を知っているからこそ、
どうしても面談自体に注目してしまいたくなるのですが、
その葛藤を乗り越えて考えていきましょう。
ここに書いたことは、
1級キャリアコンサルティング技能検定実技試験で役立つことにもなると思いますが、
実際の教育現場や組織等においての人材育成においても指導者の大切な姿勢と力になると思います。