1級キャリアコンサルティング技能検定の面接試験30分間で、
《事例相談者のお話を聴くことが大事なのはわかるが、
ただ事例相談者のことを理解しようと聴き続けていても時間が過ぎてしまうだけではないか。
事例指導者から問題を示さなければ何も解決しないのでは…》
こうしたことを考える方は多いのではないかと思います。
聴くということは、
単に聴くことではないと私は思います。
私たちは事例相談者の事例を通して、
事例相談者が、その場面その場面で何をどう考えたり捉えたりしているのか、
できる限り正確にキャリアコンサルタントとしての事例相談者をわかろうとする努力が必要です。
そうすれば、極自然体で事例相談者が考えていた方策をより良いものにするための戦略が浮かび上がります。
その戦略は常に相談者にどんな効果が期待できるのか、
仮説を立ててより良い解を求めていくのです。
ただ聴いていれば良いわけではなく、
聴くことは、より適切な質問や確認を行うことも聴くことなのです。
その質問や確認は、
相談者を主語にするのではなく、
目の前にいる事例相談者を主語にしたものがより良いのでしょう。
要は「今ここ」を大切にします。
《その時、相談者はどんな気持ちだったのでしょうね?》
《相談者はどんな感じでしたか?》
等々。
こうした質問は何を言いたいのでしょう。
何か目の前にいる事例相談者の能力や感性を試しているような…
そんな感じにすら聞こえることがあります。
私が日頃から気をつけていることは、
事例相談者がどのように捉えたのかを大切に考えます。
例えば同じ意味合いの質問でも、
「〇〇さんはその時、相談者の気持ちをどのように捉えたのかを教えていただけますか」
「〇〇さんは、相談者の表情等から何を感じられたのでしょうか」
という具合で質問をすると思います。
こうした質問も、きちんとその前に聴く姿勢が積み重ねられていることが絶対的に大切だと私は考えています。
ただ聴くだけでは何も解決しないでしょう。
聴くことはとてもダイナミックな内面的対話です。
そして事例指導者が捉えた問題以外にも問題はあるわけで、
事例指導者が主役ではなく、
事例相談者が考える問題、気づいたことを主体にして面接が進む方が優先だと思います。
その問題や気づきは、
事例指導者も事例相談者から気づかされることがあるのです。
しなやかな思考が大切です。