今回は事例相談者への質問力に繋がるお話しを私のひとつの視点で書いてみたいと思います。

 
1級キャリアコンサルティング技能検定の面接試験などでもお役に立つ内容です。
 
キャリアコンサルティングの基本には傾聴技法がありますが、
その効果的な使い方は相談者の状況などを踏まえ様々です。
 
但し、体系化されたことを正確に理解し、
状況に応じて網羅的に展開・整理できる力を高めていけば、
傾聴技法だけでも多くの相談者のお役に立つことが可能になるといえます。
 
よく
《聞いてるだけで相談者の問題が解決出来るのか》
といわれる方がいらっしゃますが、
その人が言っていることはどんな聞き方を指しているのでしょうか。
 
傾聴とは、
単に相談者のお話しをそのまま聞くだけではなく、
相談者から言語や非言語で発せられた情報をキャリアコンサルタントが整理しながら、
相談者の思考、感情、行動に焦点を当てて、
開かれた質問をしたり、言い換えて伝えてみたりして相談者の内面を明確化していくことでもあります。
 
謂わば積極的な姿勢で聴くということになります。
 
積極的な姿勢で聴くということで特に気をつけたいことは、
相手の話を批判しない、
自分の考えを押し付けない、
配慮できる、
などが挙げられます。
 
こうした基本的なことは頭ではわかっていても、
実際に現場で実践できているかというといかがでしょう。
 
私はできていないことがありますし、
事例記録をおこしてみて自分の未熟さに気がつくことがあります。
 
傾聴技法のひとつの基本的なことを書きましたが、
これは相談者とキャリアコンサルタントの関係だけにいえることではなく、
事例相談者と事例指導者の関係でも同じことがいえます。
 
先ず、
事例相談者が事例指導を受けるために事例をまとめてきたとします。
 
この事例相談者は前述したような傾聴技法が適切にできていると思っているのでしょうか。
 
こうしたことを考えるとき気をつけたいことは、
事例指導者の視点で相談者がどう思っているかではなく、
この事例相談者は相談者がどう思っていると考えているかです。
 
また、この事例相談者は事例の中で何か気になっていたり考えていることがあるのでしょうか。
そうであればそれはなんでしょうか。
 
事例相談者から発せられる情報を事例指導者は積極的な姿勢で聴くということが重要なことです。
 
そして、
ここでは質問力の点を掘り下げて考えてみます。
 
事例指導者は事例相談者に対してあれこれと情報を出すことはナンセンスであり、
その良かれと思って出した情報が、
ときには事例相談者の思考を邪魔して混乱させたり鈍化させてしまったりすることがあります。
 
あくまでイメージですが、
事例指導者からは極力情報を出さずに、
とにかく事例相談者の言語・非言語に注目しつつ、
必要なことだけを確認、質問していきます。
 
この確認や質問ですが、前述した通り、
今ここにいない相談者やその周囲の人や環境を主語にせず、
事例相談者を主語にしたものが重要です。
 
それは目の前の事例相談者の成長を促すかかわりがここではとても大切なセッションだからです。
 
今ここで、
事例指導者の価値観や哲学的なもので考えた100点満点の対処を目指すのではなく、
事例相談者がより良い面談を主体的に考えて啓発的経験ができるようにガイドしていくことが大切なのです。
 
質の高い質問力は、
開かれた質問を闇雲におこなうことではなく、
事例相談者の意味を持つもの(変化に繋がる発言など)にフォーカスし、
事例相談者の思考や感情や行動に関する点に開かれた質問で触れていくことで建設的な発想が生まれてきます。
 
「少し…沈黙があったんです」
 
(それを〇〇さん「事例相談者のこと」はどんな意味合いに捉えたのでしょうか)
 
(〇〇さんはその時どんなご気分だったのですか)
 
(〇〇さんはそこでどのようにされたのですか)
 
例えば、
上記の3通りのように思考、感情、行動のどこにアプローチしても、
事例相談者は考えるきっかけができます。
 
多面的に視点を変化させ、
生きた言葉たちを集められることで、
事例相談者は自身の考え方や行動イメージがしやすくなり、
「こうすればこうなったかもしれない」
「今考えなおしてみると聞いてみればよかったかな」
「あの時は相談者のためになると思って応援したくなってたかな」
「良かれと思って伝えたけど少し強引だったかな」
等々、
事例相談者の潜在的な思考行動能力や感情が引き出されていくリアルなセッションが成立します。
 
このダイナミックな変化の種みたいなものが、
まさに事例相談者の気づきや成長に繋がり、
事例指導者にとっても目の前で起きた事例相談者のその変化のプロセスに学びを得られることは勿論、
この上ない喜びとやりがいを感じることでしょう。
 
書けばキリがないほどに沢山の事例が浮かびますが、
事例相談者が自分で知らぬ間に作ってしまっていた準拠枠みたいなものを、
質問力によってとき解くことが出来るのです。
 
そしてその質問力には、有効な開かれた質問を行う必要がありますが、
その発する言葉の細かなアクセントやイントネーション等によっても、
開かれた質問の効果の有無は180度異なってきます。
 
事例指導者はそうした基本的技術を常に研く場を持とうとする努力が必要で、
そうしたことを日頃から考える指導者と考えていない人では、
事例相談者、そして結果相談者への支援に影響が出ることを忘れてはいけません。
 
一日のどこにこうした学びの時間を充てるかはその人次第ですが、
1級の面接試験では、こうしたことも自然に出来るように訓練すると良いですね。