1級キャリアコンサルティング技能検定の論述【必須問題】について、

今日は問3を検討してみます。

 

問3 あなたが、この事例相談者の立場なら相談者Aに対してどのように対応するか、あなたの考えを記述せよ。

 

 

この問いの内容を読んで、

 

《どこまで記述したらいいのか…》

《解答に何を求められているのか…》

 

など、

質問自体に掴みどころがない…というか、

モヤモヤした感じのまま記述の練習をしていたことを覚えています。

 

そのような自分の状態で1級受検の準備に取り掛かり、

記述練習では、

私が相談者Aの担当キャリアコンサルタントと仮定して、

 

《この面談はこう見立ててこう進めるべきではないか…》

 

というような視点で、

あたかも私が相談者Aのことを知っているかのようなつもりで、

相談者Aとの面談戦略を立て、解答する練習をしていたのです。

 

 

ここでは事例を使っていないので抽象的な表現しか出来ませんが、

 

「相談者Aに対してどのように対応するか」

 

という問いに、

例えば、

 

・来室いただいたことを労うなど相談者Aを受け止め、倫理面を伝えて安心安全な面談場面を提供。

 

・訴えている問題に焦点を当て共感的に理解し、感情等が付随する点を拾って事柄と気持ちの結びつけをしながら相談者の自己開示を促して不安定な感情を安定化させていく。

 

・相談者Aの論理的な思考を引き出しながら、より良い適応や行動等がどのようなものになるか、問題の本質を整理し共有した上で解決のための具体的な目標設定と合意を得る。

 

・目標達成への意欲を確認し、意思決定、行動方法など話し合い提案、行動変容を支援。

 

・お互いに今回の面談評価を行い問題点の確認や面談終了が出来るか等を確かめ終了。

 

というような感じのことを、事例に合わせて記述していくとします。

 

概ね、

システマティックアプローチを取り入れたキャリアコンサルティングにみえますが、

このような記述では、恐らくどの論述試験の必須問題過去問でも、

記述内容が似たようなものになってしまうと思うのです。

 

これでは、

1級の試験で通用するのだろうかと不安になりますよね。

 

受検者の方々が同じような視点を持ち、同じような解答記述になってしまいます。

 


私もこのような書き方の練習をしていて、

どうも物足りないというか、

 

《この試験では、このようなこと(私のプレイヤースキル)をただ問われているだけのか?》

 

という疑問に駆られました。

 

”そんなわけない…”

 

そう疑念を抱いていましたが、

どうもどうしていいのかわからない。

 

この問3の考え方を、

2級技能検定試験の論述問題の問3の解答と同じような捉え方で記述するイメージから抜け出すことが出来ないことがありました。

 

そんな時、

カウンセリングの学び仲間からの情報を得て、

対人支援職のスーパービジョンを研究している方にお会いすることが出来、

トントン拍子に、その方のスーパービジョンライブを見せていただく機会を得たのです。

 

このタイミングは、

第3回1級キャリアコンサルティング技能検定が実施される数ヶ月前の出来事でした。

 

ライブ後、

振り返りのトークセッションも行われ私も参加させていただきました。


この時の事例を提供したバイジーのキラキラとしたやる気に満ちた眼と笑顔は忘れられません。

 

この経験が、

これまで私が払拭出来なかったモヤモヤ感の解消に繋がったのです。

※一緒にセッションを観察していた方々も笑顔に満ちていたというか、

各々自身の仕事のあり方を純粋に振り返っていた状況でした。

 

事例指導は、

プレイヤーとしての能力を事例相談者にみせる場ではなく、

事例相談者の前で、職人技をみせることでもなく、

また、事例指導者が答えを出すものでもなく、

更には、事例指導者の方針で支援者との面談を進めていくものではないということ、

事例指導者は事例相談者の能力を引き出す黒子のような機能を持つのだと意識しました。

 

勿論、目的が異なる指導も存在するわけで、

どんな指導スタイルが良いかは、

事例指導者になる方が学びを通して確立していけることです。

 

お話が遠回りしたかもしれませんが、

 

問3 あなたが、この事例相談者の立場なら相談者Aに対してどのように対応するか、あなたの考えを記述せよ。

 

この問いの私の考え方(この問いは単独ではなく、問1~問3まで連動している前提です)は、

 

・この事例は事例記録であること(2級の事例は逐語記録)

 

・この事例相談者が指導を受けるために提供してくれた事例であること

 

・この事例相談者の問題を指摘や除去をするのではないこと

 

・この事例相談者のより良い適応と行動を目指すこと

 

・この事例相談者の気づきや発達、成長を支援していくこと

 

これらの考え方に基づいて、

 

事例相談者が隣の部屋で私のセッションを勉強の為にみてくれていると仮定し、

基本は、事例相談者の戦略のまま、どの点をどうすればより良い面談になりそうか

そんな点を大切にして、「どのような対応をするか」を記述するようにします。

 

ポイントは、

 

●問1で相談者Aの問題把握(CL視点・CC視点)を既に検討

●問2で事例相談者の良い点を伸ばすための改善点を検討

 

これらを前提に問3を検討することが出来れば、

隣の部屋でセッションをみてくれている事例相談者は、

事例指導者の対応内容にきっと身を乗り出してくるのではないでしょうか。

 

『自分にも出来そう!!こうすればよかったんだ!』

とやる気に満ちることでしょう。

 

逆に、事例相談者と全く異なる戦略を行う事例指導者だった場合、

その戦略がいくら素晴らしいものだったとしても、

隣の部屋にいる事例相談者は、自分のスキル不足等にがっかりしてやる気を失うかもしれません。

 

事例指導者が、

「どうだ!すごいだろう」

と言わんばかりに、素晴らしいセッションをしたところで、

事例指導の目的からは大きく外れることもあるわけです。

 

こうしたことを勘案すると、

事例指導は様々な面で奥深く、

あらゆるキャリアコンサルタント(事例相談者)が考えるクライエント支援策について理解が出来、

その理解を事例相談者の意欲へ繋げる指導者としての器量・技量が必要になると思います。