昨日は、

キャリアコンサルティングの事例指導プロセスを、

企業内で管理職研修等に取り入れている私の事例に少し触れてみました。

 

また、その経験等を活かし、

1級キャリアコンサルティング技能士の試験に臨んだことをご紹介したのですが、

今回の記事では、実際の事例指導や事例指導のトレーニング(ロープレ等)を実施する際、

私が工夫している点等を書いてみたいと思います。


読者の皆様の中で、

なるほど…とお感じになられる方は是非、やってみられても損はないと思います。

 


以前、このブログでご紹介させていただいたこともあるのですが、

私は、事例指導のロープレの練習自体は、普段、出来る環境がありませんでした。

 

周囲に気軽にお願い出来る方がいるわけではないですし、

また、例えば某団体で開催していただけるスポットの講座に参加させていただいても、

一部の方とネットワーク構築が出来ても、遠方の方だったり、

また相手の方も忙しかったりで気を遣いますので、

「ロープレやりませんか…」

などと声はかけられませんでした。

 

特に1級を受検するということは、

普段、周囲へ知らせず、コツコツと勉強を進めていたこともあり、

事例指導のロープレの代わりに、一人でイメージトレーニングを常に行っていたのです。

 

勿論、学びの仲間がいることは良い事です。

 

私の場合は、日頃から出張が多く、ほとんど自宅に不在の状況ばかりなので、

現場で実践することと、一人でイメージトレーニングすることがベースになりました。

 

だからこそ…という面かもしれませんが、

 

部下との人間関係や指導等に悩んでいる方がいらっしゃったとき、

その人の気持ちを聴くということ、

その人の立場に立って本気で理解していこうとする姿勢、

理解出来た点を私の言葉で伝え返していくこと、

それらの意味がキャリアコンサルタントへの事例指導のイメージトレーニングにリアルに重なりました。

 

今日、特に意識して書いてみたいことは、

「相手と予感を共有」するということです。

 

何でもいいと思うのですが、私の場合、自分の仕事を通して、

その仕事に関係する方とは、特にコミュニケーションを取ることに努めていました。

 

見過ごさない、少しでも気になったら言葉をかける、

態度でコンタクトを取る等、

そして、聴く姿勢に努める訓練をイメージで行っていました。

 

事例相談者が事例を持ってきて悩んでいます。

事例相談者へどうしましたかと訊ねれば、当然、事例相談者は事例を説明し始めます。

 

その時、

事例を理解するために質問する人と、

事例相談者を理解するために質問する人と、

自ずと質問内容が変わると私は思うのです。


極端に表現すると後者の方が事例相談者にとって心地よくお話が出来ます。

 

このストローク次第で、

「予感の共有」が出来るか出来ないか、

相当な影響がある気がします。

 

”この人とこれからずっと学べそう”

”この人となら一緒に何か出来そう”

 

このような予感が共有出来るとチームが成り立ちます。

 

事例相談者の気づきを促していくことや問題を共有化するところは、

前回の記事で触れていますので、

今日は、その予感の共有が出来ているからこそ、

成り立つ目標設定を考えてみたいと思います。

 

事例相談者を理解するための質問が出来ると、

事例相談者の考え方、思い等が明確に理解出来てきます。

 

その考え方を大切に受け止められ、また、指導者側の姿勢として、

事例相談者のその捉え方を、自分自身の学びに変えられる方は、

事例指導をやっていて自身も気づきがたくさん生まれる事でしょう。

 

そんな事例指導者の姿勢に、

事例相談者は感激することと思います。


私はそのような事例指導者に恵まれていると思いますし目指しています。

 

素直に、

人の存在を尊重する視点で、プロとプロという世界の中、

特に相手の考え方などを自分の学びに変えられる人はやっぱりすごいです。

 

但し、お互いに励まし合っているだけではちょっと勿体ないですね。

そんなプロ同士が、単にお互いの良い点を称え合っていたところで、

クライエントへの更なるサービス提供力には繋がりません。

 

このプロセスが「予感を共有」するということになるのではないかと私は思うのです。

 

『もっと良い面談に出来ないだろうか』

『ここはもう少しこうしたらいいのではないか』

『もっと良い技法はないのだろうか』

 

等など。

 

2名のこのチームは、

事例相談者の事例を通してプロ同士でより高い価値提供を考えていくのです。

 

さて、

元々、問題や悩みを抱えていたのは事例相談者だったわけですから、

このセッションを通じて自然体で事例相談者から、

 

《ここ…もう少しこうすれば良かったかな…どうだろう?》

 

とより良い面談にするための積極的な気づきを訴えてくれます。

※勿論、ここまでの指導関係性が成り立っていなければそうはいきませんが…。

 


事例指導者は、その気づきを更に深めるため、

「そうすると、クライエントにどんな変化が生まれそうですか?」

と仮に質問します。

 

《…クライエントは感情を吐き出すことで少し冷静になれて、物事を論理的に考えることが出来たかも…》



 

「いいですね…すると今ならどんなかかわりや働きかけが考えられそうですか?」

 

《ここでこんな目的で質問を投げかけて、クライエントの考え方が聞けたら、またあんなこともこんなことも考えられたかもしれません…》

 

「私もそのかかわりや働きかけは凄く良いと思います。他の事例ではそのように意識されていますか?」

 

《…いや、意外といつも今回と同じような感じがあるかもしれません…》


「例えば、どのような時ですか?」


〜中略〜

 

「今気づいた点は、さっき一緒にみてきた面談プロセスの中でいうと、どこに当たると思いますか?」

※関係構築、問題把握(CL視点・CC視点)、対処(目標設定、方法企画提案、実行、評価)を示しながら…

 

《CC視点…いや、今思えばクライエントの悩んでいることを深くは聴けていないので、

CL視点もかな…》

 

「クライエントのことを想っているからこそ、そのようなアドバイスをされたんですよね。

私も同じような感じで考えることがあるんです…。

今回の指導面談では、今の気づきを活かしてもう一度この事例で面談の進め方を一緒に考えてみたいと思うのですがいかがですか」


《はい、お願いします!》


「特に問題把握の点を明確にしていけるように意識して働きかけ方を考えてみましょうか。」



〜イメージトレーニング終了〜

 


以上で目標共有のところまでイメージしてみました。


《おいおい、問題把握でCL視点がダメなら傾聴もダメで、関係構築じゃないの?》


なぁんて指摘の声が聞こえて来そうですね。


それはごもっともかもしれません。


事例指導者がどこにフォーカスするのかは、

決まったことなど何もないと思うし、

それならその視点で事例相談者への効果的な成長支援を企画していけばいいと思います。


これらは事例指導者の裁量に任される面があります。


だからこそ、

事例指導者は事例指導の事例指導を定期的に受ける必要があります。

 

あくまでも私のひとつの進め方なのですが、

部下育成に悩んでいる管理職の方がいらっしゃったときも、

 

最初にコミットメントすることの中に、

その方に事例を簡単に作成してもらうことがあります。

 

事例を作成するのが負担になる方には、

特に強制はしていませんが、

やはり、自分の事例を作成することで、

本人自身が振りかえり気づく効果があるので、

出来るだけ用意してもらいます。



そして、キャリアコンサルティングの事例指導と同様、

最初に、事例を説明していただきながら、

その方を理解出来るような質問をさせていただいています。

 

部下への想い、考え方、捉え方などが理解出来れば、

私から伝え返し、さらにその理解一致度の精度を上げていきます。

 

その管理職の方のエピソードも伺いながら、

部下への期待、そしてやろうとしたこと、様々な視点でコミュニケーションを図り、

そして、お互いに「予感の共有」を得ます。

 

このタイミングで、お互いプロ同士、

学習同盟を組んでいこうとする意思の確かめ合いとなるのだと思います。

 

このような関係構築が出来ることで、先ほどイメージでご紹介させていただいたような、

問題点の把握と共有、そして目標設定と共有化に繋がるのではないでしょうか。

 

ここで書きたかったことは昨日のブログに重なりますが、

事例指導もキャリアコンサルティングの基本となる傾聴のイロハが大切であり、

またその傾聴も、焦点を事例相談者に真っすぐにあてていることだと思います。

事例指導の実際は、その点が最重要になると私は思っています。