1級キャリアコンサルティング技能検定試験に臨む際に、
私が念頭においていたことは、
人材育成に活用している指導プロセスを活かそうということでした。
私は、某企業の従業員育成(一部の能力開発等)を目的に研修プログラムの設計企画をして、
また実際に実施させていただく仕事をしていますが、
以前から、キャリアコンサルティングの面談プロセスを活用して研修を行っています。
※ある先生が考案された面談プロセスの見せ方を使用させていただいています。
研修参加対象者の方が、
管理監督者やマネージャークラス等の場合の研修目的は、
「部下の成長を目的にその効果的な育成方法を論理的に理解してそれを実践出来るようにする」
としています。
※事例指導者を育成する研修という意味合いです。
よって事例相談者がここでいう部下にあたります。
この企業での研修プログラムが、
キャリアコンサルティングの事例指導にも大きく役立っているのです。
研修参加者(マネージャー等)の具体的なテーマは、
『部下が担当している業務内容の事例や模擬的な事例を通して、その部下の仕事の進め方や方法、スキル等について、自己の盲点に気づきを促していくこと』
ということでベクトルを合わせて研修を進めているので、
まさに1級キャリアコンサルティング技能検定に関する事例指導と合致すると思うのです。
この研修内容は、
キャリアコンサルタントの諸先輩方の教えを受けながら事例指導について自分の考え方を整理していきました。
私が認識している事例指導は、
大きく以下3つの機能があると思います。
●管理的な機能
●教育的な機能
●支持的な機能
このうち、契約企業様との関係で、私の立ち位置からは、
《管理的》の点については、実際に介入する機会はとても少ない状況です。
それは企業内の人事機能で役割があり、介入を拒まれる面があるからです。
もう少し具体的に言えば、
私が企業内で実施している事例指導の機能として、
例えば、研修に参加された管理監督者が、部下の能力に見合った部署の配置検討や業務の選択を行い、その範囲内で部下の成長管理を行うということは、私がお預かりさせていただく方々の領域にはなり難い、かかわれないような事情があるからです。
この点は日々悶々とすることでもありますが、
私が現時点で介入出来ることではないため、
現場では割り切ってこの概念を外して事例指導にあたっています。
管理職の方々への指導で重視している点は主にふたつあり、
ひとつは、
①目の前の部下の方が、既に持っている知識や技能スキル、視点等の活用を促していくことを示唆したり、不足している点を指摘したりして課題を示し共有化することが出来るようになることです。
(教育的視点)
もうひとつは、
②目の前の部下が、仕事上で出来ていることを承認出来ること、
また弱い点にも具体的に気づき、その点の解決に取り組む姿勢や意思を励ましていくことが出来るようになることです。
(支持的視点)
これらは、
1級キャリアコンサルティング技能検定や実際のキャリアコンサルタントへの事例指導での理論や実技と一致する点が多く大きく役立つわけです。
ただし、注意したいことは、
例えば①では、
「示唆したり指摘したり」と書きましたが、
その点を目の前の事例相談者に対して唐突に実施しても効果が薄いです。
②では、
「弱い点の解決」と書きましたが、
いきなり事例相談者に弱い点を伝えても相手が受け入れられないことも多いものです。
これは、企業内でも上司が部下に突然それらのことを伝えても、
何を言われているのかわからないことが多いのです。
対人関係は指導時にもとても重要ですね。
上司による部下への指導は、
以前は経験値や思いつきのものが散見されました。
いや、
今でもその傾向は拭えませんね。
キャリアコンサルタントの世界でも多いのが現実です。
その点を考慮して良好な指導関係と効果的な指導時間を創造するには、
②の承認面を具体的に前提に置きながら、①の気づきや課題を明確化して、
また、②の取り組もうとする意思を励ましていくプロセスが最重要だと思います。
承認する点は、
具体的、且つ論理的、事実と根拠に基づいて、本人の行動を承認していくことが大切です。
承認するにも、
単に思いつきや経験則だけで承認しても、
体系的に整理されていきません。
体系的に整理して共有化することは気づきの支援に繋がり、また本人も嬉しいものです。
キャリアコンサルタントの場合、
この点の整理の仕方には、
キャリアコンサルティングの面談の基本プロセスがありますね。
システマティックなプロセスにそって、
承認箇所を含めて一緒に体系的な整理をしていくセッションが有効ではないかと私は思います。
事例相談者に気づいてもらうための質問を投げかける場合、
単に、興味本位で質問をするのでは本人の気づきに繋がらず、
どうかすると相手に違和感や抵抗感が芽生えます。
逆に、
体系的に整理された質問であれば、
その意味が事例相談者に理解出来、積極的に考えてくれます。
このプロセスを踏むことで、
事例相談者の持っている知識やスキルの中で気づくことが出てくるのです。
気づきにも色々ありますが、
単に気がついただけでは効果的ではありません。
この有効な質問と気づきを実現するためには、
事例指導者は、セッションを進めていく上で、
自分の頭の中で、指導方針をある程度設計していくことが重要です。
例えば、
《この事例相談者はこのあたりが出来ているんだから、あとこの点にこれを加えれば相談者への良き支援に繋がるのではないだろうか》
というような、
本人の現在のスキル等から手が届きそうな、
今ここでの成長支援内容です。
有効な質問の投げかけにより本人が何となく気づけたところで、
事例指導者から、その点を膨らませるイメージで、
示唆したり、不足している点を指摘して課題を共有するプロセスを進め、
今回の事例指導の中での目標と方法を一緒に決定していきます。
事例指導では、
事例相談者の問題の本質をどのように共有出来るか、
この点は、特に関門といえるのかもしれません。
仮に30分の時間の中で事例指導を進めていくのであれば、
概ね、半分程度の時間の中で、
この問題共有がしっかりと出来ている状況を目指したいですね。
但し、人と人のかかわりの度合い等、
時間ではかれるものではありませんので、
10分だとどうだとか、
20分だとどうだとか…
そういうことを書きたいわけではないのです。
30分という相手の時間をどのように充実したものに出来るのかは、
事例指導者と事例相談者の関係次第で大きく異なってくると思います。
この記事で、
何かご参考になる点や手掛かりが感じられれば良いのですが…。
次回は、この記事の続きとして、
目標設定と方法、そして実施して評価という点まで考え方を書いてみたいと思います。