今回は、相談者の職場環境への介入をイメージして記事にしてみます。
多能工化という環境改善のテーマを持ったことがあります。
この取組み効果は
・コミュニケーション
・業務効率
・情報共有
これらを組織全体で向上させられ、
結果、生産性アップと組織活性化に繋がった事例となりました。
一人のクライエントの相談から始まり、
キャリアコンサルタントとして組織に介入した一例です。
出来る社員が仕事を抱えこむ状況は職場のパワーを失います。
チームワークも悪くなり組織力の低下に繋がっている職場は多いのです。
この現象は、
人間が集合した組織には生まれやすいことで、
問題の度合いを様々な要点でフレキシブルに評価して介入の要否を検討したいところです。
職場環境の評価をしていく中で、
「新人には任せられない」
「新人が失敗すると大変」
※新人と記しましたが、経験の浅い社員として置き換えて読んでいただいても結構です。
と考えている、出来る中堅社員が目立つ組織は、
出来る人が仕事を抱えこむ現象が顕著に出ていて、
新人は学習機会が少なく、効率的な仕事の仕方がいつまで経ってもわからないままです。
出来る社員からすれば、新人に話しかける時間も惜しくなり、
コミュニケーションが貧弱で、仕事分担などがうまくいかなくなります。
新人は、問題解決能力等も低いまま、
先輩にはなかなかアドバイスを受けられる状況になく、
いつまで経っても仕事に時間がかかり、
出来る社員から見ると新人の無駄な残業が目に付くようになります。
組織全体で残業時間管理をしていく中で新人は先に帰らされます。
そうすると余計に出来る社員に仕事が集中、
管理職社員は、出来る社員に任せていれば何とかなると考えだします。
出来る社員に仕事が集中することが慢性化、
出来る社員の中にもミスをし始める社員が出始めて連鎖する現象が出てきます。
出来る社員だったはずの一部の人は、
様々なメンタル面での問題が出てくるものです。
客観的に職場環境を評価していくと、
本当にちょっとしたことが原因で大きな問題が渦巻いている状況が多いのです。
誰に明確な原因があるわけではなく組織全体の問題となっています。
これは事例の一部ですが、
クライエントの問題にかかわったとき、我々キャリアコンサルタントは、
つい個だけにフォーカスしてしまいがちで、
その相談者の能力不足と評価している場合があると思うのです。
例えば、
このクライエントが、組織の中でバリバリやってきた中堅社員だったとします。
「この相談者は少し考え方が偏っていてプライドもありコミュニケーション不足だな…」
こんな風に評価してしまうことがありますよね。
そうではなくて、もう少し目の前の人を受け入れて、
『この相談者はコミュニケーションの点で何かありそうだけど…
どうしてこのような考え方になったのだろうか。この点をもう少し話を聴いてみよう。』
こんな風に掘り下げて事情を聴かせていただいたり、
気持ちをしっかりと受け止めていったりするプロセスを踏むことが、
前述した環境問題に触れていくことが出来るきっかけを掴むことに繋がるのです。
この事例は、どこにでもありそうな相談内容に取られがちの事例だったのですが、
実は、このクライエントが抱えている問題の中には、
表面的には、コミュニケーション能力不足、思い込み、ストレス等があり、
たくさんの点を解決しなければならないとみられました。
しかし、
その大きな原因は、職場の多能工化が全く図られておらず、
その職場組織長の意識には、そのようなことは一切視野になく、
ただただそのままの環境で毎日を乗り越えていくことに精一杯だったようです。
クライエントの問題から発見が出来た職場の問題。
その組織に改善チームを設け、
多能工化プログラムを提供して、半年かけて取組んでいきました。
勿論、その改善チームには、クライエントも無理のない範囲で参加。
みるみるうちに職場の雰囲気が変わり、
ひとつの業務にたいして必ず複数の社員がかかわり仕事を責任分担できる環境を創りました。
結果、職場でのコミュニケーションは増え、定期的なミーティングも増え、
また、業務の効率化について、社員全員が何をすれば良いかがわかるようになり、
主体的に動けるようにもなり、且つ、情報共有化に工夫を凝らすようになっていきました。
組織は生まれ変わったのです。
勿論、クライエントの問題解決となったわけです。
これがキャリアコンサルティングの効果です。
生産性はこの1年間で3倍に伸長、社員定着率100%、
一人のクライエントの面談から始まったひとつの物語です。
昨年から私はキャリアコンサルティング技能士の育成に繋がる講座をスタートしています。
その想いは、常に現場で活かせる本物の視点を研いて欲しいと願って、
検定対策講座を実施しています。
技能検定の試験現場は、
実際のキャリアコンサルティングであり、また、事例指導なのです。
日頃、キャリアコンサルタントとして活動している視点で、
改善する必要がある点等を現場で研き、その集大成を検定試験現場で発揮して欲しいと思います。
皆同じ視点、同じ考え方、同じ展開ということはあり得ません。
自分にしか出来ないこともあると思います。
タイプ別等を創り、そこに人を如何にも当てはめていくような逆算型で考えることは、
訓練では学びになる点も多いかと思いますが、
実際の相談者を目の前に、そのような技術提供が活きるかどうかは、
その人次第であり、また、そのようなことを考えながら人に接することは、
とても失礼にあたることとなる場合があります。
今回、記事にした事例をどのように受け止めていただくかは、
読者の方次第ですが、このようなキャリアコンサルティングが数えきれないほどあることも視野に入れておいて欲しいと思います。
さて、次回からは、
第4回1級キャリアコンサルティング技能検定の論述選択問題(事例4)を使わせていただき、
事例指導を具体的に考えていきたいと思います。