今回から、
第4回1級キャリアコンサルティング技能検定論述選択問題の各事例を使わせていただき、
様々な視点を実践的に検討してみたいと思います。
なお、ここで書いている内容は今の私のひとつの考え方になりますので、
読者の皆様におかれましては、
ご自身のお考えを軸にして検討していただけたらと思います。
先ず今日は、具体的な事例に入る前に、
タイトルに記した「事例相談者が抱えている問題」について、
事例指導者の捉え方を書いてみます。
私の場合、
実際に事例指導を申し込んで下さった事例相談者の方と接する際、
覚書をご提示させていただいた上で合意締結のもと、事前に事例記録か逐語記録を送っていただき、
併せて予め事例指導の目的と内容まで記述してもらっています。
この辺のやり取りは事例指導者によってそれぞれだと思うのですが、
例えば、現在私が定期的に指導をいただいてる先生の場合は、
事前に事例資料を送ることは求められませんので、当日、事例の詳細説明を行い、
私の考え方等も聞いていただいた上、本日の指導で聞きたい事、やりたい事を伝えます。
そのように考えると、
論述の場合も試験当日に事例が出てくるので後者の実際のやり方と同様になるわけですね。
論述試験は実技試験なので、
このような前提イメージがあると良いかもしれません。
さて本題ですが、
「事例相談者が抱えている問題」について、
受検者(事例指導者)の方の捉え方によって相当に異なる点が出てくると思います。
論述の選択問題では、
問1 この事例相談者が抱えている問題は何か、あなたの考えを記述せよ。
この問いになるわけですが、
この問題が実技試験であると考えれば、実際の現場をイメージした方が、
現実的に技術を見せて(書いて)いけると思うのです。
単に、事例相談者の問題点を根拠と共に列挙したところで、
実際、事例相談者の効果的な成長に繋がるとは限りません。
本物の事例指導を受けて体験してみればわかりやすいのですが、
事例相談者としては相応の覚悟というか、費用や資料を含めて事前準備をして、
自分が出来ていないところを知りたい、どうすればもっと上手な面談が出来るのだろうか、
自分に気がつかない問題点は何なのか等々、
事例指導に積極的であり、しかしながら不安を抱えています。
事例指導者としてその点を理解出来ていれば、
通常のカウンセリングというか、人と人とのかかわり方について最重要視出来るでしょうし、
また、プロとプロ同士という視点も持てていれば、相手のプライドを傷つけるような指導は出来ないと思うのです。
そのような光景をイメージをしてみてください。
例えば、第4回の論述選択問題の事例2を考えてみます。
事例相談者は男性の40歳のキャリアコンサルタントで相談歴が2年、
自身が勤務している社内のキャリア相談室に所属しているようです。
私が考える事例指導者としてあって欲しい姿勢は、
事例相談者が事例を必死に説明している姿、
その気持ちを受け止められることです。
そして事例相談者のお話を聴き入れ、事例を概観しつつ、
事例相談者が出来ているところや相応に上手なところを、
先ず最初に根拠を含めて伝え返すことが出来、
事例相談者と一致出来る指導者です。
ここが掴める事例指導者は、
《この点がこんなに出来ているんだから、あと、ここを少し変えることが出来れば、
もっと価値の高い面談提供が出来たのではないでしょうか。》
このような指導戦略がうてるわけです。
しかし、この承認出来る箇所を捉えられない事例指導者は、
酷い場合、事例相談者を頭ごなしにやりこめていくような状況になる場合があります。
何をお伝えしたいかというと、
「事例相談者が抱えている問題」
を考えるときは、
最初に、
事例相談者が扱っている事例はどんな事例か
事例を事例相談者はどのように捉えたのか
事例相談者は何を考え何をしたかったのか
それはうまくいったのか、いかなかったのか
若しくはうまくいったかどうかもわからないのか
事例相談者は事例にどのような想いがあるのか
等々…。
事例相談者の考えや悩み、
訴えていることなどを知ることから始めないと、
実際の事例指導にならないと思うのです。
よって、事例相談者が抱えている問題は、
抱えていることを事例指導者が把握して受け止められているかが大切ですよね。
我々キャリアコンサルタント技能士は、
相談者を目の前にしたとき、
・相談者視点の問題
・キャリアコンサルタント視点の問題
このふたつを大切に扱います。
そして相談者支援のストラテジーを検討する際は、
このふたつの問題を大切に合わせて考えていきます。
これは、キャリアコンサルタントの面談をやりやすくするためなどではなく、
あくまでも相談者の支援に有益だからこそその視点を持てるように基礎的なトレーニングを欠かさないわけです。
私は、事例指導でもそれと同じ考えを持っていて、
事例相談者を目の前にしたとき、
・事例相談者視点の問題
・事例指導者視点の問題
このふたつを大切に扱います。
そして指導戦略を立てるときは、
このふたつの問題を合わせていくのです。
何故ならば、その方が事例相談者にとって効果的、
且つ、今の事例相談者の見立てに合った事例相談者のための問題の本質が掴みやすいからです。
事例指導者は客観的に事例をみることが出来、
様々な事例相談者の対応の問題点を見つけることができるでしょう。
しかし、
それが例え図星だったとしても、
事例相談者にとって効果的な問題視点ではなかった場合、
ただ、事例相談者を指摘するだけのいじめのような感じになってしまうのです。
やはり大切なポイントは、
事例相談者はここで出来ているところがありながら、
どうしてこのような対応をしてしまったのだろうか…。
どんな考え方でこうしたのだろうか。
その考え方は何故生まれたのだろうか。
こう考えたからこそ、あのようにしてしまったのかな…。
このあたりの根源を、
事例指導者が把握することが大切であり、
その点を事例相談者が気がついて修正出来れば、
先ず、後に繋がる問題あれこれは解決出来るのではないかという点が大事です。
前述したように、
私の事例指導者は、面談時に私の事例の説明を理解するまで聴いてくださります。
そして私の考え方等を把握しようと努力してくれて、また、今回の指導で聞きたい事、やりたい事を伝えていく場面設定もくださります。
さらには、その考え方等を承認してくださるだけではなく、
根拠をもって様々な私の意見や捉え方に感心してくださる場面が非常に多いです。
セッション後、別れ際には、
「あなたのようなキャリアコンサルタントが世を変えてくれる気がする。その姿勢に感激します。」
このように大げさに言って下さり、
私は見事、その気になってしまいます…(笑)
初めて今の事例指導者の方に会うときは、
非常に緊張しましたし、これまでと雰囲気や期待していることが異なったらどうしようと不安でした。
しかしながら、
今では予約させていただいた日が来るのが待ち遠しいほど、
指導を受けることが楽しみになっています。
このように事例相談者側がやる気になり、
本人の行動が継続し、
その事例相談者の実力が上がっていくことが事例指導の王道であるのかなと私は感じています。
私が私の力を最大限発揮したくなる、
それ以上に勉強したくなる、
こんなモチベーションを与えて下さるのが事例指導ではないかと思います。
「事例相談者の抱えている問題は何か」
もう一度、指導現場をイメージして、
「あなたの考えを記述せよ」
このように問われているので、
事例指導者として自分らしい答えを導き出して欲しいと思います。
次回は第4回の事例2について具体的に考えていきます。