相談者へキャリアコンサルティングを提供する人がキャリアコンサルタントですが、
自分を含めて、そのキャリアコンサルタント全般の質の向上などを目指すためにも事例指導者という役割が大変重要であり、
また、事例指導を受けるキャリアコンサルタント側(事例相談者)にも相応の志が必要です。
これはキャリアコンサルタント職だけに当てはまる話ではなく、
対人援助の仕事に就かれているプロフェッショナルなら、そのサービスを提供している側とその指導者側の双方共に絶対的に必須であると感じていらっしゃる方が多いと思います。
勿論、人それぞれですが、
今よりもよい面談が出来るようになりたい、
これまで経験のない激変する状況に応じた適切な対処を模索したい、
もっともっと上手くなりたい、
このように少しでも学ぼうとしている方に当てはまる話です。
特に対人援助の仕事には、
これで良いということは永遠にないからです。
もしキャリアコンサルティングや事例指導を受けたことがないという方がいたら、
私は絶対的に受けた方がいいと思います。
実際の価値提供を受けたことがないのに、
価値提供を行う側のステージに立つことは、
仕事に立つうえで自己一致が出来ず悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先日、ある先生が受講者の方々に向けてこんなことを発して下さっていました。
「スーパーバイザーになるならスーパービジョンを受けた経験がないとダメだなんておかしな話だ。
キャリアコンサルティングを受けた人がキャリアコンサルタントになれるかといえば、そうではないからだ。」
私はこの話をお聴きしてとても刺激を受けました。
それほど簡単にはスーパーバイザーを名乗ってはいけないということを叱咤激励いただいたのだと認識したのです。
いくら事例指導を何度も受けたからといって、
事例指導をわかったような顔をしてたらいけないと言って下さっただけで、
事例指導を受けなくていいと言われたわけではないのです。
キャリアコンサルタントとして指導を受けることは当然であり、
且つ、それとは別として、
事例指導をもっともっと深く学びなさいと言われてたのです。
なお、
自分自身が相談者として素晴らしいキャリアコンサルティングを何度も受けていたり、
また、本当に意義深いスーパービジョンを何度も受講出来ているキャリアコンサルタントであれば、
その分、自己のスキルアップに繋がり、
クライエントへの価値提供が深く厚いです。
その経験がある方とない方では圧倒的に視野が異なりますし、ネットワークも違いがあります。
人の話をどう受け止めるかで全く異なる意味になるので、
我々はいつも注意深く物事をみていく努力が本当に必要です。
その時の先生の伝えたかったことは、
もっと深い話だったわけです。
何故、このような話から書いたのかというと、
大前提として、事例相談者となるキャリアコンサルタントは仮に経験が浅くてもプロフェッショナルです。
事例指導者の役割を担う方は、
目の前の事例相談者の存在をプロフェッショナルとして認識していることが、
誠意ある事例指導者の姿勢だと言えるのではないでしょうか。
これは培ってきた生き様や考え方からも養われていきますが、
それ以上に、今の目の前の人を大切に出来る自分であるように、
自分が相談者や事例相談者の気持ちと合致出来るような努力を日頃からしようとしているのかがポイントだと思うのです。
事例相談者の問題を検討する際、事例指導者が先ず考えていくことは、
事例相談者が相談者に提供したキャリアコンサルティング全般を知ることと、
その方策を理解して事例相談者の特徴を肯定的に受けとめていく器量が備わっていることが大事になります。
これが乏しいと気がついた方は、
是非、日頃から上司や同僚、部下や後輩、子ども達などと接する際にその人の特徴を見つけて、
普段短所だと評価してしまっている点をリフレーミングして言葉に出してみる練習をするとトレーニングになります。
昨日までは事例相談者が事例指導を受けるためにまとめた事例をもとに、
事例指導者の視点で、相談者Aの問題をふたつの視点で書いてきましたが、
事例相談者は持ってきた事例が上手くいかなかったからこそ、
どうしたらいいのかを指導してもらいたくて来たわけです。
よって事例指導者は事例相談者が求めていること、
事例相談者にとって役に立つことを提供出来ることが重要です。
これには、事例相談者が相談者Aにやろうとしたことや方針などを事例相談者の視点で事例指導者が理解出来なければ事例指導は成り立ちません。
次回はこんな観点から、
事例相談者の問題を捉えてみましょう。
1級キャリアコンサルティング技能検定の論述必須問題にある、
【問2】この事例相談者の相談者Aへの対応について、どのような問題があるか、あなたの考えを記述せよ。
この問いを活用させていただき検討しようと思います。