昨日に引き続き、

【主訴】をテーマに記事を書いていきます。
 
今回は、『事例相談者の主訴』についてです。
 
事例指導時の面談において、
事例相談者の話を聴かせていただくというシーンを具体的にイメージして実践的に考えてみましょう。
 
1級キャリアコンサルティング技能検定を受検される方には重要な要素だと思いますし、
何よりも、現場で事例指導を実施する上で大切なポイントだと私は捉えています。
 
先ず、事例指導を受講する側(事例相談者)が、
自分の取り扱った事例(キャリアコンサルティング)を事例指導者に説明するために事前に振り返り、
その事例で上手くいかなかったところや、自分の面談の問題だと思うこと、
また、どうしてうまくいかないのかわからず悩んでいること等を事例指導者に聴いてもらい、
様々な支援を受けていくことになります。
 
事例指導は、キャリアコンサルティングとは異なることは皆様もお分かりだと思います。
 
相談者(クライエント)は、その面談の場には不在ですから、
事例相談者は自分の面談や相談者の発言、表情等の振り返りをしながら、
事例指導に臨むために逐語記録やケース記録の作成等、事前準備を行うケースが多いです。
 
勿論、事例相談者に対しての事前要求は、事前指導者によって内容や準備するものが異なると思いますが、
とにかく基本的には、事例相談者が意欲を持って指導に臨むというスタンスは大切ですね。
実はこの事例相談者への動機付けも、事例指導者として大切な役割りだと思います。
 
そして事例指導者は、事例相談者が行う事前準備について、
事前のアドバイスを行う場合もあれば、全くない場合もあります。
 
これも事例指導者のやり方によると思います。
 
いずれにしても実際の現場では、事例指導者と事例相談者との間で、
事例指導に関することの全ての項目(事前準備等の事も含む)を網羅した内容を、
事前にコミットメントしていることが重要です。
 
1級技能検定の面接試験では、この辺りをどう表現するかは自由だと思いますが、
もし私なら、面談冒頭に主要なことはコミットメントしておくと思います。
 
これらのことを考えるだけでも、
相談者(クライエント)とキャリアコンサルタントの関係、
事例相談者と事例指導者の関係は違うわけです。
 
感覚的に表現すると、事例相談者と事例指導者の関係は、
プロとプロ、専門家同士での共通目的を持った学習時間をお互いに約束するということになるのでしょうか。
 
ただ、事例相談者にとって指導者の存在は教師的なイメージも含まれていると思います。
 
そして事例指導では、事例相談者個人の私的な問題には関与出来ないと私は認識しています。
※事例相談者がキャリアコンサルタントとして機能出来ない時や、
事例相談者の状態が、相談者(クライエント)を傷つけてしまう等の恐れがある際等は、
事例指導者の判断によって、相談者(クライエント)を守る必要が発生する場合もあります。(ゲートキーパー機能)
 
もう少し掘り下げて説明すると、
事例指導を実施していたら、いつの間にか、
事例相談者自身が自分の個人的なことで悩みがあり、
それを事例指導者との指導面談に持ち込もうとしたとき、
いくら事例相談者のキャリアに関することだったとしても、
事例指導者と事例相談者の関係では、キャリアコンサルティングは出来ないということです。
 
事例指導は、
事例相談者の専門家(キャリアコンサルタント)としての成長を目的としていて、
その成長によって、相談者(クライエント)へのより良い適切な支援が出来るように、
事例相談者が担当した事例を通して事例相談者の指導を行うことになります。
 
 
話が色々なところに行きましたが、
さて本題です。
 
事例指導者として、事例相談に来室されたキャリアコンサルタントをむかえるとき、
皆様は、守秘義務を遵守すべく、安心安全なスペースを確保・提供し、
様々なことに気遣いながら事例相談者を受け入れますよね。
 
事例指導において、事例相談者と必要なことをコミットメントして、
そしてようやく事例相談者が持ってきた事例を聴かせていただきます。
 
例えば、昨日の記事で書いた仮のセッション内容を、
以下のように事例相談者が逐語で、
 

CL1

「目の前に課長がいるのですが、どうしても課長に仕事のことを聞き難いんです。

もう辞めたいと考えて悩んでいます。」

 

(CC:課長がそばいるけれど仕事の事がどうしても聞き難い…

もう辞めてしまいたいと悩んでいるのですね?)

 

CL2

「そうなんです。いつも他の人が課長にダメな奴だと怒鳴られているのを見てて、

自分も怒られてしまいそうで…。なんだかいつもビクビクします。」

 

(CC:目の前で怒鳴られているのを見ていて、自分もそうなるのかと考えるとビクビクして萎縮してしまう感じでしょうか?)

 

CL3

「そうです。新人なので、本当なら仕事の内容をいろいろと確認して進めなければいけないけれど、聞くと怒られそうで、でもこれでいいのかな…とも思っていて、どうすればいいのかわからない。」

 
このようなやり取りだったと事例指導者に説明しました。
 
 
事例指導者が、
事例の内容とクライエントの問題が知りたい、どんな事例なのか理解したい、
 
と事例相談者に様々な視点で、もっとクライエントのことを聞こうとする場合があります。
 
事例相談者に事例のことを聞きたいと思ってしまう、どうしてもクライエントのことが気になってしまう背景には、
やはり事例指導者もキャリアコンサルタントだからですよね。
 
事例やクライエントの事ばかりに焦点があたるのは、
どこに事例相談者の問題が隠れているのか…
 
それを突きとめていきたい、
何とか事例相談者の問題の手掛かりを見つけたい、
その問題に気づかせたいという気持ちから、
 
自然体でそのようにアプローチする方が多いのではないでしょうか。
 
 
例として、事例指導者が上記の話を事例相談者から聞いたとき、
 
《CL1に対して、何故掘り下げてCLの気持ちを聴いていかないのかな》
 
《CL2で、ビクビクしてしまう自分をどんな風に感じているのか何故聴かないのだろう》
 
《CL3のでもこれでいいのかな…を拾って話を広げていかないのは何故か》
 
このように問題の手掛かりばかり探そうとしていたら、
事例相談者はどのようになるでしょうか。
 
 
ここで書きたかったことは、
これでは、事例相談者が、事例指導者のところに指導を受けにきたのに、
事例指導に向かう気持ちや意欲が流石に下がります。
 
 
事例指導者は、事例を把握することは大切ですが、
先ず、大切なことは、
【事例相談者の主訴】
を理解することではないでしょうか。
 
 
事例相談者の主訴を理解していくことで、
同時に事例の全体が掴めてくることも多いです。
 
 
事例相談者がどんな気持ちで事例に向かっているのか、
どういう理由でその展開をしたかったのか、
この行動はどう見立てたからそうなったのか、
今後どうなれたらいいのか、
 
とにかく、事例相談者の訴えを受け止めていくことは、
事例指導の根幹になると私は思っています。
 
事例指導者

『CL1~CL3まで、クライエントの話がどんどん掘り下げられていて、話が見えてきていますね。』

 

事例相談者

(そうですかね…。私は出来る限り、クライエントの不安な気持ちとどうにかしたいって気持ちをしっかり受け止めていこうと思い、とにかく傾聴を慎重にしていったつもりなんです。)

 

事例指導者

『確かに、このあたりなんかも意味への応答もうまく出来ているし、ここなんかはクライエントの仕事の真面目さなんかも見えてきていますよね。』

 

事例相談者

(そうなんですよ!このクライエントは決して仕事を簡単に辞めようとする人ではないと思うんです。だからこそ、気づかせていくために、仕事の進め方なんかも考えていることを聴き出すことが出来て良かったと思うんです!!)

 

 

あくまでも仮のイメージで書いてますが、

何が書きたいかというと、

 

このように事例相談者がどうしたかったという点を構造化して説明出来るように、

事例指導者から質問をしていく際も、その点を意識して焦点をあてていくことで、

事例相談者の方針等が理解出来ると同時に、

だからこそ、つまづいてしまっている点が把握出来ることも多いのです。

 

事例相談者が事例指導者に対して、安心出来ると、

その後は、つまづいているところに触れても前向きに考えられるものです。

 

よって、

事例相談者の主訴を掴む、

所謂、

【事例相談者視点の問題】

をしっかりと把握・共有化して事例指導を展開していって欲しいと思います。