今回は、キャリアコンサルティングの面談展開例として、

私が特に意識していることのひとつを書いてみます。

 

1級・2級キャリアコンサルティング技能検定の実技を受検される方や、

実際のキャリアコンサルティングにもご参考にしていただけたらと思います。

 

 

タイトルに記した通り、

目標設定と方策の視点について一例として解説します。

 

先ず、

私が面談で常に意識していることなのですが、

 

「相談者がしたいこと」

「相談者がこうなりたいと思うこと」

「相談者が支援して欲しいと思っていること」

 

このような大事なことが

面談でどこかへいってしまわないようにしています。

 

《そんなことは意識して当たり前ではないか…》

 

と言う声が聞こえてきそうですが、

意外とそうしていない面談も多いのではないでしょうか。


かくいう私もそのようなことがあり、

少し私のエピソードを交えて説明しますね。

 

 

ある先生のキャリアコンサルティングの学びの機会を得た時のことですが、

その時、私は15年程の現場実績をもって、

それなりの自信と更なる学びのテーマを明確にしてその席に臨んでいました。

 

グループセッションを繰り返し行う機会に恵まれ、

また、都度振り返る機会を得て、各セッションを実践していったのですが、

その際、他者視点を改めて素直に見つめることが出来、

今でも、その時の自分の中の動揺をはっきりと記憶しています。

 

丁度、

私が2級キャリアコンサルティング技能検定の実技面接試験を受検する前の年の時でした。

 

私のキャリアコンサルティングは、自分で知らず知らずのうちに、

相談者の視点ではなく、

 

《私の視点》で面談を進めていることに気づいたのです。

全ての面談がそうでした。

 

相談者がしたいことではなく、

《私がしたいこと》

 

相談者がこうなりたいと思うことではなく、

《私がこうなればいいのにと思うこと》

 

相談者が支援して欲しいと思っていることではなく、

《私が支援したいと思っていること》

 

このようになってしまっていたのです。

 

どうしてこんな傲慢なカウンセリングになっていたのか、

 

本当に申し訳ないと様々な相談者の表情が頭の中で巡りました。

 

【相談者のため】と言いながら、

私のために面談をしているようなものであり、

自分の思うように面談が進むことが、あたかも良き面談であるかのように、

その勘違いに気づかずにいたのです。

 

本来、キャリアコンサルタントとして基礎の基礎ともなる、

基本姿勢が出来ているようで、まるで出来ていませんでした。

 

目の前のクライエントと向かう際、

《私(キャリコン)がしたいこと、したかったこと》

この点ばかりを振り返っていました。


これではよくないですね。

 

その時の先生の講座で、

私自身の問題に気づくことが出来、

私が2級を受検する際には、

しっかりと準備・修正して臨み、

また、現在も常にその点を意識した面談を実践しています。

 

事例指導も一緒だと私は肝に銘じています。

 

目の前の事例相談者の悩みを聴かなくてどうするのか…

事例指導者がしたいことを指導するのではないのです。

 

 

お話しは戻り、

目標設定と方策ですが、

ここで重要なのは、前述した通り、

相談者のしたいことをしっかりと基盤にしているかという点です。

 

例えば、目標設定を行うには、

問題把握が適切に出来ていなければ目標がずれてしまいます。

 

従って、問題把握の視点は非常に重要であり、

我々キャリアコンサルタントは、

 

●相談者視点の問題

●キャリアコンサルタント視点の問題

 

の2つを合わせて扱いながら、

相談者がやる気になれる、相談者が意欲を持てる目標設定を行います。

 

この時の問題の扱い方ですが、

 

私が何よりも重要だと考えていることは、

●相談者視点の問題

であり、

ここを基準にして相談者と進めていくことを心掛けています。

 

どうかすると、

●キャリアコンサルタント視点の問題

ここに気づかせようとして何度も相談者に似たような質問を繰り返して、

面談がグルグル回り、

結局、相談者に負担を強いるような展開をしている練習を観ることがあります。

 

このような面談になってしまうと、

キャリアコンサルタントがやりたいことをしようとしているだけに終始してしまうこともあります。

 

例えば、

相談者が、

『正社員登用の話をもらったが、そうなると今までより忙しくて責任も大きくなってしまうし、本当にやりたい仕事は別にあるので、どうしようか迷っている』

という悩みがあって、来談したとします。

 

この相談者の支援をする際、

キャリアコンサルタント視点の問題として、

 

・正社員に登用される理由やこれまでの相談者の実績等が認められたこと等の認識が低い

・今の仕事を続けながらでも他の仕事に向かう準備は出来るのではないか

・本当にやりたい仕事へ就くための現実的な可能性を整理出来ていない、仕事で求められる能力と自分自身の能力を客観的にみての努力不足

・統合的なライフプランニングが検討出来ていない

 

キャリアコンサルタントとして以上のような見立てをされました。

 

すると、

キャリアコンサルタントは、

自分の見立てに準じた目標設定をしようとするケースが多いのです。


その目標設定の合意を得るために、 

「なぜ、会社はあなたを正社員に登用しようと考えたのでしょうか?」

 

「今の仕事をしながら学習することは考えられますか?」

 

「本当にやりたい仕事の求人市場や求められるスキルはどのような感じですか?」

 

「具体的に1年後、3年後、5年後という感じで、ご自身の先々をイメージしていますか?」

 

このようにして、相談者に対して、キャリアコンサルタントが問題と感じた視点をぶつけて気づかせていくようなシーンがロープレをしていても多い気がします。

 

ところが、相談者からは、

キャリアコンサルタントが期待する答えは返ってこない。

 

たまたま相談者から期待通りの答えが返ってきたときは、面談が上手くいったと振り返り、このやり方で良かったと評価して、

そうでない時は、グルグル回っちゃいました…

 

と振り返ることになります。


明確にどこに問題があったのか、

自己評価出来ていないケースになったりもします。

 


この原因は、

 

相談者視点の問題を大切に捉えられていないケースに多く見受けられます。

 

来談きっかけや来談の目的ではありません。

 

主訴のことです。

 

この相談者の主訴がないがしろにされている場合が本当に多いと感じます。

※あくまでも私が自分で経験していることを基にして書いています。

 

私が陥ってしまっていた問題であり、

だからこそ、

私がキャリアコンサルタント育成の講座を実施させていただく際は、

この点を特に重視して受講者の方々と具体的に掘り下げて検討を重ねています。

 

相談者の主訴をしっかりと把握出来ている場合、

その訴えている相談者の問題を取り扱い、

その解決に向けて目標設定をするのがごく自然のお話になります。


キャリアコンサルタント視点の問題を相談者に気づかせることばかりが先行していることが多い場面もありますので、もし気になる方は、先ずは逐語や事例記録をおこしてみてその点の振り返りをしたり、またその記録をもって事例指導を積極的に受けてみてください。

 

先程の仮のケース例で、

 

『正社員登用の話をもらったが、そうなると今までより忙しくて責任も大きくなってしまうし、本当にやりたい仕事は別にあるので、どうしようか迷っている』

 

というように、来談した時の相談者の状況が語られ、

来談目的がわかった時、

 

キャリアコンサルタントは更に因数分解するようなイメージでお話しを聴かせていただきますよね。

 

結果、

 

『正社員の登用の話は認められた感じがして嬉しいけど、このままこの仕事にどっぷり浸かってしまうと、やりたかった仕事の道は閉ざされてしまい、今の仕事だけで一生が終わってしまうのではないかと不安というか、これでいいのかな…という感じで悩んでしまっているのでしょうか?』

 

というように、

相談者の気持ちが付随している点をしっかりと受け止めていること、

 

それを伝え返していくことで、

相談者とラポールが醸成されていくことにもなります。

 

すると、2人で進める面談の目標設定は、

 

【自分らしく生きる働き方を見出し正社員登用について納得のいく決断が出来るようにする】

 

というような目標設定になるかもしれませんし、

とにかく相談者の主訴を取り入れた内容になるかと思います。

 

相談者主体に行動化出来る仮の目標設定です。

 


そして、キャリアコンサルタント視点での問題をキャリアコンサルティングに活かす場面ですが、


先ほど、例としてキャリアコンサルタント視点の問題を以下の通り挙げてみましたね。

 

・正社員に登用される理由やこれまでの相談者の実績等が認められたこと等の認識が低い

・今の仕事を続けながらでもやりたい仕事に向かう準備は出来るのではないか

・本当にやりたい仕事へ就くための現実的な可能性を整理出来ていない、仕事で求められる能力と自分自身の能力を客観的にみての努力不足

・統合的なライフプランニングが検討出来ていない


例えば、

キャリアコンサルタントが上記の視点を持っているのであれば、

 

目標を達成する上での方策に取り入れていけばよいわけで、


キャリアコンサルタント視点の問題をそのまま目標設定に単に取り込んでしまうと、

「自己肯定感を上げたうえ、理想と現実を冷静にみることの重要性に気づかせ、ライフプランを明確化して今の判断を適切に出来るようにする。」

というような、内容になったりもします。


相談者にとっては自分が責められているというような厳しく受け入れ難い目標にうつるし、

何だかハードルが高くて相談者本人は意欲が湧かず行動化出来ないかもしれませんね。

 

キャリアコンサルタント視点の問題はとても大切なのですが、

その視点は相談者視点の問題を掘り下げていくようにして、方策にキャリアコンサルタント視点の問題を取り入れて進めていくと効果的だったりします。


例として書いてみると、

上記のキャリアコンサルタント視点の問題では認知的な要素もあると思いますので、

ひとつの方策・戦略を進めていく上で、

カウンセリング理論の認知的アプローチを活用するのもありかと思います。

 

そうなると、ステップとしては、

相談者の考え方の中で、

『今この仕事で正社員になってしまうとやりかった仕事の道は閉ざされ、一生このまま…』

とありますが、

これは非論理的・非現実的な考えですね。

 

また、

『正社員になれるのは認められて嬉しい…』と感じながらも、

感情と認知と表現が一致していません。

 

具体的にイラショナルビリーフを見つけていきながら、

そこに相談者が気づけば、

さらに一緒に現実的であるかを考えていく事で、

相談者の感じ方や考え方に変化が生じます。

 

そこで必要に応じてタイミングをみてキャリアコンサルタントが効果的に論破することも大事かもしれません。


 

若しくは、

適材適所的な要素もあるかと思うので、

別の方策・戦略の進め方として、

キャリア理論の構造論的アプローチを使っていくこともいいですよね。

 

ステップのひとつとして、

『これだけで一生が終わってしまう…』

の背景に、『やりたい仕事』があるので、

その仕事が今出来ていない点についての相談者の感情や認識、行動を掘り下げていきつつ、

 

構造論の基本となる、

・自己理解

・仕事・環境理解

の点に触れていき確認することで、相談者が気づけることは多くなり、

マッチングすることで相談者自身が何をすればよいか、

または出来そうか難しそうか等、

自分自身で判断がしやすくなりますよね。

 

要は、同じ事例でも、

キャリアコンサルタント視点の問題の扱い方で、

方策・戦略に反映されていくわけです。


これにはキャリアコンサルタント視点の問題が活きるわけですが、

それは、全て相談者視点の問題が核になっていることが大事で、

そこを置き去りにして、キャリアコンサルタントが主体になって面談を進めると、

価値提供が薄れていまうということです。

 

問題解決のための目標設定、そして達成に向けた方策について、

ひとつの例として私の考え方を解説をしてみました。

 

面談を構造化していくイメージをしてみて欲しいと思います。